FAX受注からの脱却をどう提案する?業務改善シナリオと導入ロードマップ

FAX受注からの脱却をどう提案する?業務改善シナリオと導入ロードマップB2B-EC
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はじめに:クライアントの「FAXをやめたい」に、どう応えていますか?

「FAX注文が非効率で困っている」
「DXを進めたいけれど、何から手をつけていいか分からない」
こうした声は、製造業・卸売業・印刷業など多くの現場で聞かれるものです。

しかし、課題感はあっても、クライアント自身が“どの業務をどう改善すれば良いのか”を具体的に把握できていないケースが大半です。
現場の業務は長年の慣習や人員構成に依存していることが多く、単に「FAXを廃止しましょう」と提案しても現場は動きません。

だからこそ、私たち提案者(SIer・ベンダー・パートナー企業)には、「業務の見える化 → 改善シナリオ → 段階導入」という明確な流れを描いた提案が求められます。
この流れを押さえることで、現場に納得感を与え、導入後の定着率も高めることができます。

FAX注文業務の構造と課題ポイント

FAX受注の典型的な業務フロー

  1. 顧客が注文書をFAX送信
  2. 担当者が紙で受信し、仕分けを行う
  3. 内容確認後、手入力で基幹システムに登録
  4. 不明点があれば電話やメールで確認
  5. 紙の注文書をファイリング・保存

よくある課題

  • 入力ミス、見落とし、転記ミスが頻発
  • 担当者依存による属人化、教育や引き継ぎの困難さ
  • 紙ベースでの履歴管理のため検索・分析が困難
  • 顧客対応スピードの低下による満足度の低下

FAX業務は表面的には「単純作業」に見えても、実際には確認・照会・入力といった多段階の工程が絡み合っています。
そのため、人的リソースを大きく消費し、ミスの温床となりやすいのです。

提案は「3ステップの改善シナリオ」で構築する

STEP1:現状を可視化する(As-Is)

まずは、FAX受注業務の全体像を正確に把握します。
単なる感覚値ではなく、定量データとして示すことが重要です。

  • 月間FAX件数・処理時間・誤入力件数
  • 業務フロー図(誰が/何を/どの手段で行っているか)
  • 課題と業務工数の関係を数値で示す

現状のボトルネックを可視化することで、提案の説得力が大きく高まります。

STEP2:改善ゴールとKPIを定義する(To-Be)

現場と経営層の両方が納得できるゴール設定が必要です。

  • 月間作業時間を80%削減
  • 出荷ミス件数を50%削減
  • 顧客対応スピードの大幅向上
  • 再注文率の向上による売上アップ

定量目標を明確にすることで、導入後の効果検証が可能になります。

STEP3:段階的な手段を選定する(How)

改善手段特徴向いている状況
OCRFAX文書を自動読み取りしてデータ化書式が統一されている場合
RPA既存システムの操作を自動化APIがなく、短期導入したい場合
Webフォーム顧客にWeb入力を促す受注方式顧客のITリテラシーが高い場合
BtoB-EC顧客ログイン型の注文サイト定期取引や拡張性を重視する場合

信頼される提案の3つのポイント

1. ツールではなく「業務の変化」を示す

「OCRを導入すると便利です」という説明では不十分です。
「毎日4時間かかっていた受注処理が、1時間に短縮されます」というように、業務がどう変わるかを具体的に示します。

2. 経営視点のROIを含める

  • 月間工数の削減効果
  • 人件費換算によるコスト削減額
  • クレーム削減や顧客満足度向上の波及効果

数字を伴うROI提示は、経営層の判断を後押しします。

3. システム連携やスモール導入を含める

「まずはCSV連携で試行」「注文処理のみRPA導入」といった段階的なアプローチを提案します。
一気に全社展開するのではなく、小規模な試験導入で成功体験を積ませることが定着の鍵です。

導入ロードマップの一例(6ヶ月〜1年)

フェーズ期間内容成果物
現状把握〜1ヶ月業務ヒアリング・課題の棚卸しAs-Is業務フロー/課題一覧
要件定義1〜2ヶ月改善ゴール設定・手段選定To-Be業務・要件仕様
PoC(試験導入)3〜6ヶ月一部顧客や商品カテゴリで運用テスト業務負荷削減・定量評価
全社展開6ヶ月〜スケール導入・業務ルール標準化効果測定・ROI報告・次期拡張提案

まとめ:提案は「ツール紹介」より「業務改善のストーリー設計」が重要

提案時に大切なのは以下の3点です。

  • どの業務がどう変わるか
  • どれくらいの効果が期待できるか
  • どんな順序で導入を進めるべきか

この“業務改善シナリオ”と“導入ロードマップ”を丁寧に描くことで、単なるベンダーではなく「業務改善パートナー」としての信頼を獲得できます。

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投稿者プロフィール

OSAMU HORIKAWACEO
関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。

システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。

その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)

2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。

クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution


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