この記事でわかること
「営業は毎日忙しい。電話もメールも鳴り止まない。それでも売上は横ばい」——この状態には共通した構造があります。営業が忙しいのに成長しない会社では、営業の時間が「売上を創る活動」ではなく「受注を処理する作業」に奪われています。本記事では、なぜこの構造が生まれ、なぜ続いてしまうのか、そしてどう抜け出すかを整理します。
営業の時間配分を可視化してみる
多くのBtoB企業で、営業の1日は次のような業務で構成されています。これらを「売上を直接生む活動」と「処理・確認の作業」に分けてみてください。
| 営業の業務 | 分類 | 売上への直接貢献 |
|---|---|---|
| 注文受付(電話・FAX・メール) | 処理作業 | ✗ |
| 価格確認・在庫確認・納期回答 | 確認作業 | ✗ |
| 受注内容の入力・転記 | 処理作業 | ✗ |
| ミスの修正・クレーム一次対応 | エラー対応 | ✗ |
| 新規開拓・アポイント獲得 | 成長活動 | ◎ |
| 提案・アップセル・単価交渉 | 成長活動 | ◎ |
| 重点顧客の深耕・関係構築 | 成長活動 | ◎ |
一度、営業担当者に「先週、それぞれにどれくらい時間を使ったか」を記録してもらってください。多くの会社で、成長活動に使えている時間が想像以上に少ないことに気づきます。処理・確認・エラー対応で営業時間の40〜60%が消えているケースが少なくありません(当社ヒアリングによる体感値。業種・規模で大きく異なります)。
受注処理中心の営業が招く3つの成長阻害
① 新規開拓が止まる
受注処理に時間を奪われると、最初に削られるのが新規開拓です。既存顧客の受注対応は「待ったなし」ですが、新規開拓は「後回しにできてしまう」からです。
- アポイント獲得の電話をかける時間がない
- 新規訪問のスケジュールが組めない
- 市場調査・競合分析に手が回らない
結果として顧客構成が固定化します。既存顧客の発注に依存した売上構造になり、既存顧客の業績が傾けば自社の売上も連動して下がる、リスクの高い状態に陥ります。新規開拓の停止は、短期では問題が見えませんが、中長期で確実に成長を止めます。
② 単価向上の機会を失う
受注処理型の営業は「注文を正確に処理すること」が主業務になります。本来、受注のやり取りは単価を上げる絶好の接点ですが、処理に追われているとその機会を活かせません。
- 関連商品の提案ができない(「これも一緒にいかがですか」が言えない)
- 新商品・上位商品の紹介ができない
- 価格改定の交渉を切り出せない(原価上昇分を価格に転嫁できない)
特に価格改定の機会損失は深刻です。原材料費や人件費が上昇しても、価格交渉に踏み込む余裕がないために据え置きを続け、利益率が下がり続けるケースがあります。受注処理に追われている営業は、この交渉に踏み込む時間も精神的余裕も持てません。
③ 属人化が進み組織が脆くなる
受注業務を抱え込む営業は、顧客ごとの情報を個人で管理しがちです。
- 顧客ごとの特別単価・掛率
- 取引先ごとの特殊な対応ルール
- 過去の価格交渉の経緯
これらが担当者の頭の中・個人のメモ・個人のメール履歴にしか存在しない状態は、組織にとって大きなリスクです。担当者が退職すれば、これらの情報が一斉に失われます。引き継ぎに数ヶ月かかり、その間に取引先との関係が悪化することも珍しくありません。
なぜこの構造が続いてしまうのか
この構造が問題だと薄々気づいていても、多くの会社で放置され続けます。理由はシンプルです。
受注は処理できている。注文は捌けている。だから「問題ない」と認識される。しかし実際には、確認電話の往復・メールのやり取り・手入力の二重作業といった非効率が積み重なっています。
この非効率は、1件ずつ見れば「数分の作業」です。だから問題として認識されにくい。しかし年間で積み上げると、膨大な時間とコストになっています。「忙しさ」が問題を覆い隠している状態です。
もう一つの理由は、「処理業務をなくす方法がわからない」ことです。受注処理は必要な業務であり、なくすわけにはいかない。だから「営業が処理するのは当然」という前提のまま、改善の発想自体が生まれません。しかし、処理業務は「なくす」のではなく「営業以外の仕組みに移す」ことができます。
成長しているBtoB企業の営業は何が違うか
同じ業種・同じ規模でも、成長している会社の営業は時間の使い方が違います。
| 成長が止まっている会社 | 成長している会社 | |
|---|---|---|
| 受注処理 | 営業が手作業で処理 | 仕組み化・自動化されている |
| 価格管理 | 営業が個別に確認・適用 | システムで自動適用 |
| 在庫・納期確認 | 営業が都度確認して回答 | リアルタイムで共有・自動表示 |
| 営業の主活動 | 処理・確認・修正 | 提案・関係構築・戦略立案 |
| 顧客情報 | 担当者個人が管理(属人化) | 組織で共有(再現性あり) |
違いは営業個人の能力ではありません。処理業務を営業から切り離す仕組みがあるかどうかです。成長企業の営業が優秀なのではなく、営業が成長活動に集中できる構造を作っているのです。
「作業型」から抜け出す3つの道筋
営業を作業から解放するには、処理業務を「営業以外の仕組み」に移す必要があります。現実的な道筋は3つです。
- 1
受注処理の担当を営業から分離する
