この記事でわかること
「印刷物の注文を、Webで受けたい」「用紙や部数の組み合わせが多くて、普通のECでは対応できない」——印刷業のBtoB-ECを検討すると、こうした課題に直面します。印刷物の受注は、できあがった商品を選ぶだけでなく、複数の仕様を組み合わせて注文内容を決めることがあり、一般的なEC-CUBEの商品販売とは、設計の考え方が変わる部分があります。この記事では、印刷業務で特に整理したい受注構造——仕様選択、見積仕様の再利用、入稿データ管理——を中心に解説します。
この記事を読むと分かること
- 印刷物の受注が、一般的なECと違う点
- 仕様の組み合わせ(仕様間の依存)をどう設計するか
- 見積仕様の再利用と、入稿データ管理の考え方
BtoB-ECのプラットフォーム選び全体については、なぜBtoB-ECにEC-CUBEが向いているのかもあわせてご覧ください。
印刷物の受注は、完成品を選ぶだけではない
一般的なECは、できあがった商品を選んで購入する流れです。一方、印刷物の受注では、完成品を選ぶだけでなく、複数の仕様を組み合わせて、注文内容を決めるケースがあります。
- 用紙(種類・厚さ)
- サイズ
- 部数
- 片面/両面
- 折り・製本などの加工
これらの組み合わせで、注文内容と価格が決まります。そのため、印刷業界のBtoB-ECでは、「どの商品を売るか」だけでなく、「どの仕様を、どう組み合わせて注文してもらうか」を設計することが、出発点になります。
仕様の組み合わせ(仕様間の依存)をどう設計するか
印刷物の仕様選択で難しいのは、仕様どうしが関係し合うことです。ある仕様を選ぶと、次に選べる仕様が変わる、という依存関係があります。
- 用紙のサイズを選ぶと、選べる紙の種類が変わる
- 特定の厚さの用紙では、折り加工が選べない
- 部数によって、選択できる加工が変わる
こうした仕様間の依存を整理せずに選択肢を並べると、実際には作れない組み合わせが注文されてしまうことがあります。そのため、「Aを選んだら、Bのうちこれだけを表示する」といった、選択肢の動的な制御を設計することが必要になります。
この「仕様の組み合わせをどう確定するか」は、取引先ごとの価格をどう表示するかとは、別の論点です。価格そのものの設計(誰に、どの条件で、どの価格を適用するか)については、複雑な価格の設計で解説しています。印刷の場合は、まず仕様の組み合わせを確定し、その組み合わせに応じて価格が決まる、という流れを設計することになります。
見積した仕様を、再注文できるようにする
印刷物では、仕様が複雑なため、個別に見積もりを取ってから注文する、という流れになることがあります。このとき、一度見積もった仕様を、次回以降も同じ条件で注文できるようにするかどうかも、設計の論点になります。
設計例として、見積もった内容を、その取引先専用の商品や、注文テンプレートとして管理する方法があります。こうすることで、次回は同じ仕様を、一から指定し直さずに注文できます。
これは、過去の注文を繰り返す再注文(FAX受注のEC化で扱う再注文)とは、少し性質が異なります。印刷の場合は、見積もりで確定した「仕様そのもの」を再利用する、という点が特徴です。
入稿データの管理
印刷業界のBtoB-ECで、重要な設計論点の一つが、入稿データの管理です。印刷では、注文とあわせて、印刷用のデータ(入稿データ)を受け取る必要があります。ここには、いくつかの設計論点があります。
- 大容量のデータをアップロードできるようにする
- 注文と、入稿データを、どう紐づけるか
- データを差し替えたとき、どのファイルを最新版とするか
- 入稿データの状態(入稿前・確認中・再入稿待ち・確定など)を、どう管理するか
特に、データの状態管理は重要です。「入稿を待っているのか」「確認中なのか」「再入稿を待っているのか」が分からないと、受注の進行が把握しにくくなります。注文の状態と、入稿データの状態を、どのように紐づけて管理するかを、設計しておくことになります。
その他の論点(法人アカウント・掛売・基幹連携)
印刷業界のBtoB-ECでも、法人アカウントや、掛売、基幹・生産管理システムとの連携が必要になることがあります。これらは、印刷業界に固有というより、BtoB-EC全般に共通する論点です。それぞれ、次の記事で解説しています。
- 法人アカウント・権限の設計 → 承認フローの設計
- 掛売・請求書払い → 掛売・与信管理の設計
- 基幹・生産管理システム連携 → 基幹・在庫システムを連携する方法
印刷業界のBtoB-ECを設計するときは、印刷業務で特に整理したい仕様選択・見積・入稿データの部分と、これらの共通論点を、あわせて整理することになります。
印刷業界のBtoB-EC設計を、ご相談ください。
「仕様の組み合わせが多くて、普通のECでは難しい」「見積した仕様を再注文できるようにしたい」「入稿データの管理も含めて設計したい」といったご相談に対応しています。現在の受注業務を伺ったうえで、EC上でどう設計できるかをご提案します。
よくある質問
印刷物の複雑な仕様は、EC-CUBEで対応できますか?
