「ShopifyでBtoB-ECは作れるのか?」
結論から言うと、作れます。ただし、自社の受注構造によっては高確率で失敗します。
本記事では、BtoB-EC構築を専門とする当社が、Shopifyで構築して「結局電話注文が減らなかった」「運用コストが想定の2倍になった」といった相談を受けた実例をもとに、失敗する5つの典型パターンと、自社が該当するかを判定するチェックリストを公開します。
- ShopifyでBtoB-ECを構築して失敗する5つの典型パターン
- 自社が「Shopify向き」か「不向き」かを判定する10項目チェック
- 失敗を避けるための判断フレーム
結論:失敗する企業の共通点は「BtoCの延長で考えた」こと
当社にご相談いただく失敗ケースの多くは、Shopifyの機能不足が原因ではありません。
「BtoB特有の受注構造」を要件定義に組み込まずにスタートしたことが真因です。
具体的には、以下の構造的な違いを過小評価したまま構築を進めた結果、後から無理が生じます。
| 項目 | BtoC | BtoB |
|---|---|---|
| 価格 | 一律 | 顧客別掛率・数量別・契約価格が混在 |
| 決済 | 即時決済 | 掛売・与信・締め請求 |
| 受注単位 | 1点単位 | ロット・ケース・分納 |
| 例外処理 | 少ない | 日常的(納期変更・単価修正) |
| 基幹連携 | 軽い | 在庫・受注・請求のリアルタイム連携が必須 |
失敗パターン1:価格ロジックが破綻する
典型症状:「顧客から『見積書と画面の価格が違う』とクレームが来る」
Shopifyでもタグやアプリで顧客別価格は設定可能です。しかし、以下のような複合条件が重なると、設定が複雑化し表示不整合が発生します。
- 顧客ランク別の掛率(例:Aランク70%、Bランク75%)
- 商品ごとの個別契約単価(マスタ価格と異なる)
- 数量別価格(100個以上で5%引き)と契約価格の併存
- キャンペーン価格との優先順位
アプリで対応する場合、複数アプリの計算順序や優先ロジックが衝突し、「どのアプリが最終価格を決めているか分からない」状態に陥ります。
失敗パターン2:アプリ依存でランニングコストが膨張する
典型症状:「初期は月3万円のつもりが、1年後に月8万円超えていた」
BtoB要件を満たすために必要になる代表的なアプリ:
| 機能 | 月額目安(推測) |
|---|---|
| 卸向け価格管理 | $30〜$100 |
| 会員ランク・与信管理 | $20〜$80 |
| 見積書発行 | $15〜$50 |
| B2Bログイン制御 | $20〜$60 |
| 請求書払い | $30〜 |
※2025年時点の一般的な価格帯。アプリにより変動あり。
さらに、アプリ間の競合や、Shopify本体のアップデートによる不具合対応も発生します。「低コストで始められる」というShopifyの強みが、BtoBでは打ち消されるケースが多いのが実態です。
失敗パターン3:基幹システム連携が想定以上に重い
典型症状:「API連携の追加開発で初期費用が当初見積もりの1.5〜2倍になった」
BtoBでは以下の連携がほぼ必須です。
- 在庫のリアルタイム表示(複数倉庫対応)
- 受注データの基幹システムへの即時連携
- 請求データ・売掛管理との連携
- 顧客マスタ・与信枠の同期
ShopifyのAPIは整備されていますが、独自の業務フローや旧式の基幹システムに合わせ込むには、中間サーバー(iPaaSや独自開発)が必要になることが多く、結果として「Shopifyを選んだのに、周辺開発が肥大化する」逆転現象が起きます。
失敗パターン4:例外処理が”運用頼み”になり、電話が減らない
典型症状:「ECを入れたのに、結局Excel・電話・FAXが残っている」
BtoBの現場では、以下のような例外が日常的に発生します。
- ロット割れ対応(発注数を倉庫側で調整)
- 分納指示(1回の注文を複数回に分けて納品)
- 納期変更・前倒し依頼
- 後日の単価修正(値引き交渉後の遡及適用)
これらを標準機能でカバーできないと、結局「電話で確認 → 管理画面で手修正 → メールで報告」という運用が残ります。EC化の本来の目的である「受注業務の削減」が達成されません。
「うちはどのパターンに当てはまる?」
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失敗パターン5:拡張性の限界に気づくのが遅い
