FAX注文をWeb化する方法と社内説得の完全ガイド

FAX注文のWeb化を社内提案する方法B2B-EC
この記事は約7分で読めます。

はじめに:なぜFAX注文が今も残っているのか

FAXは1980年代から普及し、長らく企業間取引の受発注業務を支えてきた。
しかし、2025年の今でも、特定の業界ではFAX注文が主流として残っている。
理由としては、取引先のITリテラシーの差、紙の伝票文化、社内システムの非対応、そして変える必要性を感じにくいという心理的抵抗がある。
一方で、FAX注文には明らかな課題がある。
手書き文字の誤読、転記ミス、入力工数、書類保管スペースの確保など、アナログゆえの非効率さが積み重なる。
さらに、FAX機や専用回線の維持費、トナーや紙などの消耗品コストも継続的に発生する。
本ガイドでは、FAX注文をWeb化するための実践的な方法と、社内説得に必要な切り口を詳しく解説する。
単にFAXを廃止するのではなく、業務全体を改善するDX施策として捉えることが重要である。

FAX注文の現状と課題

多くの企業がFAX注文を継続している理由は慣れと取引先への配慮である。
しかし現実には、FAX注文は以下のようなデメリットを抱えている。

  1. 転記・入力ミスの発生。手書き文字の判読ミスや桁間違いにより、出荷ミスや返品が発生する。誤発注が続くと顧客満足度の低下や取引停止につながる恐れがある。
  2. 処理時間の長さ。FAXを受信してから注文データとして登録するまでに、印刷、照合、転記、承認といった複数工程が必要になる。
  3. コストの増加。FAX機器、電話回線、トナー、用紙、保管棚など、アナログ業務には隠れたコストが多数存在する。
  4. データ活用の難しさ。FAXは紙ベースのため、データ化しない限り分析やレポート作成が難しく、意思決定のスピードが上がらない。

FAX注文をWeb化する四つのメリット

一.入力ミスの削減

顧客が直接Webフォームに入力するため、転記作業が不要になる。
商品コードや数量の入力ミスも、リアルタイムのバリデーションで防止できる。
選択式のプルダウンや数量ステップ、必須チェックにより、ヒューマンエラーを構造的に減らせる。

二.作業時間の短縮

注文データが即座にシステムへ反映されるため、事務作業時間を大幅に削減できる。
削減した時間を営業活動や顧客対応、品質管理に再配分することで、全体の付加価値が高まる。

三.顧客対応スピードの向上

在庫状況や納期目安をリアルタイムで提示できるため、問い合わせ対応が迅速になる。
受注履歴の可視化により、担当者が不在でもスムーズに対応できる。

四.DX推進の基盤構築

Web化は、将来的な基幹システムとのAPI連携やRPAによる自動化の第一歩となる。
データが電子化されれば、売上分析や需要予測、粗利管理などの高度な経営判断が可能になる。

Web化に必要な機能とシステムタイプ比較

必須となる主な機能

  • 顧客別価格設定。取引先ごとに単価や掛率、数量別価格を柔軟に設定できる。
  • 見積書自動発行。商品と数量入力からPDF見積書を即時生成し、履歴管理と再発行に対応する。
  • 注文履歴からの再注文。定番品のリピートをワンクリックで発注でき、現場の負担を減らす。
  • CSV出力・基幹システム連携。販売管理、在庫、会計とデータを同期し、二重入力を排除する。
  • 商品表示制御。顧客別や地域別、代理店別に商品の閲覧と価格を出し分けできる。
  • 請求・納品書の自動発行。月締めや都度請求に対応し、経理作業を効率化する。

システムタイプの比較

BtoB-EC構築型(EC-CUBE等)

自社専用にカスタマイズできるため、業務要件が複雑でも対応しやすい。
長期利用を前提とした投資に向いており、顧客別価格や承認フローを深く作り込める。

SaaS型Web受注サービス

短期間かつ低コストで導入でき、スモールスタートに適する。
機能拡張に制限がある場合は、運用で補う設計を検討する。

OCR+既存システム連携

FAXを完全になくせない環境で、OCRにより自動読み取りしてデータ化するハイブリッド方式が選べる。
正確性の担保と例外処理の設計が成功の鍵になる。

社内で反対される理由と切り返し方

「FAXの方が楽だ」への対応

楽なのは入力しない側だけであり、受注部門や管理部門には転記、照合、保管といった負担が残る。
全体最適の視点で工数とミスの実態を可視化し、部署横断で共有する。

「取引先が対応できない」への対応

全取引先の一斉切り替えではなく、ITリテラシーの高い顧客から段階的に移行する。
並行運用期間を設け、マニュアルや操作動画を用意すれば、心理的ハードルを下げられる。

