BtoB-EC導入が現場任せで止まる理由|経営が推進者になる会社だけが成功する

BtoB-EC導入が現場任せで止まる理由|経営が推進者になる会社だけが成功するB2B-EC
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この記事でわかること
「現場から導入したいと声が上がっている」「営業部門で検討させている」「情シスに比較を任せている」——BtoB-EC導入のきっかけは多くが現場発です。しかし現場任せのまま進めると、高い確率でプロジェクトは途中で止まります。BtoB-ECは単なるシステム導入ではなく、業務構造と組織役割の再設計だからです。本記事では、なぜ現場任せでは止まるのか、経営は何をすべきかを構造的に整理します。

堀川 治(株式会社サンクユー 代表取締役)
「現場が前向きなのに進まない」という相談は少なくありません。原因は現場のやる気ではなく、進め方の構造にあります。部門をまたぐ調整・役割の変更・投資判断——これらは現場の権限では決められません。経営が動かなければ止まるのは、構造上の必然です。

なぜ現場任せ(ボトムアップ)では止まるのか

現場主導で進めると、構造的に避けられない問題が発生します。各部門が「自部門にとっての最適」で動くため、全社視点の意思決定ができないのです。

部門各部門が重視すること現場任せで起きること
営業自部門の受注処理の効率化営業の都合に最適化した要件になり、管理・経理の要件が抜ける
経理・管理与信・統制・リスク回避リスク懸念から慎重論が強くなり、議論が前に進まない
情シス技術的整合性・セキュリティ技術評価に終始し、業務変革の視点が抜ける
(不在)全社最適・優先順位誰も全体最適を決められず、議論が部門間で平行線になる

各部門は合理的に動いています。営業は営業の効率化を、管理部門はリスク回避を、情シスは技術整合を考える。問題は、これらをまとめて「全社としてどうするか」を決める人が現場にいないことです。

構造の問題:BtoB-ECは全社最適のプロジェクトです。にもかかわらず、現場任せにすると「部門最適の集合」にしかなりません。部門最適を足し合わせても全社最適にはならない。この構造的なずれが、プロジェクトを止める根本原因です。

経営主導でなければ進まない4つの理由

理由① 部門横断の調整が不可欠

BtoB-ECは複数の部門を横断します。受注フロー一つとっても、営業・受注業務・経理・情シスのすべてに関わります。

BtoB-ECの構成要素関わる部門
受注フロー・価格適用営業・受注業務
与信管理・請求連携経理・財務
価格統制・承認フロー経理・管理
基幹システム連携・セキュリティ情報システム

どこか一部門だけで完結する要素は一つもありません。部門間の利害が対立する場面も出てきます。営業は「早く使いたい」、経理は「統制を固めたい」、情シスは「セキュリティを確認したい」。この対立を調整できるのは、各部門の上位にいる経営層だけです。経営が方向性を示さなければ、調整は永遠に終わりません。

理由② 組織の役割変更を伴う

BtoB-EC導入は、業務のやり方だけでなく、人の役割を変えます。

  • 受注担当者の業務が減る(場合によっては配置転換が必要になる)
  • 営業の役割が「受注処理」から「提案」に変わる(評価軸の変更を伴う)
  • 管理部門の承認フローが再設計される(権限の見直しが必要になる)

これは「システムを入れる」話ではなく「組織を変える」話です。役割の変更・評価軸の変更・場合によっては人員配置の変更は、現場の判断では決められません。「受注担当の業務が減ったらその人をどうするのか」という問いに答えられるのは経営だけです。この問いを放置したまま現場で進めると、関係者の不安が膨らみ、抵抗が生まれます。

理由③ 経営課題の中での優先順位づけが必要

BtoB-ECは、他の経営テーマと並ぶ投資案件です。

  • 基幹システムの改修
  • 新規事業への投資
  • 人材採用・育成
  • 設備投資

これらと同列に「限られた経営資源(資金・人・時間)をどこに配分するか」という判断が必要です。トップが「今これをやる」と優先順位を示さなければ、BtoB-ECは「重要だが緊急ではない」案件として必ず後回しになります。現場は日々の業務に追われており、緊急性の低い変革プロジェクトを自発的に推進し続けることは構造的に難しいのです。

理由④ 投資判断は経営責任

BtoB-EC導入には、以下の判断が必要です。

  • ROI(投資対効果)の評価
  • 投資回収期間の判断
  • リスクの評価と許容
  • 将来拡張性を見越した投資範囲の決定

これらは数百万円規模の投資判断であり、部門レベルの権限を超えています。「この投資をする」という決断と、その結果への責任を負えるのは経営層だけです。現場が「導入したい」と思っても、投資の最終判断ができなければプロジェクトは前に進みません。

経営が推進者になることで変わること

経営がコミットして推進者になると、プロジェクトの進み方が根本的に変わります。

項目現場任せの場合経営が推進者の場合
方針「なぜ今やるか」が曖昧導入目的が明確になり、社内メッセージが統一される
部門調整利害対立で平行線トップの意思を背景に横断調整が加速する
優先順位後回しにされる経営課題として明確に位置づけられる
現場の不安「やらされ感」「先行き不安」が募る経営の本気度が伝わり、安心して取り組める
意思決定速度判断者不在で停滞経営が判断するため意思決定が速い

