この記事でわかること
「Webのことは制作会社に丸投げ」——多くの企業がこの状態にあります。普段は問題なく回りますが、制作会社の倒産・対応悪化・担当者の交代といった事態が起きた瞬間、自社のサイトが立ち行かなくなります。本記事では、特定の制作会社に依存せず、発注側が主導権を持って運用する体制の作り方を、ドメインやサーバーなどの資産管理・契約・社内体制の3つの軸で具体的に整理します。
なぜ「依存しない体制」が必要なのか
制作会社への依存は、平時には何の問題も起こしません。問題が表面化するのは、以下のような「いざという時」です。
| 起きる事態 | 依存していると | 主導権があると |
|---|---|---|
| 制作会社が倒産・廃業する | 改修も保守も止まり、最悪サイトが消滅する | 別の会社に引き継いで継続できる |
| 制作会社の対応が悪化する | 不満があっても乗り換えられず、我慢し続ける | いつでも他社に切り替えられる |
| 料金が見合わなくなる | 言い値で払い続けるしかない | 相見積もりを取って判断できる |
| 担当者が辞める・連絡がつかない | 引き継ぎ情報がなく、何も進まない | 自社に情報があるため対応できる |
共通するのは、依存している状態では「選択肢がない」ということです。制作会社との関係が良好なうちは問題になりませんが、関係が崩れた瞬間、選択肢のなさが自社の弱みに変わります。依存しない体制とは、「いつでも別の選択肢を取れる状態」を平時から確保しておくことです。
制作会社が倒産すると実際に何が起きるのかを先に整理したい方は、制作会社が倒産するとWebサイトはどうなるかもあわせてご覧ください。
「依存している状態」とはどういう状態か
そもそも「依存している」とは具体的にどういう状態を指すのか。以下のいずれかに当てはまると、その制作会社に依存していると言えます。
- ドメインが制作会社の名義で、自社では管理画面にログインできない
- サーバーが制作会社の契約で、自社では契約内容を把握していない
- ソースコードが納品されておらず、制作会社しか持っていない
- サイトのデータ(受注・顧客情報)が制作会社のサーバーにしかない
- サイトがその制作会社しか扱えない独自システムで作られている
- 更新・修正のたびに必ず制作会社に依頼するしかなく、社内では何もできない
これらは「制作会社が良い会社かどうか」とは別の問題です。どんなに信頼できる会社でも、これらの状態にある限り、その会社の経営状況や方針変更に自社サイトの運命が左右されます。依存を解消するとは、これらを一つずつ「自社が主導権を持つ状態」に変えていくことです。
軸1:デジタル資産を自社で管理する
依存解消の土台は、サイトを構成する「デジタル資産」を自社の管理下に置くことです。これが最も重要です。
| 資産 | あるべき状態 | 確認・対処方法 |
|---|---|---|
| ドメイン | 自社名義で取得・管理。管理画面に自社でログインできる | 管理会社(お名前.com等)のアカウントを自社で保有。制作会社名義なら移管を依頼 |
| サーバー | 自社契約。契約内容・ログイン情報を自社が把握 | 相乗り契約なら自社契約への切り替えを検討。最低限どのサーバーかは把握 |
| ソースコード | 納品済みで自社が保有。最新版がいつでも取り出せる | 納品を依頼。Gitなどでバージョン管理されていれば理想的 |
| データ | 定期バックアップを自社の管理下にも保持 | バックアップの取得方法・保管場所を確立 |
| 各種アカウント | Google Analytics・Search Console・広告アカウント等を自社が保有 | 制作会社のアカウント配下でなく自社アカウントで管理 |
自社サイトの管理状況を確認したい方へ
ドメイン・サーバー・ソースコード・各種アカウントが今どうなっているかを整理するところからご相談いただけます。「何がどうなっているか分からない」状態でも問題ありません。
軸2:契約で主導権を確保する
資産の管理と並んで重要なのが、契約上の取り決めです。口約束や曖昧な契約は、いざという時に主導権を失う原因になります。
- 1
ソースコード・制作物の所有権を明記する
契約書に「納品物(ソースコード・デザインデータ等)の所有権が発注側に帰属する」ことを明記します。これがないと、制作会社が「ソースは渡せない」と主張できてしまい、他社への引き継ぎができません。新規発注時は契約段階で必ず確認してください。
- 2
ドメイン・サーバーの管理主体を契約で定める
「ドメインは発注側名義で管理する」「サーバーは発注側契約とする」ことを取り決めます。制作会社が代行管理する場合でも、名義と最終的な管理権限が発注側にあることを明確にしておきます。
- 3
契約終了時の引き継ぎ条件を決めておく
契約を終える際に「何を・どの形式で・いつまでに引き継ぐか」を事前に取り決めます。データのエクスポート・アカウント情報の移管・ドキュメントの提供など。終了時の条件を最初に決めておくと、円満に次へ移れます。
- 4
保守の対応範囲とSLAを明確にする
保守契約では「何に・どこまで・どのくらいの時間で対応するか」を明文化します。曖昧な「保守費用」だけの契約は、トラブル時に対応の押し付け合いになります。対応範囲が明確だと、その制作会社の働きを客観的に評価でき、乗り換え判断もしやすくなります。
軸3:社内に最低限の運用体制を持つ
すべてを制作会社に委ねるのではなく、社内にも最低限の運用知識と体制を持つことで、依存度を下げられます。専門家になる必要はありません。「何がどこにあるか」を把握している人が社内にいることが重要です。
| 持つべき体制 | 内容 | レベル感 |
|---|---|---|
| 資産の管理台帳 | ドメイン・サーバー・各種アカウントの一覧と、ログイン情報の保管場所を文書化 | 担当者が代わっても引き継げる形にする |
