この記事でわかること
BtoB-ECを立ち上げるとき、多くの会社は「ECサイトをどう作るか」に意識を向けます。しかし運用が始まってから問題になるのは、サイトよりも「ECの受注データを基幹システムにどう取り込むか」——つまり連携の設計であることがほとんどです。本記事では、製造業・卸売業のBtoB受注でつまずきやすい設計ポイントと、CSV・API・RPAの選び方を、実務の順番に沿って整理します。
なぜ連携プロジェクトは失敗するのか
「ECと基幹をAPIでつなぐ」「CSVで連携する」——方式の話は、実は設計のごく一部です。データをやり取りする仕組み自体は、方式さえ決まれば大きく外しません。
本当に難しいのは、その手前にある問いです。
- どの項目を、どの粒度で渡すのか
- 得意先ごとに違う単価や掛け率を、どちらのシステムが持つのか
- 電話やFAXで入った「EC外の受注」と、どう突き合わせるのか
- 訂正・追加・返品が入ったとき、どちらを正とするのか
これらは技術の問題ではなく業務の問題です。ここが曖昧なままつなぐと、連携は動いても運用が回りません。「システムは連携できているのに、結局手作業でチェックしている」という状態は、ほぼ例外なくこの設計不足から生まれます。
設計前に決めておくべき6つのこと
つなぐ前に、少なくとも次の6点を決めておく必要があります。BtoB受注ならではの論点も併記します。
| 決めること | BtoBで特に注意する点 |
|---|---|
| 連携するデータ項目と粒度 | 得意先コード・品番の体系(自社品番/得意先品番の対応)、単位(バラ/ケース/入数)のズレ |
| 連携の方向 | ECが正か、基幹が正か。商品マスタ・在庫・受注で「正」が異なることが多い |
| 頻度・タイミング | 即時か、締め時間でのバッチか。締め請求・出荷リードタイムとの整合 |
| キー(突合の軸) | 何をキーに突き合わせるか。受注番号・得意先コード・品番のどれが一意か |
| エラー・不一致時の運用 | 取り込み失敗をどう気づき、誰が直すか。「気づけない失敗」が一番危険 |
| 例外・特殊ルールの扱い | 得意先別単価、掛け率、最低ロット、承認フロー、EC外受注との合算 |
特に落とし穴になりやすい3点
① コード体系のズレ(品番・得意先コード)
ECと基幹で品番や得意先コードの体系が違うと、連携のたびに変換が必要になります。「ECの商品コード=基幹の品番」と単純に対応づけられないケース(1商品が複数品番、セット品、入数違い)は、BtoB特有です。ここを設計初期に整理しないと、後から変換テーブルの保守に延々と手作業が発生します。「今は運用でカバーできている」ものほど、連携時に表面化します。
② EC外受注との突き合わせ
BtoBでは、EC稼働後も電話・FAX・メールでの受注が残るのが普通です。ECの受注だけを基幹に流す設計にすると、EC外の受注と二重管理になり、結局どこかで人が合算することになります。「ECはあくまで受注チャネルの一つ」という前提で、基幹側の受注をどう一本化するかまで含めて設計する必要があります。
③ 訂正・追加・返品が入ったときの「正」
受注後の訂正・数量変更・返品が、EC側で起きるのか基幹側で起きるのか。どちらを正とし、もう一方にどう反映するのか。ここを決めていないと、連携は動いていても数字が合わなくなり、信頼できないデータになります。「めったに起きないから後で」と後回しにされやすく、後回しにされた分だけ影響が大きくなる論点です。
受注データの連携でお困りの方へ
「受注をもっと自動化したい」「手作業を減らしたい」——その第一歩は、つなぎ方ではなく業務設計の整理です。現状の受注業務・基幹連携を確認し、どこから手をつけるべきかをご相談いただけます。
連携方式(CSV / API / RPA)は業務が決まってから選ぶ
方式の選定は、上記の業務設計が固まった後に行うべきです。方式ありきで業務を歪めると、必ず無理が出ます。
| 方式 | 向いている状況 | 留意点 |
|---|---|---|
| CSV連携 | 締めタイミングでのまとめ処理、既存の基幹取込がCSV前提 | 即時性は低い。ファイル授受・命名・文字コードの取り決めが必要 |
| API連携 | 即時反映が必要、対象システムがAPIを提供 | 利用条件・費用・IP制限など対象システム側の仕様に依存 |
| RPA | 短期のつなぎ、API/CSVが用意できない画面操作の自動化 | 画面変更で止まりやすく、恒久運用には不向き |
APIが常に最適というわけではありません。受注件数・運用体制・基幹システムの仕様・予算によって、最適な方式は変わります。実際には、CSVのままの方が費用対効果が高いケースも珍しくありません。
方式ごとの違いと選び方は、別記事「RPA・CSV連携・API連携の違いと選び方」で詳しく整理しています。
よくある失敗
例1:「CSVを自動で取り込みたい」が入り口だった
