この記事でわかること
「BtoB-ECを作るとき、EC-CUBEのようなパッケージを使うか、ゼロから開発(フルスクラッチ)するか」——どちらにするか、迷うことがあります。この記事では、どちらが優れているかではなく、変更できる範囲・開発と保守の体制・コスト構造という観点で、両者を中立に比較します。ポイントは、「ゼロから作る必要が、本当にあるか」を考えることです。
なお、この記事では、パッケージ型とフルスクラッチを比較します。SaaS型(Shopifyなど)とパッケージ型の違いについては、SaaS型とパッケージ型の違いで解説しています。
この記事を読むと分かること
- パッケージ型とフルスクラッチの違い
- 変更範囲・開発と保守の体制・コスト構造での比較
- どちらを検討するかの、要件の考え方
パッケージ型とフルスクラッチの違い
まず、用語を整理します。
| 方式 | 概要 |
|---|---|
| パッケージ型 | 既存のECソフトウェア(EC-CUBEなど)を基盤にして、必要な部分をカスタマイズする方式 |
| フルスクラッチ | 基盤となる製品を使わず、要件に合わせてゼロから開発する方式 |
パッケージ型は、基本的な機能が最初から用意されており、それを土台に、足りない部分を追加していきます。フルスクラッチは、土台から作るため、要件に合わせた設計の自由度が高い一方、その分、開発する範囲が広くなります。以下、この2つを、いくつかの観点で比較していきます。
変更できる範囲
パッケージ型は、基盤となる製品の構造を活かしつつ、カスタマイズやプラグイン、個別開発で、要件に合わせていきます。EC-CUBEのようにソースコードを扱える製品では、変更できる範囲は広いですが、基盤の構造を踏まえた設計になります。フルスクラッチは、土台から設計するため、変更できる範囲は広くなります。ただし、フルスクラッチであっても、使用する技術や、外部サービス、予算といった制約はあります。「完全に自由」というより、「基盤の制約が少ない分、設計する範囲が広い」と捉えるのが実際に近いです。
開発・保守を、誰が担うか
どちらの方式でも、開発と保守を、誰がどこまで担うかが論点になります。パッケージ型は、基盤部分のアップデートは製品側で提供されることがあり、その分、自社や開発会社が担う範囲は、フルスクラッチより狭くなることがあります。フルスクラッチは、基盤を含めてすべてが独自の実装になるため、保守や改修も、その独自実装に対して行う必要があります。保守を、自社で担うのか、開発会社に委託するのかは、どちらの方式でも検討する部分です。
バージョンアップと技術の保守
パッケージ型は、基盤となる製品のバージョンアップに対応する必要がありますが、その手順は製品側で提供されます。一方、独自にカスタマイズした部分は、バージョンアップ時に確認が必要になることがあります。フルスクラッチは、製品のバージョンアップという概念はありませんが、使用しているフレームワークや言語のバージョン、セキュリティ対応などを、自分たちで管理していく必要があります。どちらも、公開後に技術面の保守が続くという点は共通です。EC-CUBEのバージョンアップについては、バージョンアップで確認したい6つのポイントで解説しています。
コスト構造の違い
コストは、「どちらが安いか」ではなく、何にコストがかかるかの構造が異なる、と捉えるのが実際に近いです。
| 方式 | コストの考え方 |
|---|---|
| パッケージ型 | 基盤部分は用意されているため、初期の開発は、カスタマイズする範囲が中心。あわせて、サーバー費、保守費、バージョンアップ、追加開発などがかかる |
| フルスクラッチ | 基盤を含めてゼロから開発するため、初期の開発範囲が広くなる。あわせて、保守・改修も、独自実装に対して行う |
初期開発、カスタマイズ、保守、バージョンアップ、内製の人員、外部委託など、何を、どこで負担するかによって、総額は変わります。初期費用だけでなく、運用する期間を含めて比較することが大切です。費用の考え方は、EC-CUBE構築の費用の内訳もご覧ください。
フルスクラッチを検討する条件
次のような場合は、フルスクラッチも検討の対象になります。
- 既存のパッケージの変更範囲では、要件を満たしにくい
- 独自の処理や、データ構造が、システムの中核になる
- 開発・保守を担う体制がある(内製、または継続的に委託できる)
フルスクラッチは、要件に合わせて設計できる自由度がある一方、開発の範囲が広く、保守も独自実装に対して続きます。この体制とコストを見込めるかが、検討のポイントになります。
パッケージ型を検討する条件
次のような場合は、パッケージ型が現実的な選択肢になります。
- 受注の構造が、パッケージの機能やカスタマイズで対応できる範囲にある
- 基幹連携などが、パッケージの仕組みで整理できる
- 初期開発の範囲や、保守の負担を、抑えて始めたい
EC-CUBEのようなパッケージは、基本機能を土台にできるため、初期開発の範囲を、フルスクラッチより絞りやすいという特徴があります。ただし、パッケージの構造に合わない要件がある場合は、その部分の設計を検討することになります。
判断するときに確認したいこと
パッケージ型とフルスクラッチのどちらを選ぶかは、次のような点を確認して考えます。
- 要件が、既存のパッケージの変更範囲で満たせるか
- 独自の処理やデータ構造が、どこまで中核になるか
- 開発・保守を担う体制があるか
- 初期開発と、その後の運用を含めた、コスト構造
大切なのは、「どちらが優れているか」ではなく、「自社の要件に、どちらが合うか」で考えることです。まず、要件を整理することが、判断の出発点になります。
BtoB-ECの構築方法の選定を、ご相談ください。
「パッケージで足りるのか、ゼロから作る必要があるのか整理したい」といった段階からご相談いただけます。要件を伺ったうえで、どちらが合うかも含めて、ご提案します。
よくある質問
パッケージ型とフルスクラッチは、何が違うのですか?