「導入コストが高い」への対応

削減できる人件費、残業代、誤出荷や返品の損失を試算し、投資回収期間を提示する。
IT導入補助金などの活用により、初期費用負担を軽減できる。

導入までの具体的ステップ

一.現状把握と課題抽出

FAX注文件数、処理時間、ミス件数を測定し、工程ごとに見える化する。
併せて、ピーク時の遅延や属人化の箇所を洗い出す。

二.効果試算と優先順位決定

Web化で削減できる時間とコストを算出し、最も効果が高い工程から改修する。
必須機能と将来拡張機能を分け、段階導入のロードマップを作成する。

三.システム選定と要件定義

顧客別価格、見積承認、CSV連携などの要件を具体化し、実装可否と期間を確認する。
セキュリティ、監査ログ、権限ロールも合わせて定義する。

四.スモールスタートと検証

一部の顧客や部署で試験導入し、UIやルールの改善点を素早く反映させる。
注文率、Web比率、問い合わせ件数の変化をKPIとして追う。

五.全社展開と定着化

成功事例を社内で共有し、顧客へのメリット訴求を強める。
FAQの整備、ヘルプデスク、定着化トレーニングにより、利用を広げる。

業種別導入事例の要点

印刷会社の事例

名入れ印刷の仕様入力をフォーム化し、入稿ファイルのアップロードと自動チェックを実装した。
校了までのリードタイムが短縮され、受注処理時間が大幅に削減された。

製造業の事例

顧客別価格と再注文ボタンの導入で、定番部品のリピートが簡単になった。
人的ミスが減り、出荷の安定性が増した。

卸売業の事例

商品表示制御とCSV連携で販路別の管理が容易になり、販売管理システムへの入力作業が数分単位に短縮された。
経理の月次処理も効率化された。

食品業界の事例

賞味期限やロット情報の入力を必須化し、トレーサビリティを強化した。
返品率が低下し、顧客からの信頼が高まった。

補助金活用によるコスト負担の軽減

IT導入補助金や事業再構築補助金を活用することで、システム導入費用の一部を補助できる。
中小企業にとって初期費用のハードルを下げられるため、導入の意思決定を後押しする効果がある。
申請スケジュール、要件、事業計画の作成支援を受けることで採択率は高まる。

FAQ:よくある質問

Q1.取引先が高齢でPCが使えない場合はどうするか。

スマホ対応フォームを用意し、最小限の入力で発注できる導線を設計する。
併用期間を設け、電話サポートや代理入力機能で移行を支援する。

Q2.セキュリティ面はどう確保するか。

SSL暗号化、IP制限、二段階認証、権限ロール、監査ログを標準装備とし、脆弱性対応の運用体制も定義する。

Q3.どれくらいで効果が出るか。

小規模導入なら三か月以内に工数削減や問い合わせ減少の効果を実感しやすい。
段階導入で着実に成果を積み上げるのが安全である。

Q4.既存の販売管理や会計とつながるのか。

CSV連携で日次同期、APIでリアルタイム同期という使い分けが現実的である。
RPAで画面操作を自動化する補完策も検討できる。

Q5.移行時に注意すべき点は何か。

一気に切り替えず、テスト導入でUI改善とルール整備を進める。
顧客向けのマニュアル、動画、FAQの事前準備が定着を左右する。

まとめ:FAX廃止ではなく業務改革として提案する

FAX注文のWeb化は、単なるデジタル化ではなく、業務効率化、コスト削減、顧客満足度向上、DX推進を同時に実現する改革である。
社内説得では、現場が楽になること、数字で効果が示せること、段階導入で失敗リスクを抑えられることを明確に伝える。
まずは現状を可視化し、効果の大きい工程から着手し、スモールスタートで成功体験を作る。
その一歩が、受発注の在り方を劇的に変え、企業全体の競争力を押し上げる。

関連記事

はじめてのBtoB-EC導入完全ガイド|仕組み・メリット・費用・成功事例まで徹底解説
この記事でわかること BtoB-ECのしくみとメリット 導入に必要な準備・費用・スケジュール システム選定のポイントと主要サービス比較 成功企業のリアルな導入事例 導入後に成果を最大化するコツとKPI設定1....
【2025年最新版】BtoB-ECとは?定義・特徴・メリット・導入事例を徹底解説
BtoB-ECに対する注目度近年、企業間取引のデジタル化が急速に進む中で、BtoB-EC(Business to Business Electronic Commerce)の注目度はますます高まっています。国内市場だけでも2024年度に...
BtoB-EC導入で直面しやすい7つの課題を徹底解説
1. イントロダクションBtoB-EC(企業間電子商取引)は、FAXや電話に代わり、ウェブ上で受発注と請求を完結できる便利な仕組みです。しかし、実際に導入を進めると「BtoB-EC 課題」と呼ばれる壁にぶつかりがちです。ここでは、...
BtoB-ECと基幹システムの連携方法|API・CSV・RPAの使い分け【2025年最新版】
はじめに:BtoB-ECは“業務システム”と切り離せないBtoB-ECサイトの構築は、単なる「Webで商品を売る仕組み」ではありません。特に法人間取引においては、ECシステムが業務全体の中核に位置づけられ、社内外のあらゆるプロセスと連動...

投稿者プロフィール

OSAMU HORIKAWACEO
関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。

システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。

その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)

2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。

クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution


■趣味・好きなもの
BMW / WRC / ロードバイク / RIZIN / Bellator / UFC
David Bowie / blur / MUSE / TheRollingStones / XTC
機動戦士ガンダム(ファースト) / 富野由悠季
ベルセルク / 頭文字D / 進撃の巨人 / ジョジョの奇妙な冒険 / あしたのジョー
Mission: Impossible / Memento / ワイルド・スピード / ソナチネ
LOST / Game of Thrones / FRINGE / The Mentalist
上岡龍太郎 / ダウンタウン

お気軽にご相談ください

お気軽にご相談ください

タイトルとURLをコピーしました