この記事でわかること
「FAXでの受注を、そろそろWebにしたい」「注文を手入力するのが大変」——BtoBの受注をFAXで受けている企業で、こうした課題が出てくることがあります。ただ、FAX受注をEC化するとき、大切なのは、FAXの注文書をそのままWebフォームに置き換えることではありません。FAX受注で実際に行っている工程を分解し、どこをWeb化・自動化・連携するかを整理することが出発点になります。この記事では、その考え方と、特に重要になる注文操作の設計を解説します。
この記事を読むと分かること
- FAX受注の工程を分解して考える理由
- Web受注化で整理する5つの論点
- 一括注文・再注文の操作設計が重要な理由
BtoB-ECのプラットフォーム選び全体については、なぜBtoB-ECにEC-CUBEが向いているのかもあわせてご覧ください。
まず、FAX受注の工程を分解する
FAX受注のEC化を考えるとき、最初にやりたいのは、「今、FAXでの受注が、どういう工程で回っているか」を分解することです。例えば、次のような工程があります。
- 取引先が、注文書に記入する
- FAXで送信する
- 受信を確認する
- 内容を、基幹システムやExcelに手入力する
- 価格を確認する(取引先ごとの価格表など)
- 在庫を確認する
- 受注を確定する
- 基幹システムに転記する
この工程を見ると、FAXそのものが問題というより、受信したあとに、人が確認・転記・価格確認・在庫確認・基幹入力をしている構造に、手間がかかっていることが分かります。
「FAXをなくすこと」と「受注業務をWeb化すること」は同じではない
FAX受注のEC化というと、「FAXをなくして、Webフォームにする」と考えがちです。しかし、大切なのは、FAXという手段をなくすこと自体ではありません。現在の受注工程のうち、どこをWeb化し、どこを自動化し、どこを基幹と連携するかを整理することです。
たとえば、注文の入力を取引先自身にWebでしてもらえれば、受信後の手入力が減ります。価格の表示を自動にすれば、価格確認の手間が減ります。基幹への連携を自動にすれば、転記が減ります。どの工程を、どう変えるかを分けて考えることが、設計の出発点になります。
Web受注化で整理する5つの論点
FAX受注をWeb化するとき、整理しておきたい論点は、大きく5つあります。
① 誰からの注文かを、EC上で識別する
BtoBのWeb受注では、まず「誰からの注文か」を識別できるようにすることが基本になります。取引先ごとにログインできるようにし、その取引先に応じた価格や商品を表示する、という設計です。法人単位・ユーザー単位・部署単位のどこまで管理するかは、現在の受注業務によって変わります。複数のユーザーや、承認の権限が必要な場合は、承認フローの設計もあわせて検討します。
② 取引先ごとの価格ルール
FAX受注では、取引先ごとの価格表や、担当者の判断で価格が決まっている場合があります。EC化する際は、現在の価格ルールを整理し、どの条件でどの価格を表示するかを設計します。価格設計の詳細は、複雑な価格の設計で解説しています。
③ 複数商品を、まとめて注文する方法
ここが、FAX受注のEC化で特に重要な部分です。FAXでは、取引先は紙の注文書に、複数の商品と数量を、まとめて書いています。これをそのまま、一般的なBtoC型の「商品一覧→商品詳細→カート」の流れに置き換えると、かえってFAXより手間が増えることがあります。次のような、まとめて注文できる仕組みを検討します。
- 品番を直接入力して注文する
- CSVをアップロードして注文する
- 数量をまとめて入力できる注文画面
④ 繰り返しの注文を、どう扱うか
BtoBでは、同じ取引先が、同じような商品を繰り返し注文することがあります。毎回、商品を探して注文するのは手間なので、次のような仕組みを検討します。
- 過去の注文履歴から、再注文する
- よく注文する商品を、お気に入りやテンプレートとして登録する
③の一括注文と④の再注文は、FAXで行っていた注文操作をWeb上でどう置き換えるかという論点です。
⑤ 基幹システムへ、どう渡すか
受注情報を基幹システムに転記している場合は、EC化後に、どこまで連携するかを整理します。CSV・API・バッチなどの方式は、連携する対象や、必要な更新のタイミングに応じて検討します。連携の設計は、基幹・在庫システムを連携する方法で解説しています。
特に重要なのは、一括注文・再注文の操作設計
5つの論点の中でも、FAX受注のEC化で特に差が出るのが、③一括注文と④再注文の操作設計です。FAXで注文していた取引先にとって、Webでの注文が、FAXより面倒だと感じられると、なかなか使ってもらえません。「紙にまとめて書く」という、これまでの注文のしやすさを、Web上でどう実現するかを考えることが大切です。商品を一つずつカートに入れる方法だけでなく、まとめて入力する方法や、履歴から再注文する方法も設計候補になります。