典型症状:「2年運用してから移行を検討したが、データ移行コストが新規構築並みになった」
初期は問題なくても、以下の変化に伴い管理負担が指数関数的に増えます。
- 取扱商品点数の増加(1,000点→5,000点)
- 取引先数の増加(50社→200社)
- 価格条件パターンの増加
気づいたときには、アプリ構成が複雑化しており、別プラットフォームへの移行コストが高額化しています。「最初の構築時に5年後の姿を想定していたか」が分岐点になります。
自社診断:Shopify向き?不向き?10項目チェック
以下のチェックリストで、3つ以上当てはまる場合はShopify以外の選択肢も含めて検討すべきです。
| # | 項目 |
|---|---|
| 1 | 顧客別の掛率が3段階以上ある |
| 2 | 商品ごとの個別契約単価がある |
| 3 | 数量別価格と契約価格が併存 |
| 4 | 掛売・与信管理が必須 |
| 5 | 分納・ロット指定が日常的にある |
| 6 | 基幹システム(販売管理・ERP)との連携が必須 |
| 7 | 複数倉庫の在庫を別々に管理 |
| 8 | 見積→受注→請求のワークフローが必要 |
| 9 | 後日の単価修正・値引き処理がある |
| 10 | 3年後に商品数・取引先数が2倍以上になる見込み |
Shopifyが適しているBtoB企業の特徴
誤解のないように補足すると、以下に該当する企業ではShopifyは有力な選択肢です。
- 価格体系がシンプル(全顧客同一価格、または2〜3パターン以内)
- 例外処理がほぼない(標準的な受注のみ)
- 基幹連携が軽い、またはShopifyを軸に業務を再設計できる
- 3〜6ヶ月でスピード立ち上げしたい
- BtoCも併売する(同一プラットフォームのメリットが大きい)
本当に考えるべきこと:プラットフォーム選定の前にやるべき診断
失敗を避ける最大のポイントは、プラットフォーム選定の前に「自社の受注構造を見える化」することです。
当社では、ShopifyありきでもパッケージありきでもなくBtoB-EC構築のご相談に対し、まず以下を整理します。
- 価格ロジックの棚卸(顧客別・商品別・数量別の条件)
- 例外処理の発生頻度と種類
- 基幹連携の必須要件
- 3〜5年後の事業拡張計画
この整理を経て初めて、Shopify・ebisumart・Bcart・スクラッチなど、最適な選択肢が見えてきます。
まとめ
ShopifyでBtoB-ECを構築して失敗するケースは、Shopifyの欠点ではなく、「自社の受注構造との適合性診断を省略したこと」が原因です。
- 価格ロジックの過小評価
- アプリ依存によるコスト膨張
- 基幹連携の軽視
- 例外処理の運用頼み
- 拡張性の見落とし
このいずれかに不安がある場合、構築を始める前にご相談ください。当社はプラットフォームを売る会社ではなく、御社のBtoB-EC構想を現実的に成立させるためのパートナーです。
投稿者プロフィール

- CEO
- 株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。
関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。
この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。
その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。
2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。
単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。
NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
■趣味・関心領域
BMW / WRC / ロードバイク / RIZIN / UFC / 大相撲
David Bowie / blur / MUSE / The Rolling Stones / XTC
機動戦士ガンダム(富野由悠季)
ベルセルク / 頭文字D / 進撃の巨人 / ジョジョの奇妙な冒険 / あしたのジョー
Mission: Impossible / Memento / ワイルド・スピード / ソナチネ
LOST / Game of Thrones / FRINGE / The Mentalist
上岡龍太郎 / ダウンタウン









