この記事でわかること
EC-CUBEで掛け払い(売掛)を利用できる会員を限定し、注文画面に表示する支払方法を切り替えたカスタマイズ事例を紹介します。実際の設定画面とともに、利用許可・停止の反映、法人内に複数会員がいる場合の扱い、与信審査や請求管理との違いを整理します。
会員ごとの掛け払い設定で決めるのは、「その会員が注文時に掛け払いを使えるか」です。請求書の発行や未入金の管理まで、同じ設定だけで完結するわけではありません。
掛け払いの利用許可と、標準の支払方法設定を分ける
BtoB-ECや卸売サイトでは、取引先との契約に応じて、掛け払い、銀行振込、代金引換などの支払方法を用意します。すべての取引先を同じ条件にするとは限らず、「社内で承認した取引先だけ掛け払いを利用できるようにしたい」という運用もあります。
本記事では、商品代金を後日支払う取引を購入者側から「掛け払い」、販売者側の支払方法名として「売掛」と表記します。締日・支払日や請求のまとめ方は、取引先との契約に合わせて別途決めます。
確認したEC-CUBE 4.3.1-p1版の公式マニュアルでは、支払方法の名称・手数料・購入金額に関する利用条件を設定し、配送方法にも利用する支払方法を関連付ける構成です。これらの設定と、「この会員には売掛を許可する」という会員別の条件は分けて確認します。
会員別の利用許可に対応する機能がすでにあるか、追加のカスタマイズが必要かは、EC-CUBEのバージョン、利用中のプラグイン、既存改修によって変わります。
参照:EC-CUBE公式マニュアル「支払方法設定」/「配送方法設定」
会員ごとに売掛の利用可否を切り替えた事例
サンクユーでは、EC-CUBEの会員管理に「売掛による決済を可能にする」という設定項目を追加しました。管理画面でこの項目を切り替えると、注文画面に表示する支払方法が変わります。
以下は過去の個別カスタマイズの画面です。現在のEC-CUBEの標準画面や、すべてのバージョンに共通する機能として紹介しているものではありません。
OFFの場合:銀行振込と代金引換を表示
設定がOFFの会員には、売掛以外の支払方法を表示します。この卸売サイトでは、銀行振込と代金引換を選べる仕様です。


ONの場合:売掛だけを表示
設定がONの会員には、売掛を表示します。この事例では売掛のみを選べるようにし、銀行振込と代金引換は非表示にしています。


確認できる実装内容は、この会員別の設定項目と支払方法の出し分けです。以降では、同様の仕組みを導入・改修する際に決めておきたい運用と設計のポイントを説明します。
掛け払いだけにするか、ほかの支払方法も選べるようにするか
掛け払いを許可した会員に、どの支払方法を表示するかは業務に合わせて決めます。掲載事例のように売掛だけにする方法のほか、掛け払いとほかの支払方法を併用する設計も検討できます。
| 表示する支払方法 | 想定する運用 | 確認すること |
|---|---|---|
| 掛け払いのみ | 承認済み取引先の注文を、契約した請求条件に揃える | 掛け払いを停止した場合の案内と、例外的に別の方法で受け付ける手順 |
| 掛け払いとほかの支払方法 | 注文ごとに購入者が支払方法を選ぶ | 請求書へまとめる注文の範囲と、ほかの方法で支払った注文の除外 |
会員に掛け払いを許可していても、配送方法や購入金額など、ほかの利用条件を無視して表示する設計にはしません。条件を組み合わせた結果、選べる支払方法がなくなる場合の案内も必要です。
支払方法を変えると手数料などが変わる場合は、合計金額を確認し直せるようにします。購入者が選んだ方法と、受注データ・メール・帳票に記録される方法が一致することも確認します。
利用許可・停止を注文確定まで反映する
会員画面の設定だけでなく、誰が許可を変更し、どの注文から反映するかを決めます。ここで挙げる内容は、掲載事例ですべて実装済みという意味ではなく、導入時に確認する項目です。
新規会員の初期状態と、承認・変更の担当者を決める
社内承認後に掛け払いを許可する運用なら、新規会員は利用不可を初期状態とし、確認が済んだ後に許可する流れにします。会員登録が完了したことと、掛け払いの承認が済んだことは区別します。
