この記事でわかること
「ECサイトを作りたいが、SaaS型とパッケージ型のどちらがよいか分からない」——ECの構築方法を検討すると、この選択に直面します。この記事では、どちらが優れているかではなく、変更できる範囲・運用責任・コスト・外部連携・セキュリティ責任という5つの軸で、両者を中立に比較します。ポイントは、「どこまで自社側で変更・管理したいか」と「どこまでサービス提供者に任せたいか」という、責任範囲の選択として考えることです。
この記事を読むと分かること
- SaaS型とパッケージ/OSS型の違い
- 5つの軸での、中立的な比較
- どちらを検討しやすいかの、要件の考え方
SaaS型とパッケージ/OSS型は、何が違うのか
まず、用語を整理します。両者の違いは、クラウドか自社サーバーか、という点ではありません(パッケージやOSSも、クラウド環境に構築できます)。違いは、システムの基盤を誰が運営し、どこまでを自社側で扱うか、という点にあります。
| 方式 | 概要 |
|---|---|
| SaaS型 | 提供事業者がシステム基盤を運営し、利用者はサービスとして利用する方式(Shopify、futureshopなど) |
| パッケージ/OSS型 | ソフトウェアを導入し、自社または開発会社が、構築・カスタマイズ・運用する範囲を持つ方式(EC-CUBEなど) |
EC-CUBEは、OSSとして提供されているECパッケージの一例です。なお、本記事では比較を分かりやすくするため、自社または開発会社が構築・運用する範囲を持つ方式を「パッケージ/OSS型」とまとめて表記します。パッケージは提供の形態、OSSはライセンスやソース公開の形態を指す言葉で、両者は厳密には同じ分類ではありません。以下、この2つ(SaaS型と、パッケージ/OSS型)を、5つの軸で比較していきます。
「自由度」ではなく、変更範囲と運用責任で考える
両者を比較するとき、「SaaS型は自由が利かない」「パッケージ型は何でもできる」といった捉え方をすると、判断を誤ることがあります。大切なのは、どこまでを自社側で変更・管理したいか、どこまでを提供者に任せたいかという、責任範囲の選択として考えることです。この視点で、5つの軸を見ていきます。
比較① 変更・カスタマイズできる範囲
標準機能で要件を満たせるかどうかが、最初の分かれ目です。SaaS型は、提供されている機能の範囲での利用が中心になります(アプリや設定で拡張できる範囲はあります)。パッケージ/OSS型では、製品やライセンス、構築方式によって差はありますが、自社または開発会社がカスタマイズを担える範囲を持つ場合があります。OSSでは、ソースコードを利用した個別開発も検討できます。標準機能に収まりにくい価格ルールや承認フロー、外部システム連携がある場合は、この「どこまで変更できるか」が、比較の項目になります。
比較② 運用・アップデートを誰が担うか
SaaS型では、システムのアップデートや、インフラの運用を、提供事業者が担います。利用者は、その運用を任せられる一方、アップデートの内容やタイミングは、提供者の方針に沿うことになります。パッケージ/OSS型では、アップデートやインフラの運用を、自社または開発会社が担います。自社側で管理できる範囲が広い一方、その運用体制を持つ必要があります。
比較③ コストをどこまで含めて比較するか
コストは、月額料金だけで比較すると、判断を誤ることがあります。それぞれ、含まれる範囲が異なります。
| 方式 | コストの考え方 |
|---|---|
| SaaS型 | 月額料金、オプション費用、決済・取引に応じた費用など、サービスごとに料金体系が異なる。基盤運用やアップデートは提供事業者側が担う範囲がある |
| パッケージ/OSS型 | 構築費、サーバー費、保守費、追加開発などが、それぞれ必要になる |
料金体系だけでなく、必要な機能と、運用する期間を含めて比較することが大切です。BtoB-ECの費用の考え方は、EC-CUBE構築の費用の内訳でも解説しています。
比較④ 基幹・外部システムとの連携
基幹システム、物流、決済などとの連携が必要な場合、その連携をどこまで柔軟に設計できるかが、比較の項目になります。SaaS型では、提供されている連携機能やAPIの範囲での連携が中心になります。パッケージ/OSS型では、連携方式を要件に合わせて設計できる範囲が広くなります。連携の設計については、基幹・在庫システムを連携する方法で解説しています。
比較⑤ セキュリティ・保守の責任範囲
セキュリティや保守を、どこまで提供者側が担い、どこまで自社側が担うかも、違いの一つです。SaaS型では、基盤のセキュリティや保守を、提供事業者が担う範囲が広くなります。パッケージ/OSS型では、脆弱性への対応や、バージョンアップを、自社または開発会社が担う範囲が広くなります。どちらも、自社側で確認・対応すべき部分は残りますが、その範囲が異なります。
SaaS型を検討しやすい要件
次のような要件の場合、SaaS型を検討しやすくなります。
- 標準機能で、やりたいことが満たせる
- できるだけ短期間で立ち上げたい
- インフラの運用や、アップデートを、自社で担う範囲を減らしたい
