ShopifyとEC-CUBE、徹底比較。BtoB-ECの「壁」に直面する企業が選ぶべきプラットフォームは?

ShopifyとEC-CUBE、徹底比較。BtoB-ECの「壁」に直面する企業が選ぶべきプラットフォームは?B2B-EC
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はじめに:Shopifyの「手軽さ」と、その先にある「BtoBの壁」

EC市場の急速な拡大に伴い、カナダ発のSaaS型プラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」を活用し、スピーディにECサイトを立ち上げる企業が世界的に増えています。
デザイン性の高いテンプレートと豊富なアプリ(拡張機能)により、D2C(Direct to Consumer)ブランドを中心に、日本国内でも圧倒的な勢いを見せています。

しかし、その一方で、運営が軌道に乗り、事業を拡大しようとするフェーズ(特にBtoB-EC)において、Shopifyの「手軽さ」が「制約」に変わる瞬間があります。

「企業ごとに販売価格を変えたい」
「日本式の複雑な掛け払い(請求書払い)に対応したい」
「基幹システムと連携して、独自の在庫管理や会員ランク機能を作りたい」

こうした課題に直面し、国産オープンソースである「EC-CUBE」への移行や、最初からのEC-CUBE選択を検討する企業も少なくありません。

本記事では、「海外SaaS型のShopify」と「国産オープンソースのEC-CUBE」という、EC構築の二大巨頭について、それぞれの特徴・メリット・デメリットを徹底的に整理します。
特に、多くの企業が悩む「BtoB-EC」の観点にフォーカスし、貴社のビジネスモデルと事業フェーズに合わせた最適解を見つけるための判断材料を提供します。

第1章:Shopify(ショッピファイ)の特徴とメリット・デメリット

まずは、世界No.1シェアを誇るSaaS型ECプラットフォーム、Shopifyについて解説します。

Shopifyとは?

Shopifyは、カナダ発のSaaS型(クラウド型)ECプラットフォームです。
SaaSとは「Software as a Service」の略で、自社でサーバーを構築・管理する必要がなく、月額料金を支払うことで常に最新のシステムを利用できるサービスを指します。

世界175か国以上で利用されており、その手軽さとグローバル対応力から、特に「スモールスタート」や「越境EC」を目指す企業に選ばれています。

メリット

  1. サーバー運用・保守が一切不要
    SaaS型であるため、サーバーの準備、セキュリティパッチの適用、バージョンアップといったインフラ管理をすべてShopify側が行います。
    これにより、企業は「売ること」にリソースを集中できます。
    アクセス集中によるサーバーダウンのリスクも極めて低く、安定稼働が保証されています。
  2. 導入スピードと簡単な操作性
    専門知識がなくても、直感的な操作でECサイトを構築できます。
    豊富なデザインテンプレート(テーマ)を選ぶだけで、数日〜数週間という短期間でのストアオープンが可能です。
  3. 「アプリ」による豊富な機能拡張
    Shopify App Storeには、マーケティングオートメーション、CRM(顧客管理)、SNS連携、サブスクリプションなど、数千種類ものアプリが用意されています。
    これらを組み合わせることで、自社に必要な機能を簡単に追加できます。
  4. グローバル対応(越境EC)の強み
    多通貨・多言語対応が標準装備されており、海外向けの越境ECサイトを構築する上では、Shopifyは非常に強力な選択肢となります。

デメリット

  1. ランニングコストの積み上がり
    月額利用料に加え、売上に応じた「取引手数料」が発生します(Shopifyペイメント利用時は免除)。
    さらに、高機能なアプリの多くは別途月額課金が必要となるため、機能を追加すればするほど、ランニングコストが雪だるま式に増加する傾向があります。
  2. BtoB-EC特有の要件に弱い
    Shopifyの基本設計はD2C(一般消費者向け)に最適化されています。
    そのため、日本特有のBtoB(企業間取引)要件には標準で対応できません。

    • 顧客別の掛け率(卸価格)設定
    • 企業単位での与信管理と掛け払い
    • 正式な見積書の発行機能

    これらに対応するには高機能なBtoB専用アプリ(例: Shopify Plusへのアップグレードや高額なサードパーティアプリ)が必要となり、コストが跳ね上がります。

  3. カスタマイズの「壁」とデータ管理の制約
    SaaS型であるため、ソースコードに直接手を入れることはできません。
    機能拡張はあくまで「アプリ依存」となり、「アプリで実現できない独自機能」は実装不可能です。
    また、顧客データや購買データはShopifyのプラットフォーム上に保存されるため、自社での完全なデータ管理や、基幹システムとの複雑なAPI連携には限界があります。

第2章:EC-CUBE(イーシーキューブ)の特徴とメリット・デメリット

次に、日本国内で圧倒的なシェアを持つ、EC-CUBEについて解説します。

EC-CUBEとは?

