この記事でわかること
BtoB-ECの運用では、商品の注文以外にも、取引先との間でさまざまなファイルをやり取りします。印刷・入稿データ、商品仕様書、注文時の注意事項、取引に関する契約書などです。
この記事では、BtoB-ECにおけるファイル保管・共有の活用方法と、公開範囲やセキュリティ、運用を設計する際のポイントを解説します。
この記事を読むと分かること
- 入稿データ・商品仕様・注文ルール・契約書を保管するメリット
- EC-CUBEのマイページで取引先別にファイルを共有する方法
- 公開範囲・セキュリティ・更新や保管のルールを設計するポイント
こうした資料がメールや担当者のパソコンに分散していると、「この商品の仕様はどこにあるのか」「前回確認した取引条件は何だったか」と探す手間が生まれます。担当者が変わるたびに、同じ資料を送り直している企業もあるのではないでしょうか。
EC-CUBEでは、カスタマイズによって、取引先ごとのファイルを保管し、マイページから登録・ダウンロードできる仕組みを構築できます。商品や法人に紐づけて資料を整理することで、受発注に必要な情報を確認しやすくなります。
BtoB-ECで保管・共有したいファイルとは
ファイル保管の対象は、印刷データや入稿データだけではありません。注文や商品に関する決まり事、仕様、取引条件など、受発注の判断に必要な資料も対象になります。
| 資料の種類 | 保管する内容の例 | 確認しやすくなること |
|---|---|---|
| 印刷・入稿データ | デザインデータ、ロゴ、印刷用PDF | 対象商品に関連する制作データ |
| 商品の仕様に関する資料 | 寸法、材質、加工方法、包装・梱包仕様 | 商品ごとの仕様や取り扱い条件 |
| 注文に関する決まり事 | 発注単位、注文締切、納品時の注意事項 | 注文前に確認しておきたいルール |
| 取引に関する契約書類 | 基本契約書、申込書、取引条件の確認書 | 法人ごとに取り交わした条件 |
※上記は活用例です。実際に保管する資料や紐づけ先は、業務内容に合わせて設計します。
たとえば、取引先専用の商品に包装仕様書や注文時の注意事項を紐づけておけば、担当者は対象商品から必要な資料を確認できます。法人ごとに契約書を整理すれば、その取引先との契約内容を確認する際の保管先も明確になります。
資料を置くだけでなく、「どの商品・どの取引先に関する情報か」が分かる形にすることが、業務で使いやすいファイル管理につながります。
EC-CUBEの標準ファイル管理と、取引先別のファイル共有の違い
EC-CUBEには、管理画面からサーバー上のファイルを扱う「ファイル管理」機能があります。製品のPDFマニュアルなどを配布する用途に活用できる機能です。
一方、この記事で扱うのは、特定の取引先にだけ公開する資料や、会員から受け取るファイルを管理するためのカスタマイズです。標準のファイル管理だけで、以下の仕組みがすべて備わっているという意味ではありません。
- 法人ごとにファイルを分けて保管する
- 取引先専用の商品に関連資料を紐づける
- 会員がマイページからファイルを登録する
- 法人内の役割に応じて閲覧範囲を制御する
- ダウンロードの都度、利用者の権限を確認する
一般公開する商品カタログと、特定の法人にしか見せられない契約書では、必要な管理方法が異なります。まず、誰に見せる資料なのかを整理して、仕組みを選ぶことが大切です。
専用商品の入稿データ・仕様書をマイページで管理する
取引先専用の商品を扱うBtoB-ECでは、商品に関連ファイルを紐づけると、資料を探す起点が明確になります。
たとえば、マイページの専用商品一覧や商品ページから「データ管理」へ進み、登録済みファイルを一覧で確認・ダウンロードできる構成です。商品の名称だけでメールを検索する運用に比べ、どの商品に関する資料なのかを把握しやすくなります。
印刷・入稿データに加えて、商品の仕様書、梱包方法、注文時の決まり事などをまとめておけば、制作担当者だけでなく、発注担当者が確認する場所としても活用できます。
会員によるファイル登録と、運営管理者への通知メールを組み合わせることも可能です。登録をきっかけに確認作業へ進めるようにすれば、ファイルが追加されたことを担当者が把握しやすくなります。
ただし、ファイルが保管されていることと、注文に使用する仕様が確定していることは別です。複数の資料や改訂版を扱う場合は、「どれが有効な資料か」「いつから適用するか」も分かる運用にしておきましょう。
