はじめに:FAX注文をどうにかしたいが、何を選べばいいのか分からない
「毎日届くFAX注文を何とかしたい」
「手入力のミスや残業を減らしたい」
そんな声は、製造業や卸売業、印刷業をはじめとする多くのBtoB企業から聞かれます。
しかし実際に解決策を探し始めると、選択肢は意外に多く存在します。
OCRでFAXの文字を読み取ってデータ化する方法。
RPAでパソコン操作を自動化する方法。
BtoB-ECでそもそも受注の流れをWeb化する方法。
それぞれ特徴や導入のハードルが異なるため、迷ってしまう担当者は少なくありません。
この記事では、FAX受注を自動化するための代表的な3つのアプローチ「OCR」「RPA」「BtoB-EC」について、それぞれの特徴・メリット・デメリットを比較し、選び方のポイントを詳しく解説します。
また、現場の状況や将来像に合わせた導入ステップの考え方も紹介します。
OCR(光学文字認識):紙文化に寄り添いながらの第一歩
特徴と仕組み
OCRは、スキャンした注文書やFAX画像から文字を認識し、デジタルデータに変換する技術です。
印字された文字はもちろん、手書き文字にも対応できる製品もあります。
紙文化が根強い業界では、顧客側の発注方法を変えずに始められるため、最初の自動化ステップとして選ばれることが多いです。
メリット
- 顧客に注文方法の変更を求めなくても導入できる
- 現場オペレーションの変更が少なく、導入負担が軽い
- フォーマットが一定であれば高精度の読み取りが可能
デメリット
- 手書きの癖やかすれた印字では精度が低下する
- 顧客ごとにレイアウトが異なると設定や調整が増える
- 読み取り後の確認・修正作業が必要になる場合がある
OCRは、短期的な省力化には効果的ですが、紙を前提とした仕組みから脱却できないため、長期的な効率化には限界があります。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション):手作業の自動再現ツール
特徴と仕組み
RPAは、人が行うパソコン操作を記録し、その動作をロボットが自動で再現する仕組みです。
マウスクリックやキーボード入力、ファイル操作など、決まった手順の作業に強みがあります。
既存の業務フローをそのまま模倣できるため、システム改修やAPI連携が不要で導入できるのが魅力です。
メリット
- システム開発や連携のためのプログラミングが不要
- 単純作業や定型作業を高速かつ正確に実行可能
- 比較的短期間で導入しやすく、中規模の費用感で開始できるケースもある
デメリット
- 操作画面やレイアウトが変更されると動作が止まる可能性
- エラーが発生した場合は人の判断や介入が必要
- 業務全体の構造改革にはつながりにくい
RPAは既存のやり方を変えずに自動化できる反面、長期的な業務改善というよりも、現状の効率化に向く手法です。
BtoB-EC(Web受注システム):仕組みごと変える抜本的な解決策
特徴と仕組み
BtoB-ECは、取引先企業がWeb上で商品を選び、直接注文できるオンライン受注システムです。
顧客ごとの価格設定や支払条件、見積依頼、注文履歴参照、再注文など、受注に関わる一連のプロセスを一元管理できます。
FAXやメールといったアナログ手段を根本から排除できる点が大きな特徴です。
メリット
- FAXや手入力が不要になり、受注の自動化が実現
- 顧客別の商品・価格・条件をあらかじめ登録可能
- 在庫・出荷・請求など他システムとの連携拡張が可能
デメリット
- 顧客側にWeb操作への慣れが必要
- 初期構築費用がかかる(補助金活用で軽減可能)
- 要件定義や社内外の調整に一定の期間が必要
BtoB-ECは導入ハードルがやや高いものの、業務構造を変えることで長期的な効率化と顧客満足度向上を同時に実現します。
OCR・RPA・BtoB-ECの違いを比較
比較軸 | OCR | RPA | BtoB-EC |
---|---|---|---|
対応領域 | 紙注文の読み取り | PC操作の自動化 | 受注業務の仕組み化 |
顧客側の変化 | なし | なし | あり(Web化) |
導入コスト | 低〜中 | 中 | 中〜高 |
ミス削減効果 | 限定的 | 限定的 | 高い |
拡張性 | 低 | 中 | 高 |
属人性の排除 | 部分的 | 部分的 | 完全に可能 |
定着支援 | ほぼ不要 | ほぼ不要 | 必要 |
向いている企業 | 紙文化が根強い | 反復作業が多い | 業務全体を改善したい |
ツール選定の3つの視点
- ① 現在の課題を整理する:入力負担なのか、ミス防止なのか、顧客対応スピードなのか
- ② 将来像を描く:在庫や請求、物流まで一元化するのか、段階的に進めるのか
- ③ ITリテラシーを考慮:現場や顧客がどこまでデジタル対応できるか
まとめ:自動化ツールは「ラクになること」だけで選ばない
OCRやRPAは比較的導入しやすく、短期間で効果を感じやすい手法です。
しかし、業務全体の変革という意味では、BtoB-ECのような構造改革型の手段が有効です。
自社の課題や顧客の状況に合わせて、段階的に最適な方法を選び、将来を見据えた自動化戦略を立てることが重要です。
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投稿者プロフィール
- CEO
- 関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。
システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。
その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)
2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。
クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
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