「見積地獄」と「在庫確認の電話」からの脱却。建築資材業界がBtoB-EC導入で業務効率化した3つの成功事例

「見積地獄」と「在庫確認の電話」からの脱却。建築資材業界がBtoB-EC導入で業務効率化した3つの成功事例B2B-EC
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はじめに:なぜ建築資材業界の「FAX・電話受注」は限界なのか

建築資材業界は、その取引の特性上、日本で最もアナログな受発注業務が根強く残っている業界の一つです。
鉄鋼、木材、塗料、工具、内装建材など、多岐にわたる商品を、ゼネコン、地域の工務店、設計事務所、職人といった多様な取引先に対して販売しています。

しかし、その「当たり前」だったFAXや電話による取引が、深刻な「人手不足」と「業務の属人化」という経営課題を引き起こしています。

  • 見積依頼のやりとりが紙ベース(FAX)で非効率すぎる。
  • 現場(工務店)からの「あの在庫ある?」「納期はいつ?」という電話確認に、営業や事務スタッフが一日中追われている。
  • 顧客ごと・現場ごとに異なる単価や掛け率の管理が担当者の記憶頼りになっており、ミスや情報共有の遅れが発生している。
  • 見積作成や受注処理といった「作業」に追われ、営業担当者が本来やるべき「提案活動」ができていない。

これらの課題は、社員の残業時間を増やし、顧客満足度を低下させ、最終的には企業の競争力を奪っていきます。
この記事では、この深刻な課題を解決するためにBtoB-EC(企業間取引用ECシステム)を導入し、業務効率化と顧客満足度の向上に成功した企業の事例を3つのパターンでご紹介します。

事例1:中堅資材商社の「見積地獄」からの脱却

導入前の課題

ある建築資材商社では、年間数千件以上にのぼる見積依頼を、ほぼ全てFAXで受け付けていました。
営業事務の担当者は、届いたFAXの読みづらい文字をExcelへ転記し、仕入れ先に価格を確認、上長の承認を得て、再度見積書を作成しFAXで返信する…という一連の作業に忙殺されていました。
見積回答のスピードが遅れることで、競合他社に案件を奪われる(失注する)リスクも抱えていました。

導入した施策

BtoB-ECシステム上に、業界特有の「見積ワークフロー機能」を構築。
以下の点を実現しました。

1. 顧客(工務店など)が、顧客専用のマイページから必要な商品をカートに入れ、そのまま「見積依頼」として申請できる。
2. 過去の履歴を参照できるため、顧客は「前回のあの現場と同じ見積を」といった依頼が簡単にできる。
3. 商社側は、依頼内容をWeb上で確認し、価格を入力(またはマスタから自動反映)し、承認フロー(担当者→上長)もシステム上で完結。
4. 承認された見積書は自動でPDF生成され、顧客のマイページに即時通知される。
5. 顧客は、その見積内容でよければ、ボタン一つで「発注」に切り替えられる。

導入後の効果

見積対応にかかる一連の時間は、従来の3分の1以下に短縮されました。
手入力による転記ミスも撲滅され、見積履歴がすべてデータとして残るため、価格の管理も容易になりました。
何より、営業担当者が見積作成という「作業」から解放され、顧客の潜在ニーズを聞き出す「提案活動」に注力できるようになった結果、見積からの受注転換率も向上しました。

事例2:建材メーカーの「在庫・納期管理」の透明化

導入前の課題

ある建材メーカーでは、取引先(商社や工務店)から「今すぐあの商品は納品できるのか」「A倉庫ではなくB倉庫に在庫はないか」といった納期・在庫に関する問い合わせが、営業担当者や事務スタッフに電話で殺到していました。
建築現場は工期が命であり、資材の納期が1日遅れるだけで現場全体がストップしてしまうため、問い合わせは常に緊急性を伴います。
担当者はその都度、基幹の在庫システムを確認し、生産管理部門に内線し、折り返し連絡するというフローに、多大な工数を取られていました。

導入した施策

BtoB-ECシステムと基幹の在庫管理システムをAPIでリアルタイム連携させました。

1. 顧客がWeb上で「リアルタイムの在庫数」と「最短の出荷予定日」を24時間いつでも自分で確認できるようにしました。
2. 「A倉庫在庫:50個」「B倉庫在庫:10個」といった、倉庫別の在庫数も可視化しました。
3. 過去の注文履歴から「再注文」できる機能を実装し、発注担当者の手間も削減しました。

導入後の効果

顧客が自分で在庫・納期を確認できる「セルフサービス化」が実現したことで、社内への問い合わせ電話は半減しました。
社内の電話応対工数が削減されただけでなく、顧客側も「電話がつながらない」「折り返しが遅い」といったストレスから解放され、顧客満足度が大幅に向上しました。

事例3:工務店向け販売会社の「掛け払い・個別単価対応」の自動化

導入前の課題

この資材販売会社では、取引先の工務店ごとに「A社向けの単価」「B社向けの単価」といった個別単価や、現場ごとの特別価格が存在し、その管理が完全に属人化していました。
ベテラン担当者がExcelや自身の記憶を頼りに価格を調整し、月末の請求処理も手作業で行っており、ミスが起きやすく、その担当者が休むと業務が滞るという深刻な経営リスクを抱えていました。

導入した施策

BtoB-ECに「顧客別単価管理機能」と「請求処理の自動化」を実装しました。

1. 基幹システムの顧客マスタと連携させ、顧客ごとに専用の単価(掛け率)をECサイトに自動で登録・反映。
2. 顧客がログインすると、自分専用の価格表が自動で表示される仕組みに。
3. 従来通りの「掛け払い(月末締め翌月払い)」決済と連携し、ECでの注文データを基に、請求書発行までを自動化。

導入後の効果

ベテラン担当者の頭の中にあった複雑な価格体系がシステム化・標準化され、属人化のリスクが解消されました。
顧客も「最初から正しい価格で注文できる」という安心感を得られました。
また、月末に集中していた請求業務にかかる工数は半分以下になり、経理部門の負担も大幅に軽減されました。

成功の秘訣:建築資材業界に求められる「業務システム」としてのBtoB-EC

これらの事例から分かるように、建築資材業界のBtoB-ECは、単なる「商品を並べたネットショップ」では機能しません。
業界特有の複雑な商習慣に対応できる「業務システム」としての設計が求められます。

  • 見積依頼から承認、そして発注へと流れる「ワークフロー」への対応。
  • 会社ごと、現場ごとに異なる「顧客別単価・掛け率」への柔軟な対応。
  • 工期に直結する「在庫・納期」のリアルタイム連携。
  • 長年の慣習である「掛け払い・請求書発行」の自動化。

これらを導入することで、社内の業務効率化と、取引先の利便性向上を同時に実現できるのです。

まとめ:BtoB-ECは「人手不足」と「属人化」を解決する経営戦略

建築資材業界におけるBtoB-ECの導入は、単なるコスト削減策ではありません。

・見積・発注対応のスピードアップによる、失注リスクの低減。
・在庫・納期確認の自動化による、顧客満足度の向上。
・複雑な価格・請求処理の自動化による、属人化リスクの解消。

これらを通じて、営業担当者や事務スタッフを「単純作業」から解放し、より付加価値の高い「提案活動」や「顧客サポート」にリソースを集中させること。
それこそが、人手不足が深刻化する今後の建築資材業界において、競争優位性を確立するための強力な経営戦略となります。

投稿者プロフィール

OSAMU HORIKAWACEO
関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。

システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。

その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)

2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。

クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution


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