- サービス標準への業務適合を、優先したい
パッケージ/OSS型も比較したい要件
次のような要件の場合、パッケージ/OSS型も、あわせて比較したくなります。
- 標準機能に収まりにくい、独自の要件がある
- 基幹システムとの連携を、柔軟に設計したい
- 将来の拡張を見据えている
- システムを、自社側で管理できる範囲を持ちたい
大切なのは、「どちらが優れているか」ではなく、「自社の要件に、どちらが合うか」で考えることです。
BtoB-ECでは、追加で確認したいこと
BtoB-ECの場合は、顧客別価格、承認フロー、掛売・与信、基幹連携など、追加で確認したい受注要件があります。これらが、標準機能に収まるかどうかも、方式選びの論点になります。BtoB-ECのプラットフォーム選びについては、なぜBtoB-ECにEC-CUBEが向いているのかで、受注構造の観点から解説しています。
ECプラットフォーム選びを、ご相談ください。
「SaaS型とパッケージ型で迷っている」「自社の要件に、どちらが合うか知りたい」といった段階からご相談いただけます。要件を伺ったうえで、どちらが向いているかも含めて、ご提案します。
よくある質問
SaaS型とパッケージ型は、クラウドか自社サーバーかの違いですか?
いいえ、そうではありません。パッケージ/OSS型も、クラウド環境に構築できます。両者の違いは、システムの基盤を誰が運営し、どこまでを自社側で扱うかにあります。SaaS型は、提供事業者が基盤を運営し、サービスとして利用する方式です。パッケージ/OSS型は、ソフトウェアを導入し、自社または開発会社が、構築・カスタマイズ・運用する範囲を持つ方式です。
パッケージ型のほうが、自由でよいのではないですか?
「自由だから優れている」とは限りません。パッケージ/OSS型は、変更できる範囲が広い一方、構築・運用・保守を、自社または開発会社が担う範囲も広くなります。SaaS型は、変更できる範囲は限られますが、その分、運用やアップデートを提供事業者に任せられます。どちらが合うかは、自社がどこまでを自社側で担いたいか、という要件によって変わります。
コストは、どちらが安いですか?
料金体系が異なるため、月額だけでは比較できません。SaaS型は、月額料金、オプション費用、決済・取引に応じた費用など、サービスごとに料金体系が異なり、基盤運用やアップデートは提供事業者側が担う範囲があります。パッケージ/OSS型は、構築費・サーバー費・保守費・追加開発などが、それぞれ必要になります。必要な機能と、運用する期間を含めて比較することが大切です。必要な機能、カスタマイズの範囲、運用責任、利用期間などによって、比較結果は変わります。
BtoB-ECの場合は、どちらがよいですか?
BtoB-ECでは、顧客別価格、承認フロー、掛売・与信、基幹連携など、追加で確認したい受注要件があります。これらの要件を標準機能で満たせる場合はSaaS型を比較しやすく、標準機能に収まりにくい要件がある場合は、パッケージ/OSS型も比較候補になります。まず、自社の受注要件を整理することが出発点になります。
まとめ
SaaS型とパッケージ/OSS型は、どちらが優れているというものではなく、変更できる範囲・運用責任・コスト・外部連携・セキュリティ責任という点で、責任範囲の分け方が異なります。大切なのは、どこまでを自社側で変更・管理したいか、どこまでを提供事業者に任せたいかという要件から、自社に合う方式を選ぶことです。
私たちサンクユーは、ECサイトの構築に対応しています。パッケージ/OSS型(EC-CUBEなど)を手がけていますが、要件を伺ったうえで、SaaS型が合う場合はその旨もお伝えします。ECプラットフォーム選びで迷っている方は、お気軽にご相談ください。
ECプラットフォーム選びを検討するなら
投稿者プロフィール

- CEO
- 株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。
関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。
この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。
その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。
2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。
単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。
NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
■趣味・関心領域
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機動戦士ガンダム(富野由悠季)
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LOST / Game of Thrones / FRINGE / The Mentalist
上岡龍太郎 / ダウンタウン