営業担当者・経理担当者など、承認する人と実際に設定を変更する人を整理します。変更権限を持つ担当者の範囲、変更日時・変更者・理由の記録が必要かも確認します。
注文手続き中の停止と、確定済み注文を分ける
購入者が売掛を選んだ後、注文を確定するまでの間に利用許可が変更される場合があります。画面で選択肢を隠すだけでなく、注文を受け付けるサーバー側でも、確定時の利用許可と支払条件を確認する設計が必要です。
利用できなくなった場合は、別の支払方法を選び直すか、問い合わせを案内します。購入者への説明なしに支払方法だけを置き換えず、手数料や合計金額が変わる場合は改めて確認してもらいます。
一方、利用停止前に確定した注文や未入金の請求は、新しい注文への制限とは別に扱います。会員の設定をOFFにしただけで、過去の注文の支払方法や請求内容が自動的に変わる設計にはせず、受注変更が必要な場合は担当者が対象を確認できる手順を整えます。
法人内の複数会員と、管理画面・CSV・APIからの受注を確認する
同じ法人に購買担当者が複数いる場合、会員単位の設定だけでは許可状態が揃わないことがあります。法人単位で承認・停止するなら、取引先法人と会員を結び付ける情報を持ち、担当者の追加・退職時にも同じ条件を適用できる仕組みを検討します。
法人共通の条件と担当者ごとの例外を設ける場合は、どちらを優先するかも決めます。今回の事例は会員ごとの出し分けであり、法人単位の一括管理まで実装済みとはしていません。
FAX・メール受注を管理画面で登録したり、CSV・APIで取り込んだりする運用がある場合は、それぞれの経路でも同じ利用条件を確認できるかを調べます。担当者が例外として売掛注文を登録できるなら、その権限と記録を含めて整理します。
与信審査・限度額・請求管理と分けて設計する
売掛を利用できる会員を限定することは、承認した取引先だけに支払方法を提示するための仕組みです。それだけで代金回収を保証したり、取引上のリスクをなくしたりするものではありません。
| 機能・業務 | 決める内容 | 会員別の利用許可との関係 |
|---|---|---|
| 掛け払いの利用許可 | 誰が掛け払いで注文できるか | 本記事のカスタマイズ事例が扱う範囲 |
| 与信審査・限度額管理 | 取引を承認する基準、利用可能額、停止・再開の判断 | 許可設定へ反映する判断や金額判定を別途設計する |
| 請求書発行・入金管理 | 請求対象、締日・支払日、入金消込、未入金時の対応 | 注文の支払方法を引き継ぐ先と、担当するシステムを確認する |
1回の注文金額による利用条件と、取引先全体の未入金残高を踏まえた与信限度額は別です。限度額を管理する場合は、どの受注・請求・入金を集計対象とし、いつ利用可能額へ反映するかを決めます。
複数会員やFAX・メールなどから同時に注文が入る場合は、法人単位で合算する範囲と、注文確定時の確認方法も必要です。単純に会員のON・OFFを見るだけで限度額管理まで行える、とは考えないようにします。
自社で売掛を管理するのか、外部の決済サービスを使うのかによっても役割が変わります。利用中の基幹システムや決済サービスが管理する範囲を確認し、EC側に必要な表示・判定・連携を整理します。
掛け払い・売掛設定の相談前に整理したいこと
「会員ごとに売掛をON・OFFにしたい」という要望に加え、現在の承認・受注・請求の流れを確認すると、対応範囲を具体的にできます。
- EC-CUBEのバージョン、会員・決済に関係するプラグインと既存カスタマイズ
- 掛け払いを許可する単位が、会員・法人・支店のどれか
- 承認済み会員に掛け払いだけを表示するか、ほかの支払方法も残すか
- 新規会員の初期状態、承認・停止・再開の担当者と反映のタイミング
- 注文手続き中の変更、確定済み注文、管理画面やCSV・APIからの受注の扱い
- 与信限度額の管理、請求書発行、入金消込を行うシステムと連携の必要性
サンクユーでは、取引条件と受注業務の整理から、EC-CUBE構築・カスタマイズ、BtoB-EC構築までご相談に対応しています。現在の運用を確認し、会員別の出し分けで対応する範囲と、追加の管理・連携が必要な範囲を検討します。
掛け払い・売掛設定に関するよくある質問
EC-CUBEで特定の会員だけ掛け払いを利用できるようにできますか?
