BtoB-ECを作り直した会社がやっていた5つのミス|再構築に至る原因と回避策

BtoB-ECを作り直した会社がやっていた5つのミス|再構築に至る原因と回避策B2B-EC
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この記事でわかること
「思ったより業務が減らない」「価格設定の管理が限界に来た」「基幹との連携が綻びてきた」——BtoB-ECを動かして2〜3年後にこうした声をよく聞きます。最終的に「一度作り直すしかない」という判断に至る。ただし再構築は初期構築より難しく、費用も高い。なぜそうなるのか。原因は5つのパターンに収束します。

堀川 治(株式会社サンクユー 代表取締役)
「作り直したい」という相談を受けるたびに、原因を整理してきました。案件ごとに事情は違いますが、根っこにある問題は驚くほど似ています。本記事ではその共通パターンと、回避に必要な視点を整理します。

再構築がなぜ高コストになるのか

BtoB-ECの再構築は、初期構築の単純な繰り返しではありません。既存システムが稼働中である点が、すべての難易度を上げます。

  • データ移行:稼働中に蓄積された受注・顧客・在庫データを新システムへ移行する。データが汚れていると、クリーニングだけで数百万円規模になることがある
  • 並行稼働:旧システムを止められないため、新旧並行期間が発生する。この間の業務負荷は通常の1.5〜2倍になる
  • 取引先への再説明:既存取引先に操作変更の案内・再トレーニングが必要になる。BtoB特有の「相手先の業務に踏み込む」負荷がある
  • 再設計費用:前回の失敗を踏まえた上で設計し直すため、初期構築より要件整理に時間がかかる

これらを合算すると、再構築の総費用は初期構築の1.5〜3倍になるケースが多い(推測値。案件の複雑さにより大きく異なります)。

注意:再構築の相談が来る時点では、旧システムへの不満が限界に達しています。「もう少し運用で頑張る」という選択肢が消えているため、交渉力が弱い状態で発注せざるを得ない。結果として費用が高くなりやすい構造があります。

再構築に追い込まれる5つのパターン

パターン1:現行業務をそのままWeb化した

最も多い原因です。「FAXや電話でやっていたことをWebフォームに置き換える」という発想で構築した結果、こうなります。

  • Web注文を受けた後に、電話で内容確認が必要
  • 管理画面で手修正しないと処理が進まない
  • 受注データをERP用に加工してから二重入力する

これは「ECが業務に追加された状態」であって、業務が効率化された状態ではありません。

なぜこうなるかというと、現行業務の中に「暗黙のルール」「例外処理」「担当者の判断」が大量に含まれているからです。それらを整理せずにWebに乗せると、Webで受けた後に人が補完し続ける構造になります。

回避策:構築前に「受注フロー・価格ロジック・例外処理」を書き出す作業が必須です。この整理が不十分なまま要件定義に進むと、後から「聞いていなかった処理」が次々と出てきます。

パターン2:価格ロジックを後回しにした

BtoB-ECの設計でもっとも難しいのは価格です。導入時は「A社は定価の80%、B社は85%」という単純な掛率管理で回っていても、事業が続くとこうなります。

  • 数量ブレイクによる段階単価(50個以上は○%引き、100個以上はさらに○%引き)
  • 期間指定キャンペーン価格(特定期間だけ単価を変える)
  • 商品グループ×顧客グループのマトリクス割引
  • ERPにしか存在しない特例単価(営業が個別交渉した価格)
  • 定期発注契約における固定単価

標準機能の割引設定で「なんとか運用」し続けると、Excelで補正→担当者依存→退職で引き継ぎ不能、というパターンに陥ります。

価格ロジックはデータ構造の根幹に関わります。後から変えようとすると、ECシステム全体の再設計が必要になることがあります。

パターン3:基幹連携を「将来対応」にした

「まずはEC単体でスタートして、連携は後から」という判断は理解できます。ただし、後から連携しようとした時に以下の問題が出てきます。

  • ECシステムのデータ構造が基幹と合っておらず、マッピング作業だけで大規模な工数が発生する
  • API連携を前提にしていないEC設計だったため、双方のシステムに大規模改修が必要
  • CSV連携で回していた結果、データの鮮度が不十分で在庫誤差・受注ミスが増える

「後からつなげばいい」が成立するのは、最初から「つながる前提」で設計されている場合だけです。

実務メモ
当社が扱う案件では、初期からAPI連携が難しい場合でもデータ構造だけは「連携できる形」で設計しています。CSV連携から始めてもAPI連携に切り替えられる余地を残す。この差が2〜3年後のコストに直結します。

パターン4:拡張前提の設計をしなかった

導入時は取引先50社・商品500点・価格パターン10種類だったものが、3年後に取引先150社・商品2,000点・価格パターン50種類になる。これは珍しいことではありません。

この変化に対応できない設計の典型が以下です。

  • 価格パターンが増えるたびに開発が必要になる(設定で対応できない構造)
  • 権限設計が「管理者か一般ユーザーか」の2択しかなく、部署別・支店別に対応できない
  • 商品マスタの構造が単純すぎて、バリエーション管理や複数カテゴリ管理に対応できない
  • パフォーマンスが商品数・注文数増加に耐えられない

これらは「追加でプラグインを入れれば解決する」問題ではなく、設計の根幹に関わります。パッチを当て続けた結果、一定規模で全体の整合性が取れなくなるのがこのパターンの末路です。