ご相談の入り口は「CSVで手作業運用している受注データを、自動で基幹に取り込みたい」というものでした。しかし要件を整理すると、真の原因は別にありました。ECと基幹とで、品番や得意先コードなどのコード体系が一致していなかったのです。この状態で自動化しても、処理が速くなるだけで、不一致そのものは解消されません。そこで、コードの変換テーブルを用意し、対応しきれない例外は基幹側で吸収する設計に変更しました。これまで人が判断して吸収していたルールは、自動化すると必ず設計として定義しなければなりません。手作業で回っている業務ほど、連携時に「決めごと」として表に出す必要があります。
例2:EC外の受注を設計に含めていなかった
電話・FAX・メールでの受注が一定数残っているお客様で、当初は「ECの受注だけ」を基幹に連携する設計にしていました。EC化する範囲だけを見ていたため、EC外の受注は視野から外れていたのです。結果、EC外の受注と二重管理になり、締めのたびに担当者が両方を突き合わせて合算していました。基幹側を受注の一本化先と定め、ECは受注チャネルの一つとして流す設計に変更したことで、合算作業がなくなりました。「ECはチャネルの一つ」という前提を設計に入れられるかが分かれ目でした。
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よくある質問
ECと基幹システムの連携は、CSVとAPIのどちらが良いですか?
一概には言えません。受注件数、即時反映が必要か、基幹システムがAPIを提供しているか、予算などによって最適な方式は変わります。締めタイミングでまとめて処理する運用ならCSVで十分なこともあり、CSVのほうが費用対効果が高いケースも珍しくありません。まず業務設計(データ項目・連携方向・例外処理)を固めたうえで、件数や即時性に照らして選ぶのが失敗しないコツです。
連携でよくある失敗は何ですか?
方式を先に決めてしまうことです。データ項目・連携方向・キー・エラー時の運用・例外処理といった業務側の取り決めが曖昧なままつなぐと、連携は動いても手作業やチェックが残ります。「システムは連携できているのに、結局人が確認している」という状態は、この設計不足から生まれます。つなぐ前に業務の決めごとを固めることが重要です。
電話やFAXなどEC以外の受注がある場合も連携できますか?
できます。ただし「ECの受注だけ」を基幹に連携する設計にすると、EC外の受注と二重管理になり、締めのたびに人が合算することになります。基幹側を受注の一本化先と位置づけ、ECは受注チャネルの一つとして流す設計にすることで、EC外受注との突き合わせをなくせます。EC化する範囲だけでなく、受注全体をどう一本化するかまで含めて設計することが大切です。
既存の基幹システムがAPIに対応していない場合はどうすればよいですか?
APIに対応していなくても、CSV連携やRPAで対応できるケースが多くあります。CSV連携は既存の基幹取込がCSV前提の場合に有効です。RPAは画面操作を自動化できますが、画面変更で止まりやすく恒久運用には向きません。まずは基幹システム側がどの連携手段を持っているか(CSV取込・API・その他)を確認し、そのうえで業務に合った方式を選びます。
受注業務の自動化・基幹連携、ご相談ください
「受注データをもっと自動化したい」「手作業を減らしたい」——こうしたご相談を多くいただきます。方式ありきではなく、御社の受注業務・基幹連携・運用方法を整理したうえで、CSV・API・RPAの中から費用対効果に見合う方式をご提案します。まずは現状の構成をお聞かせください。
投稿者プロフィール

- CEO
- 株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。
関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。
この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。
その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。
2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。
単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。
NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
■趣味・関心領域
BMW / WRC / ロードバイク / RIZIN / UFC / 大相撲
David Bowie / blur / MUSE / The Rolling Stones / XTC
機動戦士ガンダム(富野由悠季)
ベルセルク / 頭文字D / 進撃の巨人 / ジョジョの奇妙な冒険 / あしたのジョー
Mission: Impossible / Memento / ワイルド・スピード / ソナチネ
LOST / Game of Thrones / FRINGE / The Mentalist
上岡龍太郎 / ダウンタウン









