BtoB-ECの利用率を上げるには?可視化と改善の実践法|“使われない”を脱却する運用PDCA

BtoB-ECの利用率を上げるには?可視化と改善の実践法|“使われない”を脱却する運用PDCAB2B-EC
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はじめに:「導入したのに使われない」BtoB-ECの現実

BtoB-EC(企業間取引用のECシステム)を導入した企業から、次のような悩みをよく聞きます。

  • せっかく導入したのに、Web注文が思ったほど増えない
  • FAXや電話での注文が依然として多く、業務負担が減らない
  • 顧客も営業も「今まで通りのやり方で十分」と考えている

多くの企業は、BtoB-ECの導入そのものをゴールと捉えがちですが、実際にはそこからがスタートです。
システムは導入しただけでは利用率が上がらず、投資対効果が得られません。
重要なのは、“使われる仕組み”を継続的に作り、運用と改善(PDCA)を回すことです。

本記事では、BtoB-ECの利用率を高めるための「可視化」と「改善」の具体的な実践手法、成功事例、そして社内運用のポイントまで徹底解説します。

なぜBtoB-ECは“使われなくなる”のか?

利用されない背景には、いくつかの典型的な理由があります。

  • 顧客が使い方を覚えていない、または操作が難しい
  • 一部の顧客だけが利用し、それ以外は放置状態
  • 営業やカスタマーサクセス(CS)が利用促進に関与していない
  • 社内に「利用状況を継続的に管理する」文化がない
  • 顧客の声や利用データを元にした改善活動(PDCA)が回っていない

特に顧客側で「手間がかかる」と感じられてしまうと、FAXや電話といった従来の手段から離れられません。
その結果、導入効果が限定的になり、経営層や現場からの評価も下がってしまいます。

ステップ1:まずは「利用状況」を可視化する

改善の第一歩は現状把握です。感覚ではなく、数値で「どれだけ使われているのか」を明らかにしましょう。

利用状況を把握するKPI例

  • ログイン率:登録済ユーザーのうち、一定期間に実際にログインした割合
  • Web注文率:全受注のうち、Web経由で受けた注文の割合
  • 再注文率:前回Web注文した顧客が再びWebから注文した割合
  • 商品別利用率:商品カテゴリごとのWeb注文率(Web化に向く商品の特定に有効)

可視化の方法

  • ExcelやBIツールで週次・月次レポートを自動生成する
  • 未利用顧客リストを抽出し、営業やCSと共有
  • リアルタイムで状況を把握できるダッシュボードを構築

この段階で重要なのは「誰が見ても状況がわかる」形にすることです。
数字が見えることで、社内に危機感や改善意欲が生まれます。

ステップ2:改善のためのPDCAを回す

【Plan】課題仮説を立てる

なぜ顧客が利用していないのかを、データと現場の声から仮説化します。

  • UIが複雑で迷いやすい
  • 初回案内が不足している
  • 営業が旧来の注文方法を容認してしまっている

【Do】改善策を実行する

  • 図解付き操作マニュアルや30秒動画を顧客に提供
  • 営業が初回ログイン・発注に同行し、顧客体験をサポート
  • Web注文限定の割引やポイント付与キャンペーンを実施
  • お気に入り登録や履歴注文機能を積極的に案内
  • FAX注文書に「Web注文はこちら」とQRコードを掲載

【Check】効果を測定する

  • 施策実施前後のKPIを比較(ログイン率、Web注文率など)
  • 顧客・営業双方からのフィードバック収集
  • 継続利用意向や満足度のアンケート実施

【Action】仕組みの見直し・再設計

  • UI/UX改善(検索精度、カート機能、レスポンス速度など)
  • 利用定着をミッションとする専任チームを設置
  • 利用頻度に応じた顧客ランク付けと画面最適化

よくある「改善しきれない」原因とは?

  • 責任の所在が不明確(情シス、営業、CSのどこが主導するのか曖昧)
  • KPIが存在しない(「導入した」だけでゴール設定がない)
  • 運用をベンダー任せにしてしまっている

改善を成功させるには、社内で明確な責任体制を作り、改善活動を日常業務に組み込む必要があります。

利用率改善の成功事例

例えばある製造業A社では、導入後半年で利用率が20%未満に停滞していました。
そこで、営業同行による初回発注支援、Web限定割引、未利用顧客への架電フォローを実施。
結果、Web注文率が半年で45%まで向上し、FAX注文は半減しました。

別の事例では、卸売業B社がダッシュボードで未利用顧客を毎週抽出し、営業がフォロー。
加えて「再注文3クリック完了」機能を追加したことで、再注文率が70%を超える成果を出しました。

利用率改善のために今すぐできる5ステップ

  1. 未ログイン・未注文顧客リストを抽出する
  2. 営業・CSと情報を共有し、優先対応リストを決める
  3. 定着KPI(再注文率、Web注文率など)を設定
  4. 月1回の改善報告ミーティングを設置
  5. 社内インセンティブ制度を導入(例:利用率向上で表彰)

まとめ:BtoB-ECは“導入してからが本番”

  • 利用状況の可視化とKPI設定が出発点
  • 顧客課題に沿った改善施策を継続実行
  • 社内でPDCAを日常的に回す文化を醸成

このサイクルを回し続けることで、BtoB-ECは単なる受注システムから、事業成長を支える基盤へと進化します。

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投稿者プロフィール

OSAMU HORIKAWACEO
関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。

システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。

その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)

2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。

クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution


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