BtoB-ECと基幹システムの連携方法|API・CSV・RPAの使い分け【2025年最新版】

BtoB-ECと基幹システムの連携方法|API・CSV・RPAの使い分け【2025年最新版】B2B-EC
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はじめに:BtoB-ECは“業務システム”と切り離せない

BtoB-ECサイトの構築は、単なる「Webで商品を売る仕組み」ではありません。
特に法人間取引においては、ECシステムが業務全体の中核に位置づけられ、社内外のあらゆるプロセスと連動して動く必要があります。

BtoCとは異なり、BtoBでは注文から納品・請求・入金までの流れが複雑かつ企業ごとに異なります。
顧客ごとの価格・取引条件、見積依頼、納品スケジュール調整などが日常的に発生し、これらをEC上で対応するためには既存の業務システムとの連携が不可欠です。

最も大きな検討ポイントとなるのが、「既存の基幹システム(ERP/販売管理/会計/在庫管理システムなど)とどのように連携するか」です。
ECの前段や裏側にある業務基盤とシームレスにつながってこそ、真の業務改善・属人化解消・省力化が実現します。

本記事では、代表的な3つの連携手段であるAPI連携・CSV連携・RPA活用について、それぞれの特徴や適したケース、導入ステップを具体的に解説します。

なぜBtoB-ECに基幹システム連携が必要か?

BtoB-ECを構築しても、基幹システムと連携せずに“手作業”のままでは、以下のような問題が頻発します。

  • 注文内容を手入力:入力ミスや記録漏れ、転記ミスが発生しやすくなる
  • 在庫・出荷ステータスの不一致:EC上では「在庫あり」でも、実際は欠品しているケース
  • 顧客別の価格・条件の不整合:営業が扱う価格とEC上の表示が異なり、トラブルの元に

これらの不整合を放置すると、受注漏れ/誤出荷/二重請求/キャンセル処理の手間増加/業務属人化といったリスクが高まり、かえって業務負荷が増す結果になりかねません。

そのため、ECと基幹システムとの連携は業務全体を正確かつスピーディに動かすための前提条件ともいえます。
特に法人取引では、クレーム対応の即時性や取引履歴の正確性が信頼に直結するため、ECと基幹との「情報の一致」が何よりも重要です。

理想は、リアルタイムかつ双方向の連携です。
受注が入った瞬間に在庫が更新され、納期や請求情報が自動で反映される環境を整えることで、業務全体の生産性と顧客満足度が大幅に向上します。

連携方法①:API連携(リアルタイム・双方向)

特徴

API(Application Programming Interface)連携は、2つ以上のシステムがインターネット経由で直接データをやり取りできるようにする仕組みです。
BtoB-ECと基幹システムをAPIでつなぐことで、リアルタイムかつ双方向にデータを送受信できます。

  • システム間を自動・双方向・リアルタイムで連携
  • 在庫・顧客情報・受注情報などをその都度やり取り

メリット

  • 常に最新の在庫・価格・ステータスを反映でき、情報のタイムラグがない
  • 完全自動化により、人手を介さず業務をスピードアップ
  • 重複管理・手入力が不要となり、ミスや工数を大幅削減

デメリット

  • システムのAPI仕様を理解し、個別開発する必要がある
  • ネットワーク障害やAPIエラー時の対策設計(例:リトライ処理)が必要

向いているケース

  • 基幹システム側がAPIを提供している(Salesforce、SAP、freeeなど)
  • 在庫連携・納期反映など、リアルタイム性が業務品質に直結する
  • 開発体制がある or ITパートナーと密に連携できる

API連携は、最も理想的かつ効率的な手段ですが、導入には一定の開発投資と技術的知見が必要です。
社内リソースとのバランスを見て判断しましょう。

連携方法②:CSV連携(簡易・バッチ型)

特徴

CSV連携は、エクセルのような形式でデータを出力・取込する方法です。
ECや基幹システムがCSV形式の入出力に対応していれば、ファイルの送受信によるバッチ処理で連携が実現できます。

  • CSVファイルをエクスポート/インポートしてデータを連携
  • 「夜間バッチ処理」「日次集計」などで利用される

メリット

  • API開発に比べて初期費用や構築期間を抑えられる
  • Excel操作に慣れている現場でも理解しやすい
  • レガシーシステム(API非対応)とも連携しやすい

デメリット

  • データに時差があり、リアルタイム更新は難しい
  • ファイル形式の仕様がズレやすく、手直しが発生しやすい
  • 人手の作業(ファイル出力や送信)が残りやすい

向いているケース

  • EC-CUBEなどのCSV入出力機能を活用できる場合
  • 「日次連携で十分」など、頻度がそれほど高くない業務
  • 開発投資を抑えてまずはスモールスタートしたい企業

CSV連携は、最も多くの企業が採用している現実的な選択肢です。
後からAPI連携へ移行できるよう、CSV仕様をドキュメント化しておくと安心です。

連携方法③:RPA活用(画面操作の自動化)

特徴

RPA(Robotic Process Automation)は、人がPC上で行っている操作をソフトウェアロボットが自動で代行する仕組みです。
ECや基幹システムがAPIやCSVに非対応でも、実際の画面操作(マウスやキーボード)を模倣することで自動化が可能です。