| 窓口担当者 | 制作会社とのやり取りを把握する社内担当を決める | 技術者である必要はない。状況を把握する役割 |
| 簡単な更新の内製化 | 文章修正・画像差し替え程度は社内でできる状態 | CMS(WordPress等)の基本操作レベル |
| 緊急時の連絡先リスト | サーバー会社・ドメイン管理会社・制作会社の連絡先を整理 | 制作会社以外の連絡先も押さえておく |
「依存しない」と「丸投げできる楽さ」の両立
ここまで読んで「結局、自社で全部やらないといけないのか」と感じたかもしれません。そうではありません。依存しない体制と、制作会社に任せる楽さは両立できます。
| 制作会社に任せること | 自社が握ること | |
|---|---|---|
| 日常の制作・改修 | ◎ 任せる(専門性が必要な部分) | — |
| 保守・技術対応 | ◎ 任せる | — |
| ドメイン・主要アカウントの名義 | — | ◎ 自社で握る |
| ソースコード・データ | — | ◎ 自社にも保持 |
| 資産の把握・管理台帳 | — | ◎ 自社で管理 |
つまり、専門的な作業は制作会社に任せつつ、「いざという時に主導権を取り戻せる根っこ」だけは自社が握る。これが理想形です。日々の運用は楽をしながら、依存はしていない。この状態を作ることが、この記事の目指すゴールです。
依存度セルフチェック
自社の現状を確認してください。「いいえ」が多いほど、特定の制作会社への依存度が高い状態です。次の項目に「いいえ」がある場合、その部分が制作会社依存の弱点になっている可能性があります。
- ドメインは自社名義で、管理画面に自社でログインできる
- サーバーの契約内容とログイン情報を自社で把握している
- サイトのソースコードが手元にある(または納品されている)
- サイトのデータのバックアップを自社でも持っている
- Google Analytics・Search Consoleが自社アカウントで管理されている
- ドメイン・サーバー・アカウントの管理台帳がある
- 制作会社とのやり取りを把握している社内担当者がいる
- 今の制作会社以外でも引き継げる技術で作られている
「いいえ」があった項目が、依存解消のために手を打つべきポイントです。すべてを一度に変える必要はありません。まずドメイン、次にバックアップとソースコード、という優先順位で進めてください。
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よくある質問
今の制作会社との関係は良好です。それでも依存解消の対策は必要ですか?
必要です。関係が良好なうちにこそ進めるべきです。関係が良好なら、ドメインの移管やソースコードの納品、管理情報の共有もスムーズに進みます。関係が悪化してから依頼すると、相手が協力的でなくなる可能性があります。依存解消は「今の制作会社を疑う」行為ではなく、「良い関係を続けるための土台作り」です。むしろ良い制作会社ほど、こうした申し出に快く応じてくれます。
社内にWebに詳しい人がいません。それでも運用体制は作れますか?
作れます。必要なのは技術力ではなく「何がどこにあるかを把握し、記録しておく」管理力です。ドメイン・サーバー・各種アカウントの一覧と、ログイン情報の保管場所を文書にまとめる。制作会社とのやり取りを把握する窓口を決める。これだけでも依存度は大きく下がります。専門的な作業は制作会社に任せたまま、管理の主導権だけを持つ形が現実的です。
ドメインの移管は難しい作業ですか?トラブルが心配です。
手順自体は確立されていますが、移管中はメールやサイトに影響が出ないよう注意が必要です。特にドメインでメールも運用している場合は、慎重な手順が求められます。不安な場合は、現在の制作会社や移管先の管理会社に相談しながら進めるのが安全です。重要なのは「移管が難しいから」と先送りにせず、まず自社名義になっているかの確認から始めることです。確認だけなら今すぐできます。
独自システムで作られたサイトは、依存解消できませんか?
完全には難しい場合もありますが、軽減はできます。まずソースコードとデータを確実に自社が保有すること。そのうえで、将来のリニューアル時には引き継ぎ可能な技術(広く普及したCMSやオープンソース)への移行を検討します。独自システムは、その制作会社しか扱えないという点で依存度が高くなりがちです。次にサイトを作り直す機会があれば、引き継ぎやすさも選定基準に加えることをお勧めします。
制作会社に任せきりの状態を整理したい方へ
デジタル資産の管理状況の確認・契約面の見直し・社内運用体制の整備——どこから手をつければいいか分からない段階でもご相談いただけます。特定の制作会社に縛られない、健全な運用体制づくりをお手伝いします。
投稿者プロフィール

- CEO
- 株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。
関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。
この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。
その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。
2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。
単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。
NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
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