BtoB-EC導入の「費用」で諦めない。補助金活用で500万円の壁を越えた3つの成功事例と申請の秘訣

BtoB-EC導入の「費用」で諦めない。補助金活用で500万円の壁を越えた3つの成功事例と申請の秘訣B2B-EC
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はじめに:その「500万円の見積書」で、BtoB-EC導入を諦めていませんか?

BtoB-EC(企業間取引用ECシステム)の導入は、FAXや電話によるアナログな受注業務から脱却し、生産性を飛躍的に高めるための強力な一手です。
しかし、多くの経営者や担当者が導入を検討する際、最大のハードルとして立ちはだかるのが「初期費用」です。

・顧客ごとの価格設定や基幹システム連携を要件定義したら、数百万円の見積もりになった。
・業務効率化の効果は分かるが、初期投資の回収(ROI)に確信が持てず、経営会議で承認が下りない。

こうした「コストの壁」は、特に中堅・中小企業にとって深刻な問題です。

しかし、近年はこうした企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を国が強力に後押ししています。
IT導入補助金やものづくり補助金といった支援制度を活用し、実際の導入費用を半分以下に抑えながら、BtoB-EC導入を成功させている企業が急速に増えています。

本記事では、補助金を上手に活用してBtoB-ECを導入し、業務効率化を実現した企業の実例を3つご紹介します。
さらに、記事の後半では「どの補助金を使うべきか」「申請のポイントは何か」を具体的に解説します。

第1章:BtoB-EC導入に活用できる主要な補助金とは?

まず、BtoB-EC導入で活用される代表的な補助金を3つご紹介します。
それぞれ特徴と対象が異なります。

1. IT導入補助金

最も多くの企業に利用されている補助金です。
中小企業の業務効率化や生産性向上を目的としたITツール(ソフトウェア、クラウド利用料、導入支援費など)の導入を支援します。
BtoB-ECシステムの導入は、この補助金の「通常枠」や「デジタル化基盤導入枠」の対象となるケースが非常に多いです。

2. ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)

名前から製造業向けと思われがちですが、卸売業やサービス業も対象です。
特徴は「革新的なサービス開発・生産プロセスの改善」を支援する点です。
単なる既存のECパッケージ導入ではなく、自社の業務フローに合わせた大幅なカスタマイズ開発や、新しいオンライン取引の仕組みを構築する場合に強力な選択肢となります。

3. 事業再構築補助金

コロナ禍をきっかけに新設された補助金で、思い切った事業の「再構築」を支援します。
例えば、「これまで対面営業とFAX受注が中心だった卸売業が、新たにBtoB-EC事業部を立ち上げ、非対面のオンライン取引に本格参入する」といった、新規事業レベルの取り組みが対象となります。
補助上限額が非常に大きいのが特徴です。

第2章:補助金を活用したBtoB-EC導入の成功事例

実際に、これらの補助金を活用してBtoB-EC導入に成功した企業は、どのような課題を解決したのでしょうか。

事例1:製造業(部品メーカー)|FAX受注をWeb化し、年間200万円のコスト削減

・導入前の課題:
ある部品メーカーは、取引先からの受注をほぼ100%FAXで処理していました。
毎月1,000件を超えるFAX注文書の内容を、事務スタッフが基幹システムへ「手入力」しており、膨大な人件費と入力ミスによるクレーム対応コストが発生していました。

・導入のハードル:
BtoB-EC導入をベンダーに見積もったところ、基幹システムとの連携も含め初期費用が約500万円と提示され、予算的に厳しい状況でした。

・補助金の活用と成果:
そこで「IT導入補助金」の申請をベンダーと連携して実施。
申請が採択された結果、自己負担額を約200万円まで圧縮して導入が実現しました。
導入後は、FAX業務がほぼゼロになり、事務工数を大幅に削減。
さらに、Web注文の履歴がシステムに自動で残るため、出荷ミスや請求トラブルも激減。
試算では、年間200万円以上のコスト削減効果を生み出しています。

事例2:卸売業(食品卸)|「ものづくり補助金」で複雑な価格管理を実現

・導入前の課題:
食品卸業を営むこの企業では、取引先(飲食店、小売店)ごとに異なる単価や掛け率、特売価格の設定が必須でした。
この複雑な価格管理を、FAXや電話でのやり取りで属人的に行っており、業務が限界に達していました。

