FAX受注の卸売業がBtoB-ECでリピート率15%増。売上18%増を実現した「顧客が離れない仕組み」成功事例の裏側

FAX受注の卸売業がBtoB-ECでリピート率15%増。売上18%増を実現した「顧客が離れない仕組み」成功事例の裏側B2B-EC
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はじめに:「前回と同じ」の電話対応に、貴重な営業リソースが奪われていませんか?

卸売業は、そのビジネスモデルの特性上、「リピーター顧客(既存顧客)」との継続的な取引に支えられています。
しかし、その根幹であるはずの「受注業務」が、いまだにFAXや電話に依存している企業は少なくありません。

「ベテラン担当者が、山積みのFAX注文書を基幹システムに手入力している」
「『前回と同じものを』という電話に対応するため、営業が過去の伝票を探し回っている」
「人手不足で、顧客からの在庫確認の電話が鳴り止まず、誰も新製品の提案ができない」

これらの光景は、日常的であるがゆえに見過ごされがちですが、実は「顧客の利便性」を著しく低下させ、競合他社への乗り換え(取引停止)リスクを高める深刻な経営課題です。

この記事では、まさにそうした課題を抱えていたある卸売業が、BtoB-EC(企業間取引ECサイト)を導入したことで、どのようにして「リピート率15%向上」と「売上18%増加」を実現したのか。
その成功事例の裏側を、具体的な施策と成果に分けて徹底的に解説します。

第1章:導入前の深刻な課題。 非効率が「顧客離れ」を生んでいた

この企業がBtoB-EC導入に踏み切る前、現場の非効率は限界に達し、それが徐々に顧客のリピート率低下という形で表れていました。

1. 受注業務の属人化と非効率

顧客からの「前回と同じ注文」が非常に多いにもかかわらず、その履歴は担当者の記憶の中か、キャビネットに山積みされた過去のFAX書類にしか存在しませんでした。
ベテラン担当者が不在だと誰も注文内容がわからず、顧客の発注業務がストップしてしまうリスクを常に抱えていました。

2. 営業リソースの浪費

営業担当者は、新規開拓どころか、既存顧客からの「在庫ある?」「納期は?」といった電話確認への対応に忙殺されていました。
顧客の元へ訪問しても、結局は「御用聞き」に終始し、人手不足で対応が遅れることもあり、顧客満足度は低下の一途でした。

3. 深刻な機会損失

魅力的な新商品や、利益率の高い関連商品のキャンペーン案内を準備しても、それを全顧客に届ける手段がありません。
結果、一部の優良顧客にしか情報が届かず、クロスセル(ついで買い)の機会を大量に損失していました。

4. データなき経営

注文履歴が紙やExcelに分散していたため、データ活用が一切できていませんでした。
どの顧客が・いつ・何を注文しているのかが把握できず、需要予測や在庫計画は「勘と経験」頼り。
これが欠品による信頼失墜にも繋がっていました。

第2章:BtoB-EC導入の狙い。 「業務効率化」ではなく「顧客体験の最大化」

経営陣は、これらの課題の根本原因を「顧客(発注担当者)の利便性の低さ」にあると特定しました。
「自社の業務効率化」だけをゴールにするのではなく、「リピート顧客の発注体験を最高レベルに高めることこそが、売上の安定につながる」と判断。

以下の5つの要件を重視し、BtoB-ECの導入を決定しました。

  • 顧客専用のマイページ(取引条件の自動反映)
  • ワンクリック再注文機能(「前回と同じ」の完全自動化)
  • 顧客ごとの個別価格・卸掛け率の自動表示
  • 基幹システムと連携したリアルタイムな在庫・納期表示
  • マイページ上でのキャンペーン情報やおすすめ商品の自動配信