対応を検討できます。用紙・サイズ・部数・加工などの仕様の組み合わせや、仕様どうしの依存関係(ある仕様を選ぶと選べる仕様が変わる、など)を、選択肢の制御として設計します。これは標準機能そのままではなく、プラグインや個別開発を検討する範囲です。まず、自社の仕様の組み合わせと、その依存関係を整理することが出発点になります。
仕様の組み合わせの設計と、価格の設計は、同じものですか?
別の論点です。仕様の組み合わせの設計は、「どの仕様を、どう組み合わせて注文内容を確定するか」という設計です。価格の設計は、「誰に、どの条件で、どの価格を適用するか」という設計です。印刷の場合は、まず仕様の組み合わせを確定し、その組み合わせに応じて価格が決まる、という流れになります。価格の設計については、複雑な価格の設計の記事で解説しています。
一度見積もった仕様を、次回も使えるようにできますか?
設計できます。見積もった内容を、その取引先専用の商品や、注文テンプレートとして管理する方法があります。こうすることで、次回は同じ仕様を、一から指定し直さずに注文できます。印刷では仕様が複雑なため、一度確定した仕様を、次回注文時に再利用するかどうかも設計項目になります。
入稿データの管理も、ECに含められますか?
含める設計ができます。大容量データのアップロード、注文と入稿データの紐付け、差し替え時の最新版の管理、入稿データの状態(入稿前・確認中・再入稿待ち・確定など)の管理といった設計を検討します。注文の状態と、入稿データの状態を、どのように紐づけて管理するかも設計項目になります。これらは個別開発を検討する範囲です。
まとめ
印刷業界のBtoB-ECは、完成品を選ぶ一般的なECとは異なり、仕様の組み合わせ、見積仕様の再利用、入稿データ管理といった、印刷業務で整理したい受注構造があります。仕様間の依存を整理して選択肢を制御すること、見積で確定した仕様を再注文できるようにすること、入稿データを注文とあわせて状態管理すること——これらが、印刷業界の受注設計で中心になる部分です。あわせて、法人アカウント・掛売・基幹連携といった、BtoB共通の論点も整理することになります。
私たちサンクユーは、仕様の複雑なBtoB-ECや、受注システムの設計に対応しています。「複雑な仕様の受注を、Webでどう扱えばいいか」といった段階から、ご相談いただけます。まずは、現在の受注業務をお聞かせください。
投稿者プロフィール

- CEO
- 株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。
関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。
この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。
その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。
2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。
単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。
NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
■趣味・関心領域
BMW / WRC / ロードバイク / RIZIN / UFC / 大相撲
David Bowie / blur / MUSE / The Rolling Stones / XTC
機動戦士ガンダム(富野由悠季)
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LOST / Game of Thrones / FRINGE / The Mentalist
上岡龍太郎 / ダウンタウン