FAXを一度に廃止するか、段階的に移行するか
FAX受注をEC化するとき、すべての取引先を同時にWeb受注へ切り替える必要はありません。取引先の利用環境や、注文の方法を確認し、移行の方法を検討します。
- 一部の取引先から始める
- FAXとWebを、一定期間併用する
- Web受注に慣れてもらいながら、対象を広げる
取引先によっては、Webでの注文に慣れていない場合もあります。移行の進め方も、受注業務の一部として設計することが大切です。
Web化で整理できること
FAX受注をWeb化・連携することで、これまで人が行っていた作業のうち、どの部分を減らせるかを整理できます。手入力、確認、転記といった工程のうち、どこをWeb化・自動化・連携するかによって、削減の対象となる作業が変わります。まず、現在の工程のどこに手間がかかっているかを把握することが、出発点になります。
FAX・メール受注のWeb化を、ご相談ください。
「FAXでの受注をWebにしたい」「手入力や転記を減らしたい」「一括注文に対応したい」といったご相談に対応しています。現在の受注業務を伺ったうえで、どこをWeb化・連携できるかをご提案します。段階的な移行のご相談にも対応しています。
よくある質問
FAXでの受注を、そのままWebフォームにすればよいですか?
FAXの注文書をそのままWebフォームに置き換えるだけでは、かえって使いにくくなることがあります。大切なのは、FAX受注で実際に行っている工程(受信・手入力・価格確認・在庫確認・基幹入力など)を分解し、どこをWeb化・自動化・連携するかを整理することです。特に、複数商品をまとめて注文する操作や、繰り返し注文の仕組みは、FAXからWebへ移行する際に確認したい設計項目です。
取引先が、Webでの注文に慣れていない場合はどうすればよいですか?
すべての取引先を、同時にWeb受注へ切り替える必要はありません。一部の取引先から始める、FAXとWebを一定期間併用する、といった段階的な移行を検討します。取引先の利用環境や注文方法を確認しながら、対象を広げていく方法があります。移行の進め方も、受注業務の設計の一部として考えることが大切です。
FAX受注で使っている、取引先ごとの価格は、Webでも対応できますか?
対応を検討できます。まず、現在どのように価格が決まっているか(取引先ごとの価格表、担当者の判断など)を整理することが出発点になります。そのうえで、EC上でどの条件でどの価格を表示するかを設計します。取引先ごとの価格の設計については、複雑な価格の設計の記事で詳しく解説しています。
まとめて注文する機能は、EC-CUBEで作れますか?
作れます。品番を直接入力する注文、CSVをアップロードする注文、数量をまとめて入力する画面などを、設計・開発することになります。これらは標準機能そのままではなく、プラグインや個別開発を検討する範囲です。FAXで複数商品をまとめて注文していた取引先にとって、使いやすい注文方法を用意することが、Web受注への移行では大切になります。
まとめ
FAX受注のEC化で大切なのは、FAXの注文書をそのままWebに再現することではなく、FAX受注で行っている工程を分解し、どこをWeb化・自動化・連携するかを整理することです。誰からの注文かの識別、取引先ごとの価格、複数商品の一括注文、繰り返し注文の扱い、基幹連携——これらの論点を整理し、特に、一括注文・再注文について、現在のFAXでの注文方法を踏まえて操作を設計することが重要です。そして、移行は一度に行う必要はなく、段階的に進める方法も検討できます。
私たちサンクユーは、FAX・メール受注のWeb受注化に取り組んでいます。「FAXでの受注をWebにしたいが、どう進めればいいか」といった段階から、ご相談いただけます。まずは、現在の受注業務をお聞かせください。
投稿者プロフィール

- CEO
- 株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。
関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。
この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。
その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。
2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。
単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。
NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
■趣味・関心領域
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上岡龍太郎 / ダウンタウン