サンクユーでは、会員管理に売掛の利用可否を設定する項目を追加し、注文画面の支払方法を切り替えた事例があります。掲載事例では、許可しない会員には銀行振込と代金引換、許可した会員には売掛のみを表示しています。導入方法は利用中のバージョンや既存機能を確認して判断します。
標準の支払方法設定だけで会員別の利用制限ができますか?
確認したEC-CUBE 4.3.1-p1版の公式マニュアルでは、支払方法の名称・手数料・購入金額に関する利用条件と、配送方法への支払方法の関連付けが説明されています。これらと会員ごとの利用許可は別の条件です。会員別の判定機能が既存のプラグインやカスタマイズにあるかを確認します。
掛け払いを許可すると、ほかの支払方法は選べなくなりますか?
掲載事例は売掛だけを表示する仕様ですが、すべてのサイトに共通するルールではありません。掛け払いとほかの支払方法を併用するかは、取引条件や請求業務に合わせて決めます。配送方法や購入金額の条件を含め、実際に選択できる組み合わせを確認します。
売掛の利用を停止した場合、カートや過去の注文はどう扱いますか?
注文手続き中の利用許可をどの段階で確認し直すかは、実装によって異なります。注文確定時にも許可状態を確認し、利用できなくなった場合は支払方法の再選択や問い合わせを案内する設計を検討します。確定済み注文の支払方法や未入金の請求は、新しい注文への利用制限と分けて管理します。
売掛を許可すれば、与信審査や請求書発行も自動で行われますか?
会員別の利用許可だけでは、与信審査、与信限度額の管理、請求書発行、入金消込まで行うことにはなりません。自社で管理する業務と、基幹システムや決済サービスに任せる業務を分け、必要な連携を確認します。掲載事例でこれらの自動化を実装済みとはしていません。
同じ法人に複数の会員がいる場合、利用許可をまとめて管理できますか?
法人単位で管理するには、会員と取引先法人を結び付ける情報や、法人の許可状態を各会員へ適用する仕組みが必要です。担当者が増減した場合の扱い、法人単位の停止、担当者ごとの例外を整理します。掲載事例で法人単位の一括管理まで実装済みとはしていません。
EC-CUBEの掛け払い・売掛設定をご相談ください
会員別の利用許可、支払方法の出し分け、承認・停止の運用を整理します。現在の取引条件や受注・請求の流れをお聞かせください。
投稿者プロフィール

- CEO
- 株式会社サンクユー 代表取締役CEO。
基幹システムとECをつなぎ、受発注業務の最適化を支援する専門家。
関西大学卒業後、東証プライム上場のゼネコンにて人事総務を経験。
その後システムベンダーへ転職し、IBM AS/400環境における金融・物流・販売管理・経理・人事など、企業の基幹業務を支えるシステム開発に従事する。
プログラマからプロジェクトマネージャーまでを経験し、台湾・台北駐在として銀行システム構築プロジェクトにも参画。
この経験を通じて、「システムの質は要件定義の質に比例する」という思想を確立。
業務理解を起点としたシステム設計を強みとする。
その後、クレジット決済代行会社にて、決済システムの再構築や銀行連携、ECサイト構築を担当。
あわせて組織改革にも携わり、20名から60名規模への組織拡大を実現(退任時:常務取締役)。
2008年に株式会社サンクユーを創業、2010年に法人化。
現在は、基幹システムとECの両領域に精通した知見を活かし、BtoB企業における受発注業務のデジタル化・効率化を支援。
特に、FAX・電話・メールなどアナログ業務のEC化や、基幹システムとの連携を前提とした業務設計を得意とする。
単なるECサイト構築にとどまらず、業務フローの整理・要件定義・システム設計まで一貫して関与し、「現場で使われる仕組み」を実現することを重視している。
NTTレゾナント「goo Search Solution」にてEC関連コラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
■趣味・関心領域
BMW / WRC / ロードバイク / RIZIN / UFC / 大相撲
David Bowie / blur / MUSE / The Rolling Stones / XTC
機動戦士ガンダム(富野由悠季)
ベルセルク / 頭文字D / 進撃の巨人 / ジョジョの奇妙な冒険 / あしたのジョー
Mission: Impossible / Memento / ワイルド・スピード / ソナチネ
LOST / Game of Thrones / FRINGE / The Mentalist
上岡龍太郎 / ダウンタウン