EC-CUBEは、日本の株式会社イーシーキューブが開発・提供する「オープンソース」のEC構築パッケージです。
オープンソースとは、ソースコード(プログラムの設計図)が一般に公開されており、誰でも自由に改変・利用できる仕組みを指します。

国内シェアNo.1を誇り、日本の商習慣に精通した機能と、その圧倒的なカスタマイズ性から、数万社以上のEC事業者に利用されています。

メリット

  1. 圧倒的なカスタマイズの自由度
    オープンソースであるため、ソースコードを自由に編集できます。
    これにより、デザインの完全なオリジナル化はもちろん、下記のような複雑な要件にも制約なく対応できます。

    • 基幹システム(販売管理・在庫管理)との完全なAPI連携
    • 業界特有の販売方法(例:BtoBのロット単位販売、予約販売)
    • 独自の会員ランク制度やポイントシステムの構築

    ECサイトを「自社の資産」として、自由に育てていくことが可能です。

  2. BtoB-EC(企業間取引)への柔軟な対応
    EC-CUBEは、BtoB特有の仕組みを実装する上で非常に強力です。

    • 顧客グループ別の価格設定・表示/非表示の制御
    • 掛け払い(請求書払い)システムの導入
    • 各種帳票(見積書・請求書・納品書)の自動発行とCSV出力

    これらの機能を、企業の既存のワークフローに合わせてゼロから構築・最適化できます。

  3. 月額課金・販売手数料が不要
    Shopifyのような月額利用料や、売上に応じた取引手数料は一切かかりません。
    初期構築費と、自社で用意するサーバーの保守費用のみで運用できるため、中長期的に見るとランニングコストを抑えられるケースが多くなります。

デメリット

  1. サーバーの準備とセキュリティ対応が必須
    オープンソースであるため、サイトを稼働させるためのサーバーは自社で契約・構築する必要があります。
    また、システムの脆弱性を狙った攻撃を防ぐため、セキュリティパッチの適用や定期的なメンテナンスを自社(または開発パートナー)で行う責任が発生します。
  2. 構築には専門知識と開発パートナーが必須
    Shopifyのように、知識ゼロで即日オープンすることはできません。
    HTML/CSS、PHPといった専門知識が不可欠であり、BtoB要件やシステム連携を行う場合は、EC-CUBEの開発経験が豊富な制作会社の支援が必須となります。
  3. 構築に時間と初期コストがかかる
    「すぐ使える機能」はShopifyに比べて少ないため、要件定義からデザイン、開発、テストというプロセスを経る必要があり、サイトオープンまでに数ヶ月単位の時間がかかります。
    それに伴い、初期構築費用もSaaS型に比べて高額になる傾向があります。

第3章:ShopifyとEC-CUBEの比較まとめ

両者の特徴を、ECサイト構築で重要となる項目で比較します。

項目ShopifyEC-CUBE
提供形態SaaS型(クラウド)オープンソース
コスト構造月額課金+アプリ課金+取引手数料初期構築費+サーバー保守費
カスタマイズ制限あり(アプリ依存)制約なし(完全自由)
BtoB機能弱い(高額アプリで一部対応)強い(カスタマイズで柔軟に対応)
越境EC非常に強い(標準対応)カスタマイズで対応可能
サーバー管理不要(Shopify側が管理)必要(自社で管理)
データ管理外部(Shopify)依存自社で完全管理
導入スピード速い(最短数日)時間がかかる(数ヶ月〜)

第4章:結局、どちらを選ぶべきか?判断基準と移行のタイミング

ShopifyとEC-CUBEに優劣はなく、「ビジネスの目的とフェーズ」によって最適解が異なります。

Shopifyがおすすめな企業

  • D2Cブランドで、とにかく早くスモールスタートしたい。
  • 販売する商品がシンプルで、複雑な要件がない。
  • 社内に開発リソースがなく、インフラ管理を任せたい。
  • 越境ECをメインに考えている。

EC-CUBEがおすすめな企業

  • BtoB-ECを本格的に展開したい(顧客別価格、掛け払いなど)。
  • 基幹システムや外部DBとの連携が必須である。
  • 他社と差別化できる独自の機能やUI/UXを実装したい。
  • ECサイトを「ランニングコスト」ではなく「自社資産」として構築・管理したい。
  • 中長期的にEC事業をスケールさせていく計画がある。

「Shopifyからの移行」を検討すべきタイミング

もし現在Shopifyを運用していて、以下の課題に直面しているなら、それはEC-CUBEへの移行を検討すべきサインかもしれません。

  1. BtoB対応でアプリ代が高騰し、コストパフォーマンスが悪化している。
  2. 複数のアプリを導入した結果、データの分断や管理の複雑化が起きている。
  3. 「この機能さえあれば売上が上がるのに」という独自機能が、Shopifyの制約で実現できない。

ShopifyからEC-CUBEへの移行は、顧客データや商品データ、受注履歴の移行など、専門的な知見が必要です。しかし、その「壁」を乗り越えることで、事業拡大の足かせとなっていた制約から解放され、ビジネスの可能性を大きく広げることができます。

まとめ

Shopifyは「スピードと手軽さ」に優れたD2C向けのSaaS、EC-CUBEは「カスタマイズ性とBtoBへの強さ」に優れた国産オープンソースです。

ECサイトは「作って終わり」ではなく、事業の成長と共に「育てていく」ものです。
目先の導入スピードだけでなく、3年後、5年後の事業拡大フェーズを見据え、どちらが自社のビジネスモデルに寄り添ってくれるプラットフォームか、という視点でご検討ください。

投稿者プロフィール

OSAMU HORIKAWACEO
関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。

システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。

その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)

2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。

クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution


■趣味・好きなもの
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