はじめに:BtoB-ECが“使われない”という悩み
「せっかくBtoB-ECを導入したのに、顧客が使ってくれない」
「FAXや電話の注文が減らない」
「結局、営業や事務が受注を手で処理している」
このような悩みを抱える企業は少なくありません。BtoB-ECは、導入しただけでは成果を生みません。顧客が使い慣れ、継続的に利用して初めて効果を発揮する仕組みです。
本記事では、BtoB-ECの定着を促すための「利用促進施策」を7つの視点で紹介します。
なぜ顧客はWeb注文に切り替えないのか?
- ログインが面倒・パスワードを忘れる
- UIが分かりづらく、どこを操作すればいいか迷う
- いつものFAXのほうがラク・安心
- そもそもWeb注文が可能になったことを知らない
- 使うメリットが感じられない
これらはシステムの問題だけでなく、顧客とのコミュニケーション不足や支援体制の未整備によって生まれます。特に長年FAX注文に慣れた顧客ほど「変える必要性」を感じにくく、行動を変えるきっかけを与えなければなりません。
導入後によくある課題
BtoB-ECを導入しても、最初の数か月で利用が停滞するケースは多いです。主な原因は以下の通りです。
- 初回案内後にフォローがなく、顧客が使い方を忘れてしまう
- 操作方法が複雑で、1回目の利用で離脱してしまう
- 営業が旧来の注文方法を受け入れてしまい、切り替えが進まない
これらを解消するには、導入後6か月間を「利用定着期間」と位置づけ、段階的に施策を実行することが効果的です。
Web注文の利用を促進する7つの方法
① 営業が「一緒に操作」してあげる
- 初回注文時にログインから注文完了までを同席サポート
- 「このボタンで簡単に再注文できます」と具体的に伝える
- スマホやタブレットを持参して、その場で試してもらう
実際に隣で操作すれば、顧客の心理的ハードルは大きく下がります。ある食品卸企業では、営業が訪問時に顧客の注文をWeb上で代行入力し、その様子を見せることで3か月以内に利用率が80%まで向上しました。
② 専用マニュアル・操作動画を用意する
- 顧客ごとに画面をカスタマイズしたPDFマニュアル
- 1分程度の操作動画(スマホで視聴可能)
- よくある質問(FAQ)をQ&A形式で公開
特に動画は効果的で、静止画のマニュアルよりも理解度が高まります。新機能追加時にも動画で告知すると、顧客が自ら試してみる確率が高くなります。
③ お気に入り・履歴・再注文機能を活用する
- 前回の注文履歴からワンクリック再注文
- よく使う商品を「お気に入り登録」
- 顧客ごとのおすすめ商品表示で時短を実現
操作ステップを短縮することが、継続利用の最大の鍵です。ある建材商社では、再注文機能の利用率が高い顧客ほど、年間注文回数が20%以上増加しています。
④ 初回利用キャンペーン/インセンティブを実施する
- 初回Web注文で送料無料・割引・粗品進呈
- 「●月●日までに切り替えた方に●●プレゼント」
- Web注文に切り替えた企業を営業から表彰・紹介
経済的なメリットだけでなく、社内外での特別感を演出することで移行スピードが加速します。
⑤ マイページ・個別価格など自分専用感を出す
- ログイン後に表示される商品・価格を顧客別にカスタマイズ
- 担当営業からのメッセージや提案商品を表示
- 発注履歴や納期情報も一覧で確認可能
「このページは自分のためのもの」という感覚が、継続利用を生みます。顧客ごとの定番品をトップに並べ、ボタンの数を減らすだけでも体験が向上します。
⑥ 旧来の注文方法は段階的に縮小する
- 「FAX受付は●月まで」「以降はWeb注文のみ」の事前告知
- Webに切り替える理由(ミス防止・納期短縮など)を明確に伝える
- 移行までの猶予期間を設け、しっかりフォローする
ある部品メーカーでは、FAX受付終了の3か月前から毎回注文書に切替案内を同封し、移行率を90%まで引き上げました。移行期は電話サポート窓口を明示し、不安を最小化します。
⑦ 営業とCSが顧客定着チームとして動く
- 顧客単位の利用状況を可視化(未使用アラート、休眠検知)
- 営業/カスタマーサクセス/サポートが連携して支援
- 利用促進のKPI(利用率、再注文率、Web経由売上)を設定
利用データを共有し、未使用顧客へ早期アプローチできる体制を整えることが重要です。月次の振り返り会議で改善点と次のアクションを決め、施策を継続します。
導入企業の成功事例
- 食品卸A社:営業同行と動画マニュアル活用で3か月後に利用率85%。問い合わせ件数は半減し、受注処理時間が大幅削減。
- 部品メーカーB社:FAX縮小施策を段階導入。半年以内に注文の9割をWeb化し、転記ミスが激減。夜間受注が増え売上平準化にも寄与。
- アパレル卸C社:マイページで新商品提案を常時掲載。閲覧履歴を基にした提案でWeb経由売上が前年比140%に成長。
Web注文は使われてこそ意味がある
BtoB-ECはただ導入するだけでは効果を発揮しません。顧客が継続的に使い続けること、つまり利用定着こそ最大の価値です。「FAXよりラクだ」「もう電話しなくて済む」と感じてもらえた瞬間、BtoB-ECは本当に機能し始めます。
まとめ:利用促進の鍵は行動支援と体験改善
- まずは一緒に使ってもらう
- 分かりやすい資料と再注文のしやすさ
- インセンティブや期限付きの移行促進
- 社内で支援チームを構築する
施策は一度きりではなく、利用状況を見ながら改善を続けることが大切です。顧客がWeb注文を当たり前と感じるまで伴走し、業務効率化と売上拡大の両立を実現しましょう。
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投稿者プロフィール
- CEO
- 関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。
システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。
その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)
2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。
クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
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