・導入のハードル:
標準的なECパッケージでは対応できず、大幅なカスタマイズが必要なため、初期費用が1,000万円近くと非常に高額になり、導入を悩んでいました。

・補助金の活用と成果:
「革新的なBtoB取引システムの構築」という名目で「ものづくり補助金」を利用。
採択の結果、最大1,000万円の補助枠を活用しながらECサイトを構築しました。
顧客ごとに専用のマイページが用意され、ログインすれば自動で自社専用の価格や取引条件が反映される仕組みが完成。
導入後は取引先から「注文が圧倒的にラクになった」と好評で、事務工数の削減だけでなく、顧客の囲い込み(リピート率向上)にも成功しました。

事例3:医療業界(医療資材卸)|「事業再構築補助金」で非対面受注へ

・導入前の課題:
コロナ禍を背景に、衛生用品や医療資材を扱うこの卸業者は、医療機関から「非対面での安全な受注環境」を強く求められました。
しかし、従来の対面営業とFAX受注が中心で、オンライン対応の仕組みがありませんでした。

・導入のハードル:
社会的な要請に応えるため、早急なシステム導入が必要でしたが、パンデミック下での売上減少もあり、新たな設備投資の余裕がありませんでした。

・補助金の活用と成果:
「非対面型ビジネスモデルへの転換」という枠組みで「事業再構築補助金」を活用し、短期間でBtoB-ECを導入。
結果、注文から納品までの流れをWeb上で完結できるようになり、医療機関からの急な注文にもスピーディーに対応可能となりました。
補助金のおかげで初期投資の負担が軽減され、社会的な要請にも応える体制を整えることができました。

第3章:補助金を活用する際に「失敗しない」ためのポイント

補助金は魅力的な制度ですが、申請すれば誰でも採択されるわけではありません。
活用を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。

1. ポイント1:補助金申請の実績が豊富なベンダー(開発会社)を選ぶ

これが最も重要です。
補助金の申請書類(事業計画書など)は、審査員を納得させるだけの専門的な内容が求められます。
IT導入補助金であれば「IT導入支援事業者」として登録されているか、ものづくり補助金であれば過去の「採択実績」が豊富かなど、ベンダーのサポート体制が採択率を大きく左右します。

2. ポイント2:公募のスケジュールを把握し、早期に準備する

補助金は、公募期間(申請受付期間)が限られています。
特に「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」は、申請書の作成に数週間から1ヶ月以上かかることもあります。
「導入したい」と思ったタイミングで公募が終わっているケースも多いため、常に最新の公募スケジュールを把握し、ベンダーと早期に準備を進めることが重要です。

3. ポイント3:「補助金は後払い」であると理解する

多くの補助金は、先にBtoB-ECの導入費用を全額自社で支払い(立替払い)、その後の実績報告を経て、数ヶ月後に補助金が振り込まれる「精算払い(後払い)」方式です。
導入時に全額の支払いが必要となるため、手元のキャッシュフローや資金調達(つなぎ融資など)の計画も併せて考えておく必要があります。

4. ポイント4:BtoB-ECで「何を解決したいか」を明確にする

補助金は「ツールを買うこと」が目的ではなく、「経営課題を解決すること」が目的です。
「FAX受注による事務工数を月間50時間削減する」「受注ミスを80%削減する」など、BtoB-EC導入によって何を解決したいのかという明確な目的と、可能であれば数値目標を持つことが、採択される事業計画書の基本となります。

まとめ:BtoB-ECは「コスト」ではなく「投資」。 補助金はそのハードルを下げる切り札

補助金を活用すれば、BtoB-EC導入の最大のハードルである「初期費用」を大幅に抑えることができます。

そして導入後は、事例の企業のように、FAXや電話に依存した非効率な受注フローから脱却し、「業務効率化」「人的ミスの削減」「顧客満足度の向上」といった、投資額を上回る大きな成果を実現できます。

「費用がネックで導入を迷っている」「ウチの規模ではまだ早い」と感じている企業こそ、補助金の活用は最も賢明な選択肢です。
自社の課題がどの補助金の対象になるか、まずは信頼できるベンダーに相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

※本コラムでは過去の実績をご紹介しておりますが、現在の補助金制度によっては、BtoB-ECが申請対象外となる場合がございます。
あらかじめご了承いただけますと幸いです。

投稿者プロフィール

OSAMU HORIKAWACEO
関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。

システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。

その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)

2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。

クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution


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