特に「現場の不安が軽減される」点は見落とされがちです。役割が変わる現場にとって、経営が本気で取り組む姿勢は最大の安心材料になります。「会社として進める」という明確なメッセージが、現場の抵抗を協力に変えます。

「トップダウン=現場無視」という誤解

「トップダウンで進める」と聞くと、「経営が決めて現場に押し付ける」と誤解されることがあります。これは違います。むしろ逆です。

経営が担うこと現場が担うこと
方向性「なぜやるか」「いつまでに」「どこを目指すか」を決める
優先順位・投資経営資源の配分・投資判断・リスク許容を決める
詳細設計受注フロー・価格ロジック・例外処理を現場の知見で設計する
運用取引先への移行・日々の運用を担う

経営が示すのは「方向性」と「投資判断」です。詳細設計は、業務を最もよく知る現場と一緒に作ります。現場を無視するのではなく、現場が動ける土台を経営が作る。これが正しいトップダウンです。方向性なき現場任せでも、現場無視の押し付けでもない。両者の役割分担が成功の条件です。

実務メモ
経営が「承認者」にとどまるか「推進者」になるかで結果が大きく変わります。「現場が持ってきたら承認する」という受け身の姿勢だと、現場は調整に疲弊してプロジェクトが失速します。経営が「これは会社としてやる」と旗を立て、部門間の対立を裁定する。この能動的な関与が、現場の推進力を生みます。

成功している企業の進め方

経営主導でBtoB-EC導入を成功させている企業には、共通した進め方があります。

  1. 1

    経営が導入目的を明確化する

    「なぜBtoB-ECを導入するのか」を経営が言語化します。受注処理の効率化なのか、人手不足への対応なのか、事業拡大の基盤なのか。目的が明確だと、その後の判断軸がぶれません。

  2. 2

    部門横断のプロジェクトチームを設置する

    営業・受注業務・経理・情シスから担当者を集めたチームを、経営の権限で正式に設置します。「片手間で検討」ではなく「正式なミッション」として位置づけることが重要です。

  3. 3

    段階導入計画を策定する

    一度に全部やろうとせず、フェーズ1から段階的に進める計画を立てます。投資とリスクを抑えながら、効果を確認して次に進む設計にします。

  4. 4

    KPIを設定し、定期レビュー体制を作る

    「何が達成されたら成功か」を数値で定義し、経営が定期的に進捗をレビューします。経営が継続的に関与し続けることで、プロジェクトが失速しません。

共通点は、トップが「承認者」ではなく「推進者」になっていることです。現場から上がってきた案を承認するだけでなく、経営自らが旗を振り、優先順位を示し、進捗を見続ける。この能動的な関与が成否を分けます。

よくある質問

現場から上がってきた案件を、経営はどう引き取ればいいですか?

現場の熱意を活かしつつ、経営が方向性と優先順位を引き取る形が理想です。具体的には「導入目的を経営として明文化する」「正式なプロジェクトチームを設置する」「投資判断のスケジュールを示す」の3点を経営が担います。現場が始めたことを取り上げるのではなく、現場が動ける土台を経営が整える、という引き取り方が現場の協力を得やすくなります。

経営層がITに詳しくない場合でも、推進者になれますか?

なれます。経営に求められるのはITの専門知識ではなく、経営判断です。「なぜやるか」の方向づけ、優先順位の決定、投資判断、部門間の調整——これらはITスキルではなく経営スキルです。技術的な詳細は情シスやベンダーが担います。経営は「会社としてこれをやる」という意思決定と、それを貫く推進力を担えば十分です。

中小企業で専任のプロジェクトチームを作る余裕がありません。

専任である必要はありません。重要なのは「誰が推進責任者か」を経営が明確にすることです。代表者自身が推進責任者を兼ねるケースも多くあります。少人数であっても「この人が責任を持って進める」という役割が明確で、経営がバックアップする体制があれば機能します。むしろ中小企業は意思決定が速い分、経営が直接関与しやすいという利点があります。

経営が推進しても現場が乗ってこない場合はどうすればいいですか?

現場が乗ってこない理由を確認することが先決です。多くの場合「自分の仕事がどう変わるか不安」「やらされ感がある」のいずれかです。前者は役割変化を具体的に示すことで、後者はプロジェクトに巻き込み当事者にすることで解消できます。経営が一方的に進めるのではなく、現場の不安を聞き、詳細設計に現場を参加させることが、協力を引き出す鍵になります。社内の反対意見への対応はこちらの記事も参照ください。

「経営主導で進めるべきか」の整理から支援します

導入目的の明確化・推進体制の設計・段階導入計画の策定——経営視点でのプロジェクト整理をお手伝いします。単なるシステム構築ではなく、経営プロジェクトとしての設計整理からご相談いただけます。

無料相談・経営主導の進め方を整理する

投稿者プロフィール

OSAMU HORIKAWA
OSAMU HORIKAWACEO
株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。

関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。

この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。

その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。

2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。

単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。

NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution

■趣味・関心領域
BMW / WRC / ロードバイク / RIZIN / UFC / 大相撲
David Bowie / blur / MUSE / The Rolling Stones / XTC
機動戦士ガンダム(富野由悠季)
ベルセルク / 頭文字D / 進撃の巨人 / ジョジョの奇妙な冒険 / あしたのジョー
Mission: Impossible / Memento / ワイルド・スピード / ソナチネ
LOST / Game of Thrones / FRINGE / The Mentalist
上岡龍太郎 / ダウンタウン

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