この記事でわかること
EC-CUBEは標準でも会員機能を備えていますが、「1会員=1人」の前提で設計されており、法人取引特有の運用——複数担当者の管理、会社単位の注文履歴共有、権限の使い分け——には足りません。本記事では、EC-CUBEで法人アカウント(法人サブアカウント)を実現する方法を、会社・担当者・権限の構造から、管理画面・マイページでの具体的な操作まで含めて解説します。
EC-CUBE標準機能では足りない法人運用
EC-CUBEは標準で会員登録・マイページ・注文履歴といった機能を備えています。しかし、これらは基本的に「個人の会員」を前提とした設計です。法人取引で求められる以下の運用には、標準のままでは対応できません。
| 法人運用で必要なこと | EC-CUBE標準では |
|---|---|
| 1つの会社に複数の担当者がログインする | 会員は個人単位のため、複数担当者を会社にまとめられない |
| 会社単位で注文履歴を共有する | 注文履歴は会員個人に紐づき、他の担当者が見られない |
| 担当者ごとに権限を分ける | 会員に管理者/一般のような権限階層がない |
| 担当者の追加・無効化を顧客側で行う | 会員管理は運営側のみで、顧客が担当者を管理できない |
これらを実現するには、EC-CUBEのカスタマイズで「会社」という単位を追加し、その下に担当者をぶら下げる構造を作る必要があります。EC-CUBEはオープンソースのため、こうした構造の追加が可能です。
法人アカウントの基本構造(会社・担当者・権限)
法人アカウント機能の土台は、「会社」を軸にした構造です。
| 要素 | 役割 |
|---|---|
| 会社 | 取引の単位。会社コードで識別し、担当者・注文・問い合わせを束ねる。担当者が1名だけの場合も会社として登録する |
| 担当者 | 会社に所属し、ログインして発注・問い合わせを行う。1社に複数登録できる |
| 管理者(権限) | 担当者の追加・権限変更・無効化ができる担当者 |
| 一般(権限) | 発注・履歴確認・問い合わせはできるが、担当者管理はできない担当者 |
同じ会社コードを持つ担当者は、会社の注文履歴を共通で閲覧できます。これが「個人ではなく会社に取引が紐づく」という法人アカウントの核心です。会社という単位を設けることで、担当者が入れ替わっても取引の継続性が保たれます。
法人アカウントで実現できること
この構造により、以下が実現できます。
- 1つの会社に複数の担当者アカウントを持たせる
- 同じ会社の担当者が、会社の注文履歴を共通で閲覧する
- 注文一覧に「誰が注文したか(担当者名)」を表示する
- 管理者が担当者を追加・無効化・権限変更する
- 担当者の追加を招待メール方式で行う
- 退職者を無効化して、履歴を保持したままログインを止める
これらが「なぜ必要か」という業務課題の側面は、BtoB-ECで複数担当者ログインはなぜ必要かで詳しく解説しています。本記事では「EC-CUBEでどう実現するか」に焦点を当てます。
実装のポイント(管理画面・マイページ)
法人アカウント機能は、運営側が使う「管理画面」と、顧客側が使う「マイページ」の両方に機能を実装します。それぞれの役割を整理します。
① 管理画面での会社・担当者の登録
運営側は管理画面で、会社の登録と最初の担当者(管理者)の設定を行います。
| 操作 | 内容 |
|---|---|
| 会社の登録 | 会社名・状態(有効/無効)・管理メモを登録。会社が取引・管理の基準単位になる |
| 最初の管理者の登録 | 会員に「所属会社」「担当者権限(管理者)」「担当者状態(有効)」を設定。最初の担当者は通常、管理者にする |
| 会社情報の編集 | 会社名や状態を変更できる。会社を「無効」にすると所属担当者は全員ログイン不可になるが、過去の履歴は保持される |
| 会社の注文を検索 | 受注管理で会社名から注文を検索でき、会社単位で取引状況を把握できる |
② マイページでの担当者管理
顧客側の管理者は、マイページから自社の担当者を管理できます。運営側の手を借りずに、顧客自身で担当者を増減できるのがポイントです。
| 操作 | 内容 |
|---|---|
| 担当者一覧の確認 | 氏名・メール・権限・状態を一覧表示(管理者のみ) |
| 担当者の追加 | 名前・メール・権限を入力し招待メールを送信。本人がメール内のURLからパスワードを設定して利用開始 |
| 招待メールの再送 | 招待期限が切れた場合、再送できる(新しい招待URLが発行される) |
| 権限の変更 | 管理者⇔一般を切り替えられる |
| 担当者の無効化 | 退職者などをログイン停止にする。削除ではなく無効化で履歴を保持 |
③ 会社単位の注文履歴共有
マイページの購入履歴では、同じ会社の注文履歴が表示されます。管理者・一般のどちらの担当者も確認できます。
- 同じ会社の注文であれば、自分以外の担当者が行った注文も確認できる
- 注文一覧・詳細に「注文担当者」が表示され、誰の発注かが分かる
- 他の会社の注文は表示されない(自社の履歴のみ)
