はじめに:「在庫確認の電話」に、貴重なリソースが奪われていませんか?
小売業の現場において、「在庫管理」は売上に直結する最重要業務の一つです。
しかし、取扱商品(SKU)の数が数千、数万点と増えるにつれ、その管理は煩雑さを極めます。
特に、卸売やBtoB取引を並行して行っている小売業では、以下のような課題が業界共通の悩みとなっています。
- FAXや電話で卸先から受注が入り、その都度、基幹システムやExcelの在庫数を「手作業」で更新している。
- 更新が間に合わず、ECサイトと卸売で「二重注文(ダブルブッキング)」が発生し、顧客に謝罪とキャンセル連絡を入れている。
- 倉庫、実店舗、BtoC-ECサイト、BtoB-EC(卸売)の在庫がバラバラに管理され、リアルタイムな全社在庫が誰も把握できていない。
- 結果として、安全在庫を過剰に抱えてしまい、キャッシュフローを圧迫している。
こうした状況は、顧客満足度の低下、営業機会の損失、そして何より従業員の疲弊に直結します。
本記事では、BtoB-ECシステムを単なる「受注窓口」としてではなく、「在庫管理のハブ」として導入し、これらの課題を根本から解決した小売業の成功事例を3つのパターンに分けて具体的にご紹介します。
事例1:アパレル小売業|「Excel管理」から脱却し、営業の問い合わせ対応を半減
導入前の課題
数千点に及ぶアパレル商品(色・サイズ違いを含む)を取り扱うこの企業では、長年、卸先向けの在庫管理をExcelで行っていました。
営業担当者は、卸先から「あの商品のMサイズ、在庫ある?」という電話を受けるたびに、Excelファイルを開き、さらに倉庫担当者に内線で確認するという非効率な業務に追われていました。
Excelの更新も1日に1回だったため、情報の鮮度が低く、欠品によるクレームもしばしば発生していました。
導入した仕組み
BtoB-ECシステムを導入し、基幹の「倉庫管理システム(WMS)」とAPIでリアルタイム連携させました。
これにより、以下の環境が実現しました。
- 顧客(卸先)がWeb上で「リアルタイムの在庫数」を自分で確認できる。
- 倉庫で出荷処理が完了すると、その瞬間にBtoB-EC上の在庫数も自動で更新(減少)される。
- 在庫がゼロになった商品は自動的にカートに入れられない設定にし、物理的に欠品クレームが発生しない仕組みを構築。
導入後の効果
最も大きな変化は、営業担当者の業務内容でした。
「在庫確認の電話」が半減し、営業は本来の業務である「新商品の提案」や「取引先のフォローアップ」に時間を使えるようになりました。
結果として、受注処理にかかる時間は全体で30%削減され、欠品によるキャンセル率も大幅に低下。
顧客からも「在庫がリアルタイムでわかるので発注しやすい」と信頼度が向上しました。
事例2:食品小売業|「賞味期限」の見える化と先入れ先出しの自動化
導入前の課題
食品を扱う小売・卸売業では、在庫管理に「賞味期限」という非常に厄介な要素が加わります。
この企業では、どのロットの在庫がいつまでに出荷すべきかをExcelと目視で管理しており、出荷ミスや、気づいた時には賞味期限が切迫して「廃棄ロス」が発生していました。
取引先からも「古い日付の商品が届いた」というクレームが課題でした。
導入した仕組み
BtoB-ECシステムに「ロット管理機能」をカスタマイズして導入。
以下の点を改善しました。
- 商品マスタに「在庫数」だけでなく「賞味期限(ロット日)」も登録。
- ECが受注を受けると、自動的に「賞味期限が近い在庫(古い在庫)」から出荷指示データ(ピッキングリスト)を生成する「先入れ先出し(FIFO)」のロジックを組み込みました。
- さらに、顧客側もWebで「今注文すると、いつの賞味期限の商品が届くか」を確認できるようにしました。
導入後の効果
アナログ管理による出荷ミスがなくなり、食品ロス(廃棄ロス)が大幅に減少。
在庫回転率も向上しました。
何より、取引先のスーパーや飲食店から「日付が明確なので安心して発注できる」という高評価を得ることができ、取引の信頼関係が強化されました。
事例3:日用品小売業|「チャネル横断」の在庫一元管理を実現
導入前の課題
日用品を扱うこの小売業では、販売チャネルが「BtoBの卸売」「BtoCの自社ECサイト」「実店舗(POSレジ)」と複数存在していました。
最大の問題は、これらの在庫がチャネルごとに「サイロ化(分断)」していたことです。
BtoBで在庫が切れているのに実店舗にはある、BtoCで売れたのにBtoBの在庫が減らない、といった状況で、機会損失と過剰在庫が同時に発生していました。
導入した仕組み
BtoB-ECシステムを「在庫管理の司令塔(ハブ)」として位置づけ、既存の全システムと連携させました。
- BtoB-ECの在庫マスタを「正」とする。
- BtoC-ECサイトや実店舗のPOSレジともAPI連携し、いずれかのチャネルで1つ売れたら、すべてのチャネルの在庫がリアルタイムで減る仕組み(在庫一元管理)を構築。
- BtoB-EC上で、倉庫から店舗への「補充指示」も自動化しました。
導入後の効果
チャネルを横断した在庫の「見える化」が実現。
在庫過多や欠品のリスクが劇的に減少し、在庫回転率は導入前と比較して20%も改善しました。
また、全チャネルの売上データを一元的に分析できるようになったため、需要予測の精度も向上しました。
BtoB-EC導入 成功のポイント
これらの事例から見える共通の成功要因は、BtoB-ECを「単なる受注サイト」として捉えなかった点にあります。
1. リアルタイム連携の徹底
BtoB-EC(受注側)と、基幹システムや倉庫システム(在庫側)をAPIやCSVで確実に「リアルタイム連携」させることが、在庫管理効率化の心臓部です。
2. 顧客視点での「在庫の見える化」
自社が管理しやすくなるだけでなく、顧客(取引先)が自ら「在庫状況を確認できる」UIを設計すること。
これが、不要な問い合わせを減らし、顧客の信頼を高める鍵となります。
3. 業務フロー全体の再設計
システム導入を機に、旧態依然とした「受注・補充・出荷」の社内オペレーションフローそのものを見直し、デジタル化を前提とした流れに再設計することが重要です。
まとめ
小売業におけるBtoB-ECの導入は、単なる「FAXや電話からの注文受付の効率化」にとどまりません。
在庫管理システムと連携させ、それを「顧客に見せる」仕組みを構築することで、在庫管理を含めた業務全体の劇的な効率化、クレーム削減による顧客体験の改善、そして欠品による機会損失の防止(売上の最大化)に直結します。
「在庫管理がネックで、受注対応が追いつかない」
「顧客からの在庫確認の電話に追われ、本来の業務ができない」
こうした課題を抱えている小売業にとって、BtoB-ECは最も強力な解決策の一つとなるでしょう。
投稿者プロフィール
- CEO
- 関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。
システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。
その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)
2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。
クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
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