「フルスクラッチの方が自由度が高いのではないか」「パッケージでは自社の業務に合わないのではないか」── BtoB-EC構築を検討する企業様から、こうしたご相談をいただくことがあります。
この記事では、パッケージ型BtoB-ECとフルスクラッチの違いを整理したうえで、どのような企業にどちらが向いているのか、費用や保守の観点も含めた判断基準を解説します。
目次
まず整理したい パッケージ型とフルスクラッチの違い
BtoB-ECの構築方式は、大きく分けると次の2つに整理できます。
パッケージ型
EC-CUBEなどの既存ECパッケージをベースに構築する方法です。標準機能を活かしつつ、自社に必要な部分だけをカスタマイズしていきます。
フルスクラッチ
既存パッケージを使わず、要件に合わせてゼロから設計・開発する方法です。自由度は高い一方で、仕様の整理から開発・保守まですべて自社要件に合わせて作り込む必要があります。
両者の違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | パッケージ型 | フルスクラッチ |
|---|---|---|
| 初期費用の目安 | 数百万円〜1,500万円前後 | 1,500万円超〜数千万円規模 |
| 構築期間の目安 | 3〜6ヶ月程度 | 9〜18ヶ月程度 |
| 自由度 | 標準機能とカスタマイズの範囲内 | 高い(仕様は自社で定義) |
| 保守性 | パッケージのコミュニティ・ベンダーを活用しやすい | 開発会社や体制への依存が強くなりやすい |
| 機能追加 | プラグインや部分改修で対応しやすい | 設計から必要になることが多い |
| セキュリティ対応 | パッケージ側の更新を活用しやすい | 個別に継続対応が必要 |
上記の費用は、商品点数・基幹システム連携の範囲・承認フローの有無などにより大きく変動します。あくまで一般的な目安としてご理解ください。
どちらが優れているかではなく、自社の業務構造、体制、将来計画に合っているかどうかが判断のポイントです。
費用は初期金額だけで判断しない方がよい
BtoB-ECは、初期費用だけを見て判断してしまうと、後から想定外の負担が出ることがあります。特にフルスクラッチでは、開発費だけでなく、公開後の保守・軽微な改修・機能追加・セキュリティ対応まで含めて考える必要があります。
そのため構築方式を比較する際は、初期費用ではなく、数年間運用した場合の総コスト(TCO)で考えることが重要です。
中堅規模のBtoB-EC案件で、要件や連携範囲によって大きく変わる前提ですが、一般的には次のような傾向があります。
- パッケージ型は、初期費用を比較的抑えやすい
- フルスクラッチは、初期費用が大きくなりやすい
- フルスクラッチは、公開後の改修や保守でもコスト差が広がりやすい
- 5年単位で見ると、両者の総コストには大きな開きが出ることがある
つまり、フルスクラッチを選ぶ場合は「最初に作れるか」だけでなく、5年後、10年後まで運用し続けられるかまで見ておく必要があります。費用相場やTCOの考え方については、BtoB-EC構築の費用相場でも詳しく解説しています。
▼ 構築方式で迷っている方へ
自社の要件ならパッケージ型で十分か、
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商品数・受注フロー・基幹連携要件をヒアリングし、無理にどちらかを勧めることなく、自社に合った進め方を整理してご提案します。
※ご相談は無料です。ご相談だけで終了しても費用は発生しません。
フルスクラッチが向いているケース
フルスクラッチが不要というわけではありません。次のようなケースでは、フルスクラッチの方が適していることがあります。
- 1
業務そのものが競争力になっている
独自の受注フロー、特殊な価格計算、複雑な承認プロセスなど、その仕組み自体が事業の強みになっている場合です。一般的なパッケージでは表現しきれないことがあります。
- 2
社内に継続的な開発・保守体制がある
フルスクラッチは作って終わりではなく、公開後も改善・改修・保守を続ける必要があります。社内に継続的な技術体制があることは大きな前提になります。
- 3
取引規模や処理量が非常に大きい