これにより、担当者個人ではなく会社単位で発注履歴が蓄積され、社内での発注状況の共有・引き継ぎが可能になります。
EC-CUBEでの法人アカウント実装を検討中の方へ
会社単位の管理・複数担当者ログイン・権限設計・注文履歴共有——御社の運用に合わせた法人アカウント機能の構築をご相談いただけます。要件整理からお手伝いします。
法人運用の事故を防ぐ制御
法人アカウント機能では、運用上の事故を防ぐための制御を組み込むことが重要です。実際に当社が実装した制御の例を紹介します。
| 制御 | 理由 |
|---|---|
| 最後の管理者は無効化・降格できない | 会社に管理者が1人もいなくなると、誰も担当者を管理できなくなるため |
| 自分自身を無効化できない | 操作ミスで自分がログインできなくなる事態を防ぐため |
| 退職者は削除でなく無効化 | 過去の注文・問い合わせ履歴との紐付けを保つため |
| 会社を無効にしても履歴は残す | 取引終了後も管理画面から過去履歴を確認できるようにするため |
| 登録済みメールアドレスは重複登録不可 | アカウントの一意性を保つため |
こうした制御は、機能を作るうえで見落とされがちですが、法人運用の安定性を左右します。「動く」だけでなく「事故が起きない」設計にすることが、実用的な法人アカウント機能の条件です。
どんなBtoB企業に向くか
EC-CUBEでの法人アカウント実装は、以下のようなBtoB事業者に向いています。
- 取引先で複数の担当者が発注に関わる
- 会社単位で注文履歴を管理・共有したい
- 担当者の追加・削除を顧客自身に行わせたい(運営の手間を減らしたい)
- EC-CUBEで既にBtoBサイトを運用している、または構築を検討している
- SaaS型カートの標準機能では法人運用に足りないと感じている
特に、すでにEC-CUBEを使っている、またはこれからEC-CUBEでBtoBサイトを構築する企業にとっては、オープンソースの柔軟性を活かして自社の法人運用に合わせた設計ができる点が大きな利点です。EC-CUBE自体の特徴はEC-CUBEとは?で解説しています。
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よくある質問
EC-CUBEの標準機能だけで法人アカウントは実現できますか?
標準機能のままでは難しいです。EC-CUBEの標準会員機能は個人単位の設計のため、「会社の下に複数担当者をぶら下げる」「会社単位で注文履歴を共有する」「担当者に権限を持たせる」といった法人運用にはカスタマイズが必要です。ただしEC-CUBEはオープンソースのため、こうした会社・担当者・権限の構造を追加するカスタマイズが可能です。標準では足りない部分を、自社の運用に合わせて設計できるのがEC-CUBEの利点です。
担当者の追加は、運営側と顧客側のどちらが行うのですか?
最初の担当者(管理者)の登録は運営側が管理画面で行いますが、その後の担当者の追加・無効化・権限変更は、顧客側の管理者がマイページから行えます。これにより、担当者が増減するたびに運営へ依頼する必要がなくなり、顧客が自社で担当者を管理できます。運営側の運用負荷も下がります。
既存のEC-CUBEサイトに後から法人アカウント機能を追加できますか?
可能です。既存のEC-CUBEサイトに対しても、会社・担当者・権限の構造を追加するカスタマイズで法人アカウント機能を実装できます。ただし、既存の会員データとの関係や、現在の運用フローとの整合を確認する必要があるため、まず現状のサイト構成を調査した上で、実装方法と影響範囲を見積もるのが一般的な流れです。現状のEC-CUBEのバージョンやカスタマイズ状況によって対応方法が変わります。
会社を取引停止にしたい場合はどうなりますか?
管理画面で会社を「無効」にすると、その会社に所属する担当者は全員ログインできなくなります。ただし、過去の注文履歴や問い合わせ履歴は削除されず、管理画面から引き続き確認できます。取引を停止しても、過去の取引記録は会社の情報として保持されるため、後から取引内容を確認する必要がある場合にも対応できます。
EC-CUBEの法人アカウント機能、構築のご相談を承ります
EC-CUBE公式パートナーとして、製造業・卸売業のBtoB-EC構築を多数手がけています。会社単位の管理・複数担当者ログイン・権限設計・注文履歴共有まで、御社の法人運用に合わせた設計・実装をご相談いただけます。
投稿者プロフィール
- サンクユーのEC-CUBE担当。15年以上にわたりEC-CUBE開発に従事し、2系・3系・4系すべてに精通。難易度の高いカスタマイズや、他社構築サイトの改修・再設計も多数対応しています。
Javaでの業務システム開発を起点に、PHP・Perl・フロントエンド・CMSまで横断的に対応。基幹システム連携や業務フローを踏まえた設計を得意とし、複雑な要件にも柔軟に対応可能です。
ChatGPT CODEXを活用し、開発スピードと品質の両立を実現しています。