パッケージ型は、既存のECソフトウェア(EC-CUBEなど)を基盤に、必要な部分をカスタマイズする方式です。フルスクラッチは、基盤となる製品を使わず、要件に合わせてゼロから開発する方式です。フルスクラッチは設計の自由度が高い一方、開発する範囲が広く、保守も独自実装に対して続きます。どちらが合うかは、要件と、開発・保守の体制によって変わります。
フルスクラッチのほうが、自由でよいのではないですか?
フルスクラッチは、基盤の制約が少ない分、設計する範囲が広くなります。ただし、「完全に自由」というわけではなく、使用する技術や外部サービス、予算といった制約はあります。また、開発する範囲が広いぶん、初期の開発や、その後の保守の範囲も広くなります。自由度と、開発・保守の負担は、あわせて考えることが大切です。
コストは、どちらが安いですか?
一概には言えません。パッケージ型は基盤が用意されているため、初期の開発はカスタマイズする範囲が中心になりますが、サーバー費・保守費・バージョンアップ・追加開発などがかかります。フルスクラッチは初期の開発範囲が広く、保守も独自実装に対して続きます。初期費用だけでなく、運用する期間を含めて、何にコストがかかるかを比較することが大切です。
どういう場合に、フルスクラッチを検討すべきですか?
既存のパッケージの変更範囲では要件を満たしにくい場合や、独自の処理・データ構造がシステムの中核になる場合に、フルスクラッチが検討の対象になります。ただし、開発の範囲が広く、保守も独自実装に対して続くため、その体制とコストを見込めるかが検討のポイントです。まず、要件が既存パッケージの変更範囲で満たせるか、フルスクラッチでなければ実現しにくい要件があるかを整理します。
まとめ
BtoB-ECのパッケージ型とフルスクラッチは、どちらが優れているというものではなく、変更できる範囲・開発と保守の体制・コスト構造という点で、違いがあります。大切なのは、「ゼロから作る必要が、本当にあるか」を、要件から考えることです。既存のパッケージの変更範囲で満たせるなら、パッケージ型が現実的な選択肢になりますし、独自の処理やデータ構造が中核になり、体制も見込めるなら、フルスクラッチも検討の対象になります。
私たちサンクユーは、EC-CUBE(パッケージ型)を中心に、BtoB-ECの構築を手がけています。要件を伺ったうえで、パッケージで対応できるか、それとも別の方法が合うかも含めて、ご提案します。構築方法の選定で迷っている方は、お気軽にご相談ください。
ECプラットフォーム選びを検討するなら
投稿者プロフィール

- CEO
- 株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。
関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。
この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。
その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。
2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。
単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。
NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
■趣味・関心領域
BMW / WRC / ロードバイク / RIZIN / UFC / 大相撲
David Bowie / blur / MUSE / The Rolling Stones / XTC
機動戦士ガンダム(富野由悠季)
ベルセルク / 頭文字D / 進撃の巨人 / ジョジョの奇妙な冒険 / あしたのジョー
Mission: Impossible / Memento / ワイルド・スピード / ソナチネ
LOST / Game of Thrones / FRINGE / The Mentalist
上岡龍太郎 / ダウンタウン