  • 人がやっていた「画面操作(クリック・入力)」を自動化
  • APIやCSV非対応のレガシーな旧システムでも導入可能

メリット

  • 既存業務フローをほぼ変えずに自動化できる
  • 画面設計のまま使えるためシステム改修が不要
  • 構築費用を抑えられ、短期間で効果を出しやすい

デメリット

  • 画面構成やUI変更に非常に弱く、エラーが発生しやすい
  • 動作の安定性に課題があり、定期的なメンテナンスが必要
  • エラー時のリカバリーに人の判断を要することがある

向いているケース

  • 古いオンプレミスの業務システムを使用しており他の連携手段が難しい
  • ECから出力した注文情報を基幹へ“手入力代行”したい
  • 完全自動化よりも、定型業務の“省力化”が主目的の企業

RPAは「つなげられないシステムを無理なく自動化したい」ときの有効な手段です。
ただし、本格的な業務基盤としては不安定な側面もあるため、「暫定対応」や「過渡期対策」として位置づけるのが現実的です。

実際の導入例:EC-CUBE × 基幹システム連携のパターン

EC-CUBEはオープンソースかつ柔軟な設計のため、CSV・API・RPAのすべての連携方式に対応可能です。
ここでは、実際の導入現場でよく見られる連携パターンを紹介します。

連携項目手段内容例
受注データ → 基幹CSV or APIEC受注データを基幹の販売管理システムに自動取込
基幹在庫 → ECAPI or CSV定期取込毎時・毎日などの間隔で在庫数を更新し、売り越し防止
顧客情報連携APIEC上で登録された顧客を基幹へ反映。取引履歴の統合も可能
発注ステータス更新RPA出荷完了・納品済みなどの情報をEC画面に反映

このように、ひとつのプロジェクトでも複数の連携方式を併用するケースが増えており、自社の業務やシステム環境に応じた“ミックス戦略”が効果的です。

選定のポイント:API・CSV・RPAの使い分けフローチャート

どの連携手段を選ぶべきかは、単に「技術的に可能か」だけでなく、「運用上の現実性」「人材・リソース」「将来の拡張性」などを総合的に判断する必要があります。

判断の目安

  • API連携:自社に開発体制がある or ベンダーが対応してくれる/リアルタイム性が重要
  • CSV連携:エクセル文化が根強い/日次・週次で十分/現場への教育コストを抑えたい
  • RPA活用:レガシーシステムの画面操作を自動化したい/短期で成果を出したい

すべてを完璧に連携する必要はありません。最も効率が良い“つなぎ方”を見つけることが、連携成功の鍵です。

基幹連携の全体像:どこをどう繋げばいいのか?

連携設計を始める際には、以下のような「業務マップ」と「データフロー図」を作成するのがおすすめです。

  • 注文フロー:EC→基幹→出荷→請求→入金
  • 在庫フロー:基幹→EC
  • 顧客フロー:EC⇔基幹(双方向)
  • 分析・会計:基幹→BIツール or 経理システム

各ポイントで「どの方式で、どのタイミングで、誰が運用するか」を定義することが、トラブルのない安定運用につながります。

社内の連携も成功のカギ

技術的な連携だけでなく、社内の部門間連携も成功には不可欠です。
情シス、受注チーム、営業、物流、経理などがそれぞれの立場でデータの意味を理解し、連携後の運用イメージを共有しておくことが重要です。

特にBtoBビジネスでは、1件の受注に関わる部門数が多いため、最初の設計段階から関係者を巻き込んでプロジェクトを進めましょう。

導入ステップ:連携方法はこう決める

  1. 基幹システムの仕様と制約を調査(API有無・CSV形式・利用者制限など)
  2. 業務上、連携が必要なデータ項目を洗い出す(受注・在庫・顧客・出荷・請求など)
  3. データの頻度や正確性要件を定義(例:在庫は10分単位、顧客情報は日次反映でOK など)
  4. API・CSV・RPAの技術的・運用的妥当性を検討
  5. 試験導入(PoC)で最小構成から開始

段階的に進めることで、業務の混乱を最小限に抑えながら確実に移行できます。

注意したい“落とし穴”と回避策

  • バージョンアップ非対応APIに依存していた
    → メンテナンス性とサポート体制を事前確認CSVの仕様が口頭ベースで属人化
    → 連携仕様書(マッピング表)を明文化RPAがいつの間にか動かなくなっていた
    → システムUI変更時に通知される体制づくり

連携トラブルは、たいてい“ちょっとした変化”に気づかないことで発生します。
監視やチェック機能も並行して整備しましょう。

段階導入のススメ:「今すぐ完璧」より「確実な第一歩」

すべてを最初から完全自動化するよりも、まずはCSVや半自動化から始めて、運用が固まったらAPIへ移行するという“進化型”が現実的かつ効果的です。

また、費用対効果を可視化しながら段階導入することで、社内承認や他部門の協力も得やすくなります。

「今あるシステム環境の制約に柔軟に対応しながら、将来を見据えた連携計画を立てる」ことが、BtoB-EC成功の秘訣です。

まとめ:最適な連携方法で“動くBtoB-EC”を実現する

BtoB-ECを成功させるには、構築だけでなく、日々の業務とシステムが一体となって動く仕組みが必要です。

API連携でリアルタイム性を追求するもよし、CSV連携で運用しながら改善していくもよし、RPAで最小限の自動化を試すもよし。
自社の現状と目的に応じた“連携戦略”を描くことが、EC導入後の成果を最大化するカギとなります。

まずは小さく始めて、確実に回す。
そこから最適な連携方法へと“育てる”視点が、BtoB-ECと基幹業務の真の統合を実現します。

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投稿者プロフィール

OSAMU HORIKAWACEO
関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。

システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。

その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)

2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。

クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution


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