BtoB-ECとは何か、導入で解決できる課題、費用目安、導入の流れ、成功のポイントを製造業・卸売業の実務に即して解説します。EC-CUBE・SaaS・スクラッチの費用比較つき。
「FAX・電話・メールでの受注をなんとかしたい」「受注業務が担当者に依存している」「件数が増えるほど処理が追いつかない」。
製造業・卸売業の経営者や業務担当者から、こういった声を頻繁に聞きます。BtoB-ECはこれらの課題を構造的に解決する仕組みですが、BtoCのECサイトとは設計の考え方が大きく異なります。
本記事では、BtoB-ECの基本から費用・導入手順・成功のポイントまでを、実務に即して解説します。
BtoB-ECとは(概要)
BtoB-EC(Business to Business EC)とは、企業間の受発注・見積・決済などをWebで完結させる仕組みです。
具体的には、取引先がIDとパスワードでログインし、商品を選んで数量を入力して注文する。その注文データが自社の管理画面や基幹システムに連携される。これがBtoB-ECの基本的な流れです。
FAX・電話・メールで行っていた受注業務を「人を介さずデータとして受け取る」仕組みへ転換することが、BtoB-ECの本質です。
BtoB-ECは「ECサイトを作る」ことではなく、「受注処理の構造を変える」取り組みです。単なるWebページではなく、業務フローと連動したシステムとして設計する必要があります。
BtoB-EC導入で解決できる課題
BtoB-ECを導入する理由は企業によって異なりますが、製造業・卸売業で共通して挙がる課題は以下の4つです。
- 転記・入力の工数:FAXやメールの注文書を見ながら基幹システムへ手入力する作業は、件数が増えるほど工数が膨らみます。BtoB-ECでは注文データが直接システムに入るため、転記が不要になります。
- 確認・問い合わせの多さ:単価・在庫・納期の確認が必要な注文が発生するたびに、社内確認や顧客への折り返し電話が発生します。BtoB-ECでは取引先別の価格・在庫状況をリアルタイムで表示できます。
- 属人化・引き継ぎ困難:特定の担当者しか処理できない運用が残ると、担当者不在時の対応や業務引き継ぎが困難になります。BtoB-ECでは受注フローが仕組み化され、誰でも対応できる状態になります。
- 深夜・休日の発注対応:営業時間外の注文をFAXで受けていると、対応が翌営業日になります。BtoB-ECでは24時間365日の受注受け付けが可能になります。
BtoCとの違い|なぜBtoBは難しいのか
BtoB-ECはBtoC(消費者向け)のECサイトと根本的に設計が異なります。「ECサイトを作ればよい」という発想で進めると、後から使えないシステムになるケースが多いです。
主な違い
| 項目 | BtoC-EC | BtoB-EC |
|---|---|---|
| 価格 | 全員に同一価格 | 取引先ごとに異なる価格・掛け率 |
| 決済 | クレジットカード即決済 | 請求書払い・月締め・与信管理 |
| 発注単位 | 1個から購入可 | 最低発注数・ロット単位・ケース単位 |
| 承認フロー | なし | 申請→上長承認→発注確定のフロー |
| 帳票 | シンプルな注文確認メール | 注文書・納品書・請求書の発行が必要 |
| 基幹連携 | 不要なことが多い | 販売管理・在庫管理との連携が必須 |
BtoCのECパッケージをそのままBtoB用途に使おうとすると、「取引先別価格が設定できない」「請求書払いに対応できない」「基幹システムと連携できない」という問題が後から発覚します。BtoB-EC専用の設計が必要です。
導入の流れ・スケジュール
BtoB-EC導入は、要件整理から稼働まで一般的に2〜6ヶ月かかります。以下が標準的な流れです。
- 1
現状の受注業務の棚卸し(2〜4週間)
FAX・電話・メール別の月間受注件数、1件あたりの処理時間、担当者数、基幹システムの種類と連携方法を整理します。ここを省略すると要件定義がずれます。
- 2
要件定義・構築方法の決定(2〜4週間)
取引先別価格・承認フロー・基幹連携・帳票の要件を整理し、EC-CUBE / SaaS / スクラッチのどれで構築するかを決定します。この判断が費用と期間に最も影響します。
- 3
構築・カスタマイズ(1〜3ヶ月)
選んだ構築方法に基づいてシステムを構築します。基幹システムとのAPI連携がある場合は、この工程が最も時間がかかります。
- 4
テスト・修正(2〜4週間)
実際の取引先データを使った動作確認・価格設定の検証・注文〜基幹連携の一連テストを実施します。取引先に参加してもらうUATも重要です。
- 5
取引先への案内・並行運用開始(1〜2ヶ月)
FAXとWeb受注を並行運用しながら、移行しやすい取引先からWeb受注に切り替えます。一気に全廃せず、Web受注比率を徐々に高めるアプローチが現実的です。
- 6
定着・利用促進(継続)
稼働後が本当の勝負です。取引先のWeb受注比率・再注文率・問い合わせ件数の変化をモニタリングし、使われない原因を都度改善します。
費用目安|構築方法別の比較
BtoB-EC構築にかかる費用は、選ぶ構築方法によって大きく異なります。以下は目安です(要件によって変わります)。
