はじめに:海外展開の「3つの壁」とアナログ取引の限界
国内市場の成熟化や円安を背景に、日本企業にとって海外市場への販路拡大は、もはや「選択肢」ではなく「必須戦略」となりつつあります。
しかし、グローバルなBtoB(企業間)取引には、必ず直面する「3つの高い壁」が存在します。
それは「言語の壁」「通貨・決済の壁」、そして「商習慣・法規制の壁」です。
いまだに多くの企業が、これらの複雑な海外取引を、FAXや属人的なメール(英語)で処理しようと試みています。
その結果、何が起きているでしょうか。
- 時差による納期回答の遅れや、コミュニケーションのタイムラグ。
- 言語の誤解による「型番ミス」「数量ミス」といった致命的な受注トラブル。
- 米ドル、ユーロ、現地通貨が混在し、請求・入金管理が煩雑を極める。
- 現地の税制や法規制(個人情報保護など)に対応できず、コンプライアンスリスクを抱える。
こうした課題を解決し、海外展開のスピードと確実性を高める「グローバル営業のインフラ」として、多言語・多通貨対応のBtoB-ECシステムを導入する企業が急速に増えています。
本記事では、実際にBtoB-ECを活用して海外展開を成功させた企業の具体的な事例を3つ紹介し、その導入のポイントを解説します。
第1章:なぜBtoB-ECが海外展開に不可欠なのか?
海外展開におけるBtoB-ECは、単なる「翻訳されたECサイト」ではありません。
それは、複雑な国際取引を自動化し、リスクを管理するための「業務システム」です。
- 24時間365日の自動受注:時差に関係なく、世界中からの注文をシステムが自動で受け付けます。
- 顧客別の価格管理:国や代理店ランクごとに異なる価格(掛け率)を、顧客がログインした際に自動で表示します。
- 税務・法規制の自動化:現地の付加価値税(VAT, GST)の計算や、GDPR(EUの個人情報保護規則)などの法規制に準拠したデータ管理をシステムが担います。
これにより、人間(営業担当者)は「ミスの多い単純作業」から解放され、本来やるべき「現地の関係構築」や「マーケティング活動」にリソースを集中できるのです。
第2章:海外展開を支えたBtoB-EC 3つの成功事例
実際にBtoB-ECを導入した企業は、どのような成果を上げているのでしょうか。
事例1:部品メーカー(東南アジア進出)
導入前の課題
東南アジア各国(タイ、ベトナム、マレーシア)への販路拡大を目指していました。
当初は現地の代理店を経由したFAXやメールでの受注が中心でしたが、時差による納期回答の遅れや、現地語・英語でのコミュニケーションミス(型番間違いなど)が多発。
さらに、米ドル建てと現地通貨建ての請求が混在し、経理処理も煩雑でした。
導入した施策
多言語(日本語・英語・タイ語)・多通貨(日本円・米ドル・タイバーツ)に対応したBtoB-ECを構築。
顧客が言語と通貨を自由に切り替えられるようにしました。
さらに、国ごとに異なる付加価値税(VAT)の計算も自動化しました。
導入後の成果
顧客(代理店)がWeb上でリアルタイムに在庫と納期を確認し、そのまま発注できるようになったため、受注ミスは80%も減少。
納期回答も即時可能になりました。
また、一部の直接取引先も開拓でき、東南アジア市場全体の売上は前年比で30%増加しました。
事例2:医療機器メーカー(欧州市場展開)
導入前の課題
欧州市場(特にEU圏内)への展開にあたり、世界で最も厳しいとされる個人情報保護規制「GDPR」への対応が絶対条件でした。
また、国ごとに異なるVAT(付加価値税)率への対応や、医療機器特有の厳格なマニュアル・技術資料の管理も課題でした。
導入した施策
GDPRに準拠した強固な顧客データ管理基盤を持つBtoB-ECシステムを選定。
決済はユーロ建てに対応し、国別の複数税率を自動で計算する機能を実装。
さらに、医療機関や代理店のみがアクセスできる、セキュアな「多言語マニュアル・製品情報ダウンロード機能」を設けました。
導入後の成果
深刻なコンプライアンスリスクを回避し、欧州代理店との安全なデータ連携基盤を確立。
現地病院やクリニックからの直接注文チャネルも開拓でき、欧州市場での信頼獲得に成功しました。
事例3:食品原料商社(北米展開)
導入前の課題
米国・カナダ市場への食品原料の輸出にあたり、食品業界特有の厳格な「ロット管理」と「賞味期限管理」が求められました。
また、FDA(米国食品医薬品局)の規制に沿った情報開示や、米ドル(USD)とカナダドル(CAD)の異なる通貨への対応も必須でした。
導入した施策
米ドル・カナダドル両対応の多通貨決済機能を導入。
さらに、BtoB-ECと基幹の在庫管理システムをAPI連携させ、注文時にロット番号と賞味期限を自動で引き当て、出荷指示を出す仕組みを構築しました。
導入後の成果
現地企業(卸先)がWeb上でロット情報や賞味期限を確認しながら安心して発注できる体制を提供。
アナログ管理による出荷ミスや食品ロスを削減し、トレーサビリティも確保。
結果、北米市場での年間売上20%以上の継続的な成長を実現しました。
第3章:海外展開で失敗しないBtoB-EC導入の4つのポイント
海外展開を成功させるBtoB-ECには、国内向けとは異なる設計思想が求められます。
1. UI/UXの現地最適化
単なる翻訳(多言語対応)だけでは不十分です。
ユーザーが直感的に言語や通貨を切り替えられる設計はもちろん、国や文化によって「見やすい」と感じるデザインや情報レイアウトに最適化する必要があります。
2. グローバル決済と与信管理
クレジットカード決済(PayPal, Stripeなど)の導入は必須です。
それに加え、BtoB特有の「掛け払い(後払い)」を海外企業とどう行うか、その与信管理のフローをシステムに組み込むかどうかの設計が重要です。
3. 物流・税務の自動連携
海外倉庫(3PL)や国際配送業者(DHL, FedExなど)とのAPI連携による出荷指示の自動化、そして最も複雑な「関税」や「現地税制(VAT, GST)」の自動計算機能は、業務効率化の核となります。
4. 法規制とコンプライアンス対応
GDPR(EU)やCCPA(カリフォルニア州)といった各国の個人情報保護法、現地の輸入規制や製品表示義務など、グローバルなコンプライアンスに対応したシステム基盤を選ぶことが、将来的なリスク回避につながります。
第4章:まとめ
多言語・多通貨対応のBtoB-ECは、単なる「便利な受注システム」ではありません。
それは、海外市場という未知の領域でビジネスを行う上での「共通言語」であり、複雑な取引を自動処理する「営業インフラ」、そして法規制から会社を守る「リスク管理基盤」です。
言語の壁、通貨・税制の違い、法規制のリスクといった「人間がやるとミスが起きやすい業務」をシステムに任せること。
それにより初めて、営業担当者は「顧客との関係構築」という最も重要な仕事に集中でき、海外展開のスピードと確実性を高めることができるのです。
投稿者プロフィール
- CEO
- 関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。
システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。
その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)
2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。
クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
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