第3章:導入後の劇的な成果。 3つの変化がリピート率を押し上げた

BtoB-ECの稼働後、狙い通り「顧客」と「営業」の両面に劇的な変化が起こりました。

① 顧客の注文体験(CX)が劇的に改善

最も効果が大きかったのは、顧客(発注担当者)からの評価でした。
・「再注文ボタン」が神機能。
スマホから30秒でいつもの発注が完了する。
・ログインすれば自分専用の価格が自動で表示されるため、見積依頼や価格確認の電話が不要になった。
・リアルタイム在庫がわかるので、欠品を恐れて余計な在庫を持つ必要がなくなった。
顧客からは「電話やFAXより圧倒的に早い」「これなしでは仕事にならない」という声が続出し、発注の利便性が格段に向上しました。

② 営業活動の「質」が変化(御用聞きから提案型へ)

定型的な受注業務と問い合わせ対応がECシステムに移行したことで、営業担当者の時間に余白が生まれました。
・営業は「新商品の提案」や「顧客の潜在課題のヒアリング」といった、本来やるべき深耕活動に注力できるようになりました。
・ECのマイページ経由で「顧客がどの商品ページを閲覧しているか」という行動履歴が分かるため、「この商品に興味があるなら、こちらの関連商品はいかがですか?」と、データに基づいた的確な提案が可能になりました。

③ リピート率と売上の数値的改善

これらの変化は、明確な数字となって表れました。
・ECを利用するアクティブ顧客のリピート率(継続率):導入前と比較して 15%向上
・EC経由の平均注文単価:導入前と比較して 12%増加(クロスセル機能やキャンペーンの効果)
・結果として、全体売上も前年比 18%増加 を達成しました。

第4章:成功の裏側にあった「地道な」4つのポイント

システムを導入するだけで、自動的にリピート率が上がるわけではありません。この企業が成果を出せた裏側には、徹底した「導入・定着」へのこだわりがありました。

1. 営業と連動した「使ってもらう」ための徹底サポート

導入後、営業担当者が顧客を訪問した際、その場で「初回ログイン」を同行サポートしました。
特にPC操作に不慣れな担当者に対しても、スマホでの簡単な再注文方法を丁寧にレクチャー。
「こんなに楽になる」と直接体感してもらうことで、利用への心理的ハードルを下げました。

2. 顧客目線のUI設計(特にスマートフォン対応)

卸売業の発注担当者は、事務所のPC前だけでなく、倉庫や店舗のバックヤードで在庫を確認しながら発注することも多いです。そのため、スマホからでも簡単に再注文できる画面設計(UI)を最優先しました。

3. 導入して終わりにしない「定着支援」

導入直後は「使い方がわからない」という問い合わせが増えることを見越して、FAQ(よくある質問)ページ、簡単な操作動画、専用のサポート窓口を整備。
顧客をつまずかせない体制を構築しました。

4. データを「次の提案」に活かす文化の醸成

ECから得られる注文データ(Aを買う顧客はBも買う傾向など)を分析し、それを営業チームにフィードバック。
営業はそのデータを元に次の提案を行い、EC側では関連商品のレコメンド設定を強化する、というデータ活用のサイクルを回しました。

第5章:まとめ

この卸売業の事例から学べるのは、BtoB-ECは単なる「業務効率化ツール」にとどまらず、顧客との関係性をデジタルで再構築し、強化する「経営戦略ツール」になり得るということです。

  • 顧客の「発注の手間」を極限まで減らし、利便性を高める(顧客満足度向上)
  • 営業担当者を「単純作業」から解放し、付加価値の高い「提案活動」にシフトさせる(業務効率化と売上機会創出)
  • 蓄積されたデータを活用し、販促や在庫管理を最適化する(経営の高度化)

これらが組み合わさることで、「リピート率の改善」と「売上の安定化・向上」に直結しました。

もし御社でも「リピーター顧客との取引を強化したい」「電話やFAXの注文対応の非効率を改善したい」と本気でお考えなら、顧客体験を高めるBtoB-ECの導入は、最も確実な投資の一つとなるでしょう。

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