特定の注文に紐づける場合は、追加の設計が必要
商品に共通する仕様と、「今回の注文だけ納品方法を変える」といった個別条件は、分けて管理する必要があります。
法人・商品単位のファイル保管に加えて、注文ごとの資料管理を行うなら、受注番号との紐づけや、受注詳細からの参照方法を別途設計します。過去の注文時点で使った仕様を残したい場合も、保存方法を決めておくことが重要です。
商品に紐づくファイルを後から差し替えるだけでは、過去の注文でどの仕様を使ったのかを確認できなくなる場合があります。
契約書・取引条件を法人ごとに保管する
取引基本契約書や申込書などは、個々の商品よりも法人に紐づけて管理する方が分かりやすい資料です。
法人ごとの書類一覧から必要なファイルを参照できれば、取引条件を確認したいときに、保管先や送信者を探す手間を減らせます。担当者の異動や引き継ぎがあっても、権限を持つ人が同じ場所から確認できる点もメリットです。
また、社内確認用の資料と、取引先に共有する契約書類を公開範囲で分けることもできます。ただし、ファイルを保管する機能と、電子署名や契約締結、契約更新の期限管理などの機能は、それぞれ要件が異なります。
今回のような保管・共有機能を検討する際は、まず「締結済みの契約書を確認できればよいのか」「契約手続きまでシステム化したいのか」を整理しましょう。
取引先別・担当者別に公開範囲を設計する
BtoB-ECでは、他社の資料を見せないことに加え、同じ法人の中でも、閲覧できる人を分けたい場合があります。
公開範囲は、たとえば次の3段階で設計できます。
| 公開範囲 | 想定する資料 | 閲覧できる人 |
|---|---|---|
| 法人の全担当者 | 商品仕様書、入稿データ、注文時の注意事項 | 対象法人の一般担当者・法人管理者 |
| 法人管理者のみ | 閲覧者を限定したい契約関連書類 | 対象法人の法人管理者と運営管理者 |
| 運営管理画面のみ | 社内確認用の資料 | 運営管理者 |
重要なのは、ファイルごとの権限だけでなく、法人・会員・商品との関係を合わせて確認することです。
たとえば、法人や会員を無効化した場合は利用できないようにする、専用商品を非公開にしたら関連データもマイページに表示しない、といった制御が必要になります。ファイル登録済みの商品を誤って別法人へ付け替えないための制御も、誤公開を防ぐ設計の一つです。
会員が登録したファイルを同じ法人の全担当者に共有するのか、登録者だけに限定するのかも決めておきましょう。「会員専用」であれば閲覧範囲が十分に決まるわけではありません。
非公開ファイルの保管で押さえたいセキュリティ対策
契約書や入稿データを扱う場合、画面にリンクを表示しないだけでは、十分なアクセス制御とはいえません。ファイル自体の保管方法と、取得時の権限確認を合わせて設計します。
非公開領域に保存し、ダウンロード時に権限を確認する
機密性のあるファイルは、通常の商品画像などとは分け、外部から直接アクセスできない領域に保存する方法があります。
ダウンロードはシステムを経由させ、その都度、ログイン状態、所属法人、公開範囲などを確認します。URLやファイル識別番号が分かった場合でも、権限のない利用者には渡さない仕組みが必要です。
ファイル形式・容量を制限する
何でもアップロードできる仕様にせず、業務に必要な拡張子や容量を決めます。ZIPを受け付ける場合は、内部のファイル形式や不正なパスを確認するなど、圧縮ファイルを前提にした対策も検討します。
容量の例として、専用商品データは1ファイル100MB、契約書類は20MBといった設定が考えられます。これは個別の設定例であり、EC-CUBE共通の上限ではありません。サーバー環境や想定するデータ量に応じて調整します。
操作履歴を残し、運用時に確認できるようにする
登録、ダウンロード、非公開化、再公開などの履歴を残しておくと、問い合わせや操作確認に役立ちます。
保存時のファイル名をランダムな管理名へ置き換える、ダウンロード時のキャッシュを抑制するなどの対策も組み合わせます。なお、ZIP内部の検査や拡張子制限は、ウイルス検査と同じものではありません。必要な検査の範囲は別途確認します。
導入前に決めておきたい運用ルール
使いやすいファイル保管・共有機能にするためには、画面や保存場所だけでなく、次のような運用も整理しておくことが大切です。
