この記事でわかること
「一定金額以上は上長の承認を必須にしたい」「発注担当者と承認者を分けたい」「担当→部長→経理と多段階で承認したい」——BtoB-ECでは、こうした承認フローが必要になることがあります。この記事では、承認フローをEC-CUBEでどう設計するかを、承認のパターンの整理から、ロール・履歴・通知の設計まで解説します。ポイントは、ステータスを追加すれば完成するものではなく、業務のどこで承認を挟むかを設計することです。
この記事を読むと分かること
- 承認フローのパターン(金額基準・部署単位・多段階)
- 「申請・承認・正式発注」をどこで分けるかという設計の考え方
- ロール・承認履歴・通知の設計で整理しておきたいこと
BtoB-ECのプラットフォーム選び全体については、なぜBtoB-ECにEC-CUBEが向いているのかもあわせてご覧ください。
まず整理:承認フローには複数のパターンがある
「承認フロー」といっても、内容は一つではありません。次のようなパターンがあり、自社がどれに該当するかを整理することが第一歩です。
| パターン | 内容 |
|---|---|
| 金額基準承認 | 一定金額以上の注文に、承認を求める |
| 部署単位承認 | 発注担当・承認者・管理者など、役割で分ける |
| 多段階承認 | 担当者→部長→経理のように、複数段階で承認する |
複数のパターンが組み合わさることもあります。まず、自社の発注・承認プロセスがどうなっているかを整理することが、設計の出発点になります。
承認フロー設計の出発点:「申請・承認・正式発注」をどこで分けるか
承認フローの設計で、最初に決めておきたいのが、「申請」「承認」「正式な発注」を、業務のどのタイミングで分けるかです。ここが、承認フロー設計の核になる部分です。
たとえば、承認の対象が「発注前の申請」なら、承認待ちの段階では、まだEC-CUBE上の正式な受注として扱わない設計も考えられます。逆に、注文を生成したうえで、承認状態を持たせる設計も考えられます。どちらが適しているかは、業務の流れによって変わります。
金額基準の承認一つをとっても、承認対象をどの時点で生成するかによって、設計は変わります。受注ステータスを拡張して管理する方法のほか、申請・承認の状態を別途管理する設計も考えられます。「承認ステータスをいくつか追加すれば完成」ではなく、業務のどこで承認を挟むかを先に決めることが大切です。
ロール(権限)の設計
承認フローでは、誰が申請し、誰が承認するかという、役割(ロール)の設計が必要になります。
- 一般ユーザー(申請者)
- 承認者
- 最終承認者
- 法人管理者
ロールを明確に定義しておかないと、「誰が承認者なのか」が曖昧になり、運用で混乱が生じることがあります。特に、法人顧客が複数のユーザーを持つ場合(発注担当・承認者・管理者など)は、法人ID・部署ID・ロールといった単位で、ユーザー管理を階層化する設計が必要になることがあります。
この場合、法人・部署・ロールをEC側で管理するなら、標準の会員情報だけでは要件を満たさず、データ構造の追加・拡張を検討することになります。一方で、外部の組織マスタ(人事システムなど)を正本にして連携するケースも考えられます。どこで組織・権限を管理するかを、あわせて整理することが大切です。データ構造の考え方は、DB構造・Entity設計の解説もご覧ください。
多段階承認の設計
担当者→部長→経理のような多段階承認では、単純な状態の切り替えだけでは足りないことがあります。次のような要素を、構造として設計することになります。
- 承認の順序の管理
- 承認履歴の管理
- 差し戻しの処理
- 再申請の処理
単純なフラグ(項目)を一つ追加するだけの設計では、後から段階を増やす際に、対応しにくくなることがあります。将来、承認の段階が変わる可能性も想定して設計しておくことが役立ちます。
承認履歴の設計
BtoBでは、「誰が・いつ・どの注文を・承認/却下したか」という履歴が求められることがあります。こうした履歴を、注文データとは別のテーブルで保持する設計にすることで、後から承認の経緯を確認しやすくなります。監査や、社内での確認が必要な場合に、役立つ構造です。
通知の設計
承認フローでは、通知の設計も大切です。承認待ちが放置されると、発注が進まないことがあるため、次のような通知を検討します。
- 承認者へのメール通知
- 管理画面での通知
- 未承認のリマインド
誰に、どのタイミングで通知するかを設計しておくことで、承認の停滞を防ぎやすくなります。
EC-CUBEでの実装の考え方
承認フローは、EC-CUBEの標準機能に含まれているものではありません。実装する場合は、次の切り分けで考えます。
- 標準機能で対応できる範囲(受注ステータスの活用など)
- プラグインを検討する範囲
- 個別開発を検討する範囲(多段階承認・組織階層・履歴管理など)