パターン5:BtoB未経験ベンダーに依頼した

費用や実績・提案力だけでベンダーを選んだ結果、BtoB特有の構造が設計に反映されていないケースがあります。

確認観点BtoB経験が浅いベンダーに起きがちなこと
価格ロジック「顧客別単価はプラグインで対応できます」と言うが、将来の複雑化を想定していない
基幹連携「CSV連携で対応します」で終わる。API設計の議論が出てこない
受注フローBtoCの発想で設計するため、与信・承認フロー・掛売りの概念が設計に入っていない
要件定義業務フロー整理より先に「機能一覧」の話になる。現行業務の例外処理を掘り下げない

設計力の不足は、リリース直後ではなく1〜2年後に表面化します。その時点では担当者が変わっていることも多く、「なぜこの設計になったのか」が追えないまま再構築の議論になります。

「うちは大丈夫か」のチェックポイント

現在稼働中のBtoB-ECが再構築リスクを抱えていないかを確認する目安です。

  • Web注文後に電話や手作業で内容確認・修正が発生している
  • 価格設定の管理をExcelで補完している、または特定の担当者しか対応できない
  • 基幹システムとEC間でデータを手動加工して受け渡している
  • 取引先から「使いにくい」「間違えやすい」という声が続いている
  • 新しい価格条件・商品カテゴリ・取引形態が出るたびに開発費が発生する
  • ベンダーの保守対応が遅い、または費用感が合わなくなってきた

3項目以上該当する場合、現状のシステムが限界に近づいているか、すでに限界を迎えている可能性があります。

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「再構築すべきか、改修で対応できるか」——この判断を誤ると費用が無駄になります。現状のシステムを見た上で、選択肢と優先順位を整理するセカンドオピニオンをご利用ください。

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再構築を回避するための4つの視点

これから構築する場合、または現在の設計を見直す場合に確認すべき視点です。

  1. 1

    受注構造を可視化してから設計に入る

    「現状の受注フロー」「価格ロジックの全パターン」「例外処理の一覧」を書き出す。これが不十分なまま要件定義に入ると、後から”聞いていなかった処理”が次々と出てきます。この作業にかける時間を惜しんだベンダーは要注意です。

  2. 2

    3年後の規模を仮定して設計する

    取引先数・商品数・価格パターン数・1日の注文件数が現状の2〜3倍になった場合でも耐えられるか。この問いをベンダーに投げて、具体的な答えが返ってくるかを確認します。「大丈夫です」だけでは不十分です。

  3. 3

    「標準機能で対応」の範囲を明確にする

    「標準機能でできます」は「今のパターンなら標準機能で対応できます」という意味であることが多い。将来の複雑化に対して標準機能で対応できる範囲はどこまでか、カスタマイズが必要になる境界線はどこかを、構築前に確認します。

  4. 4

    開発より設計に時間とお金をかける

    BtoB-ECの成否は設計段階でほぼ決まります。「早く安く作る」ベンダーより「設計に時間をかけるベンダー」の方が、長期的なコストは低くなるケースが多い。初期費用を削るために設計を省略したツケが、2〜3年後の再構築費用として返ってきます。

よくある質問

再構築か改修かの判断基準はありますか?

データ構造の根幹(価格テーブルの持ち方・顧客管理スキーマ・受注フローの設計)に問題がある場合は、改修では対応できず再構築が現実的な選択になります。一方、権限ロールの追加・API連携の追加・フロントUI改善程度であれば、既存システムへの追加対応で解決できるケースも多くあります。現状システムを診断した上での判断が必要です。まずはご相談ください。

再構築の費用はどのくらいかかりますか?

規模・複雑さ・データ移行量によって大きく異なります。目安として、初期構築費用の1.5〜3倍になるケースが多い(あくまで当社の体感値です)。データ移行が複雑な場合や、基幹連携の設計変更が伴う場合はさらに高くなります。費用の見積もりについてはBtoB-EC構築費用の記事も参照ください。

現行ベンダーに再構築を依頼すべきか、別のベンダーに変えるべきか?

現行の問題がベンダーの設計力に起因する場合(パターン5)は、同じベンダーへの依頼は再度同じ問題を生むリスクがあります。運用面の問題(コミュニケーション・対応速度・費用感)であれば、引き継ぎのコストを考慮した上で判断してください。「現行ベンダーに問題があるかどうか」の評価として、セカンドオピニオンを活用する企業が増えています。

「作り直し」を避けるために最初にやるべきことは何ですか?

受注構造の可視化です。現在の受注フロー・全価格パターン・例外処理を書き出す作業を、ベンダーと一緒にやるか、ベンダー選定前に自社でやるかは問いません。「何をWebに乗せるか」が明確でないまま構築に入ることが、後の再構築の最大の原因です。この整理を丁寧にやるベンダーかどうかが、ベンダー選定の重要な指標になります。

「再構築か改修か」——まず現状診断から始めます

稼働中のBtoB-ECが限界に近づいているかどうか、再構築が必要かどうか。現状のシステムを見た上で、選択肢と優先順位を整理します。構築提案は一切せず、診断とアドバイスに特化した相談も承っています。

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投稿者プロフィール

OSAMU HORIKAWA
OSAMU HORIKAWACEO
株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。

関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。

この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。

その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。

2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。

単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。

NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution

■趣味・関心領域
BMW / WRC / ロードバイク / RIZIN / UFC / 大相撲
David Bowie / blur / MUSE / The Rolling Stones / XTC
機動戦士ガンダム(富野由悠季)
ベルセルク / 頭文字D / 進撃の巨人 / ジョジョの奇妙な冒険 / あしたのジョー
Mission: Impossible / Memento / ワイルド・スピード / ソナチネ
LOST / Game of Thrones / FRINGE / The Mentalist
上岡龍太郎 / ダウンタウン

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