| 確認事項 | 決めておきたいこと |
|---|---|
| 紐づけ先 | 法人・商品・注文のどの単位で管理するか |
| 登録・閲覧権限 | 誰が登録し、誰に公開するか |
| 通知 | どの操作をきっかけに、誰へ通知するか |
| 有効な資料の判別 | 適用日、改訂番号、旧版の扱いをどうするか |
| 保存期間・容量 | いつまで保管し、容量増加にどう対応するか |
| 非公開化・削除 | 誰が操作でき、復元できる必要があるか |
| 取引終了時の対応 | 法人や会員の利用停止後にどう保管するか |
| バックアップ | 対象範囲、頻度、復旧方法をどうするか |
特に、注文や商品の決まり事を保管する場合は、「資料を読めること」と「その条件への同意や承認を記録すること」を区別します。同意・承認の記録が必要であれば、ファイル共有とは別の機能として検討します。
すべてを初期段階から実装する必要はありません。まずは、現在どこに資料があり、誰が探し、どのやり取りに時間がかかっているかを整理すると、必要な機能を絞り込みやすくなります。
取引先別のファイル保管・共有をご相談ください。
「商品仕様や注文の決まり事を確認できる場所を作りたい」「契約書を法人ごとに共有したい」「入稿データの受け渡しを見直したい」といった段階からご相談いただけます。資料の種類と現在の運用を伺い、必要な機能をご提案します。
よくある質問
EC-CUBEのマイページからファイルをアップロードできますか?
カスタマイズによって、会員がマイページから登録できる仕組みを構築できます。登録可能な形式・容量、対象となる法人や商品、通知先を合わせて設計します。
取引先ごとに見せるファイルを変えられますか?
法人にファイルを紐づけ、所属法人と公開範囲を確認する設計で対応できます。同じ法人内でも、一般担当者と法人管理者で閲覧範囲を分けることが可能です。
注文時のルールや商品仕様書も保管できますか?
可能です。商品に共通する資料は商品単位、取引全体に関する資料は法人単位など、確認しやすい場所に整理します。特定の注文だけに適用する資料は、注文との紐づけを別途設計します。
契約書を保管すれば、電子契約の機能も利用できますか?
保管・ダウンロードと、電子署名や契約締結の機能は別です。契約手続きまで対応したい場合は、必要な業務範囲と連携方法を別途検討します。
まとめ
BtoB-ECにファイル保管・共有の仕組みを組み込むと、入稿データだけでなく、商品仕様や注文の決まり事、取引契約書などを、関係者が確認しやすい場所にまとめられます。
その際に大切なのは、資料の種類に応じた紐づけ先と、閲覧範囲、更新・保管のルールを決めることです。受発注の流れと一緒に設計することで、資料を探す、送り直す、担当者へ確認するといった手間の削減につながります。
サンクユーでは、EC-CUBEのマイページ改修や、法人・専用商品に紐づくファイル管理のカスタマイズに対応しています。
「取引先別に仕様書を共有したい」「契約書や注文ルールをマイページで確認できるようにしたい」「メールでの入稿データの受け渡しを見直したい」といったご相談も承ります。保管したい資料と現在の運用を伺い、必要な機能の整理からお手伝いいたします。
BtoB-ECの業務設計を検討するなら
投稿者プロフィール

- CEO
- 株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。
関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。
この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。
その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。
2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。
単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。
NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
■趣味・関心領域
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上岡龍太郎 / ダウンタウン