大規模な取引量や特殊な負荷要件があり、一般的なパッケージの前提を超える場合は、独自設計の方が合理的なことがあります。
フルスクラッチで失敗しやすい典型パターン
一方で、フルスクラッチを選んだことで運用が苦しくなるケースもあります。よくあるのは次のようなパターンです。
- 最初の見積より大幅に膨らみ、初期予算を超過する
- 要件が途中で変わり、開発が長期化する
- 公開後の改修費が毎回高額になり、改善が止まる
- 開発担当者や開発会社への依存が強くなり、属人化する
- セキュリティ対応や保守の負担が重くなる
- 数年経って手を入れにくいシステムになってしまう
フルスクラッチの問題は、開発時よりも公開後に表面化しやすい傾向があります。最初は理想的に見えても、運用を続けるうちに小さな修正すら重くなることがあります。
多くの企業にとっての”第三の選択肢”
BtoB-ECのご相談を受けていると、最初はフルスクラッチを想定していても、要件を整理していくと、パッケージ型をベースに必要な部分だけをカスタマイズする方法で十分なケースが多くあります。
A:完全パッケージ
標準機能のみで運用
- 初期費用を最小化
- 独自業務に合わない場合あり
- 差別化は難しい
B:現実的な選択肢
パッケージ + 部分カスタマイズ
- 標準機能を活かして初期費用を抑える
- 差別化したい領域だけ独自対応
- 保守と将来拡張のバランスが取りやすい
この方式のメリットは次のとおりです。
- 標準機能を活かせるため、初期費用を抑えやすい
- 差別化したい部分だけ独自対応できる
- 公開後の改修や保守がしやすい
- 将来的な機能追加にも対応しやすい
価格ロジック、承認フロー、基幹連携など、本当に差別化したい部分だけを調整する考え方は、BtoB-ECとは相性が良い進め方です。カスタマイズの範囲を決める考え方については、BtoB-ECのカスタマイズ範囲の決め方もあわせてご覧ください。
判断を誤らないための3つの視点
フルスクラッチか、パッケージ型かで迷ったときは、次の3つの視点で整理すると判断しやすくなります。
視点1:何が自社の競争力なのか
商品力や営業力が強みなのか、システムそのものが強みなのかを整理します。システムが競争力の中心でなければ、過度な作り込みは不要なことがあります。
視点2:要件をどこまで明文化できているか
フルスクラッチは、要件が曖昧なまま進めると後戻りが大きくなります。要件が今後も変わりそうな場合は、柔軟に調整しやすいパッケージ型の方が向くことがあります。
視点3:公開後も維持できる体制があるか
作ることだけでなく、運用し続けられるかが重要です。保守体制が弱い場合は、フルスクラッチの自由度がかえって負担になることがあります。
自社診断のためのチェックポイント
自社で構築方式を考えるときは、次のような項目を確認してみてください。
- 業界でも珍しい独自の受注フローがあるか
- 価格計算や承認ロジックが極端に複雑か
- 専属の技術体制を持てるか
- 運用・保守の予算を継続的に確保できるか
- 要件をかなり明確に定義できるか
- パッケージ型をベースにした場合の代替案を十分検討したか
複数当てはまる場合は、フルスクラッチも含めて比較検討する余地があります。ただし、開発体制や保守面の見通しが立っていない場合は、慎重に判断した方が安全です。
よくある質問
Q
パッケージ型では独自の業務フローに対応できないのでは?
+
Q
フルスクラッチの方が自社資産になるのでは?
+
Q
EC-CUBEのようなパッケージを使っても、十分に差別化できますか?
+
Q
SaaS型とパッケージ型はどう違うのですか?
+
Q
どこに相談すれば中立的に判断できますか?
+
▼ まとめ
方式ありきで決めるのではなく、
要件、体制、将来計画を整理して判断することが大切です
BtoB-ECを構築するとき、自由度だけを理由にフルスクラッチを選ぶのは慎重に判断したいところです。
多くの企業にとっては、パッケージ型をベースに必要な部分だけをカスタマイズする方法が、費用と柔軟性のバランスを取りやすい現実解になります。
一方で、本当にフルスクラッチが必要な企業もあります。ヒアリングのうえで、自社に合った進め方を整理してご提案します。
※ご相談は無料です。フルスクラッチが適切な場合はその旨を率直にお伝えします。