| 構築方法 | 初期費用目安 | 月額費用 | 期間目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| EC-CUBEカスタマイズ型当社得意 | 100〜300万円 | 保守費用のみ | 2〜4ヶ月 | 複雑な商習慣・会員別価格・基幹連携が必要 |
| SaaS型(月額課金) | 20〜50万円 | 5〜15万円 | 1〜2ヶ月 | 標準機能で対応できる・まず小さく始めたい |
| フルスクラッチ開発 | 500万円〜 | 保守費用のみ | 6ヶ月〜 | 独自の商流・大規模・既存システムと密結合 |
SaaS型は初期費用が低く見えますが、月額費用が永続するため5年間の総コストではEC-CUBEカスタマイズ型と逆転することがあります。長期的なTCO(総所有コスト)で比較することが重要です。
費用を左右する4つの要因
同じ「EC-CUBEカスタマイズ型」でも、100万円で収まる案件と300万円を超える案件があります。費用を大きく左右するのは以下の4つです。
基幹システムとの連携
販売管理・在庫管理・会計システムとのAPI連携は、工数の中で最も大きい要素です。連携する項目数と既存システムのAPI対応状況で費用が変わります。
会員別価格の複雑さ
「取引先Aには定価の80%、取引先Bには75%」程度なら標準的。「商品カテゴリ×取引先ランク×数量」の3軸で価格が変わる場合は設計が複雑になります。
承認フローの有無
「担当者が発注申請→上長が承認→注文確定」というフローが必要な場合、権限管理の設計が発生します。単純な受注のみなら不要です。
帳票出力の複雑さ
注文確認書・納品書・請求書の自動生成が必要かどうか。フォーマットが1種類か複数かによっても費用が変わります。
導入後に成果を出すためのポイント
BtoB-ECは稼働させた後の「定着フェーズ」が最も重要です。「構築したが使われない」という失敗の多くは、発注側(取引先)の視点が抜けていることと、稼働後のフォローがないことに起因します。
発注側が使いやすい設計をする
自社の効率化だけを考えて設計すると、取引先にとって使いにくいシステムになります。以下の点が発注側の使いやすさに直結します。
- 過去の注文履歴から再注文できる
- 自社の取引単価・掛け率がログイン後すぐに見える
- よく注文する商品をお気に入り登録できる
- 注文後に確認メールが届き、出荷状況が追跡できる
- スマートフォンから操作できる
段階的な移行で取引先の負担を減らす
全取引先を一気に切り替えようとすると、ITに不慣れな取引先から強い反発が出ることがあります。「再注文率が高い取引先」「ITに慣れた担当者がいる取引先」から優先的に移行し、Web受注比率を段階的に高めるアプローチが現実的です。
稼働後のKPIで効果を測定する
導入効果を数値で確認することで、次の改善につながります。
- Web受注比率(月次)
- 受注処理にかかる平均時間
- 受注ミス・確認連絡の件数
- 取引先あたりの再注文率
よくある質問
Q
BtoB-ECとは何ですか?
+
Q
BtoB-EC導入にかかる費用はどれくらいですか?
+
Q
BtoB-EC導入の期間はどれくらいかかりますか?
+
Q
BtoB-ECはSaaS型とEC-CUBEどちらがよいですか?
+
Q
取引先がFAXやメールに慣れていてもBtoB-ECに移行できますか?
+
Q
BtoB-EC導入後、取引先に使ってもらえない場合はどうすればよいですか?
+
BtoB-EC導入に関するご相談
「FAX・電話受注をなんとかしたい」
「BtoB-ECの費用・期間の目安を知りたい」
「EC-CUBEとSaaSのどちらが自社に向いているか相談したい」
製造業・卸売業の受注DX・BtoB-EC構築の実績をもとに、現状ヒアリングから費用目安のご提示まで無料でご対応します。
初回相談無料。概算のご提示まで費用はかかりません。
投稿者プロフィール

- CEO
- 株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。
関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。
この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。
その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。
2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。
単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。
NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
■趣味・関心領域
BMW / WRC / ロードバイク / RIZIN / UFC / 大相撲
David Bowie / blur / MUSE / The Rolling Stones / XTC
機動戦士ガンダム(富野由悠季)
ベルセルク / 頭文字D / 進撃の巨人 / ジョジョの奇妙な冒険 / あしたのジョー
Mission: Impossible / Memento / ワイルド・スピード / ソナチネ
LOST / Game of Thrones / FRINGE / The Mentalist
上岡龍太郎 / ダウンタウン