単純な承認であれば、既存の仕組みを活かせることもありますが、多段階承認や組織階層が関わる場合は、個別の設計・開発を検討することになります。EC-CUBEはオープンソースのため、承認のロジックを業務に合わせて設計できる自由度があります。
SaaSとの違い
SaaS型のECにも、承認機能が用意されていることがあります。標準的な承認フローであれば、SaaS型で対応できることもあります。一方、多段階承認や、業界特有の承認条件、基幹連携を前提とした設計になると、SaaS型では制約が出ることがあります。承認フローの要件によって、適した選択肢が変わります。
承認フロー設計で注意したいこと
- 価格設計と切り離して考える:承認の条件と価格の条件が関わる場合、両方を整理しておかないと、運用で食い違いが生じることがあります。価格設計は複雑価格の設計の記事もご覧ください。
- ロールの定義を曖昧にしない:誰が承認者なのかが不明確だと、運用で混乱が生じることがあります。
- 将来の変更を想定する:1段階の承認から2段階へ、といった変更に対応できる構造にしておくことが役立ちます。
BtoBの承認フロー設計を、ご相談ください。
「この承認フローはECで実現できるか整理したい」「どこまで自動化できるか知りたい」といった段階からご相談いただけます。現在の発注・承認プロセスを伺ったうえで、EC上でどう設計できるかをご提案します。
よくある質問
EC-CUBEの標準機能で、承認フローは作れますか?
承認フローは、EC-CUBEの標準機能に含まれているものではありません。金額基準の単純な承認であれば、受注ステータスなどを活用して対応できる場合もありますが、多段階承認や、部署・組織階層が関わる承認は、プラグインや個別開発を検討することになります。まず、自社の承認プロセスを整理したうえで、どの範囲を標準・プラグイン・個別開発で対応するかを検討します。
承認フローは、受注ステータスを追加すれば実装できますか?
受注ステータスの拡張は方法の一つですが、それだけで決まるものではありません。まず、「申請」「承認」「正式な発注」を業務のどのタイミングで分けるかを決めることが大切です。承認対象をどの時点で生成するか(発注前の申請段階か、注文生成後か)によって、受注ステータスを拡張する方法が合うのか、申請・承認の状態を別途管理する設計が合うのかが変わります。
多段階承認は実装できますか?
実装できます。ただし、単純なフラグの追加ではなく、承認の順序、承認履歴、差し戻し、再申請といった要素を、構造として設計することになります。将来、承認の段階が変わる可能性も想定して設計しておくと、後の変更に対応しやすくなります。多段階承認では、要件に応じてプラグインや個別開発を検討します。
承認の履歴は残せますか?
残せます。「誰が・いつ・どの注文を・承認/却下したか」という履歴を、注文データとは別のテーブルで保持する設計にすることで、後から承認の経緯を確認できます。監査や社内での確認が必要な場合に役立ちます。どこまでの履歴を、どのくらいの期間保持するかは、要件にあわせて設計します。
まとめ
EC-CUBEでBtoBの承認フローを設計するには、ロールの設計、承認状態の設計、履歴の管理、通知の設計を、構造として整理することが大切です。そして、その前提として、「申請」「承認」「正式な発注」を業務のどのタイミングで分けるかを決めることが、出発点になります。「承認ステータスを追加すれば完成」ではなく、業務のどこで承認を挟むかを設計することが、承認フローの実装範囲やデータ構造を整理するうえで重要です。
私たちサンクユーは、BtoB-ECの承認フロー設計や、法人向けのユーザー・権限管理、基幹システムとの連携に対応しています。「この承認フローはECで実現できるか整理したい」といった段階から、ご相談いただけます。まずは、現在の発注・承認プロセスをお聞かせください。
投稿者プロフィール

- CEO
- 株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。
関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。
この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。
その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。
2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。
単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。
NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
■趣味・関心領域
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上岡龍太郎 / ダウンタウン