受注処理を専任の事務担当に集約する方法です。営業は提案に集中できますが、処理担当の人件費が増えます。また、属人化した価格・特殊対応の情報を事務担当に引き継ぐ必要があり、その整理が課題になります。短期的には有効ですが、根本的な効率化にはなりません。
- 2
受注業務そのものを仕組み化・自動化する
取引先が自分で注文を入力し、価格が自動適用され、在庫・納期がリアルタイムで表示される仕組みを作る方法です。受注処理の工数そのものを削減できるため、人を増やさずに営業を解放できます。BtoB-ECがこの役割を担います。
- 3
業務フローを整理し、無駄な確認・修正を減らす
システム導入の前に、現在の受注フローを見直すだけでも一定の改善ができます。確認電話が多発する原因、ミスが起きる箇所、二重入力が発生する工程を特定し、フロー自体を改善する。これは①②と組み合わせることで効果が高まります。
このうち、人を増やさずに根本的な効率化を実現できるのが②です。受注業務をWeb化・自動化することで、営業を処理作業から解放しつつ、人件費を増やさずに対応できます。営業の役割が具体的にどう変わるかについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
1日1時間の削減が売上構造を変える
受注処理を削減した時間が、どれだけのインパクトを持つかを試算してみます。
| 項目 | 試算 |
|---|---|
| 1日あたりの受注処理削減時間 | 1時間 |
| 年間営業日 | 約240日 |
| 年間の創出時間(1人あたり) | 約240時間 |
| 営業3名の場合 | 年間約720時間 |
| この時間を新規開拓・提案に使うと | 新規商談・アップセル提案の件数が大幅に増加する |
年間720時間は、新規開拓・重点顧客フォロー・アップセル提案に充てられる時間です。この時間が売上に変換されれば、売上構造そのものが変わります。「忙しさ」を「成果」に変えるとは、この時間の使い方を変えることです。
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よくある質問
営業の時間配分を可視化したいのですが、どう計測すればいいですか?
厳密な計測でなくても傾向はつかめます。営業担当者に1週間、業務を「受注処理・確認」「移動」「提案・開拓」「その他」の4分類でざっくり記録してもらうだけで十分です。15分単位の記録でも、1週間続けると「何に時間を使っているか」が見えてきます。完璧な計測より、まず傾向を把握することが目的です。記録した結果、処理・確認が大きな割合を占めているなら、構造改善の余地があります。
受注処理を事務担当に移すのと、システム化するのはどちらがいいですか?
規模と成長見込みによります。受注件数が少なく今後も大きく増えない場合は、事務担当への集約で対応できることもあります。一方、受注件数が多い・今後増える見込みがある・属人化した価格情報が多い場合は、システム化(BtoB-EC)の方が根本的な解決になります。事務担当への集約は人件費が増え続けますが、システム化は初期投資後の追加コストが小さい。中長期のコストで比較することを推奨します。
時間を削減しても、営業がその時間を有効に使えるか不安です。
正当な懸念です。時間を創出するだけでは売上は増えません。「創出した時間を何に使うか」を組織として設計することが必要です。具体的には、新規開拓の目標件数を設定する、重点顧客フォローの計画を立てる、提案活動を評価指標に組み込むなど。時間の創出(処理業務の削減)と、時間の活用(成長活動の設計)はセットで取り組む必要があります。どちらか一方では成果につながりません。
営業の時間がどこに消えているか、可視化から始めませんか
受注処理に奪われている時間の計測・業務フローの見直し・仕組み化の方向性——「忙しいのに伸びない」構造から抜け出す第一歩をお手伝いします。営業組織の現状整理からご相談いただけます。
投稿者プロフィール

- CEO
- 株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。
関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。
この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。
その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。
2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。
単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。
NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
■趣味・関心領域
BMW / WRC / ロードバイク / RIZIN / UFC / 大相撲
David Bowie / blur / MUSE / The Rolling Stones / XTC
機動戦士ガンダム(富野由悠季)
ベルセルク / 頭文字D / 進撃の巨人 / ジョジョの奇妙な冒険 / あしたのジョー
Mission: Impossible / Memento / ワイルド・スピード / ソナチネ
LOST / Game of Thrones / FRINGE / The Mentalist
上岡龍太郎 / ダウンタウン








