企業が自社ECサイトを持つことは当たり前の時代になる
2021年7月30日、経済産業省は電子商取引に関する市場調査結果を発表しました。
電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)
調査結果によりますと、2020年の日本国内のBtoC-EC市場規模は、19.3兆円(前年19.4兆円)とほぼ横ばいでした。
しかし、旅行サービスの縮小に伴いサービス系EC市場が減少したものの、物販系EC市場は全カテゴリーにおいて規模は大幅に拡大しています。
数字を見ると明らかで、物販系EC市場規模は2019年が10兆円に対し、2020年は12兆円超で前年比21.71%増加しています。
また、EC化率はBtoC-ECで8.08%(前年比1.32ポイント増)、BtoB-ECで33.5%(前年比1.8ポイント増)と増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き進展していることが分かります。
このようにEC化は進んでおり、自社ECサイトを持つことが企業として当然の時代が目の前まで来ています。
本コラムでは「ECサイト構築はどのような手順で進めるのか」、「ECサイト構築用システムにはどのようなものがあるか」、「ECサイトを構築する費用はどれくらいかかるのか」、「制作会社をどのように選定すべきか」などをご説明します。
以下のコラムではECサイトの基本をご説明しています。
ECサイトが分からない方はまずは一読ください。

ECサイト構築の手順
ECサイトを作る為にはどのような作業が必要で、各作業がどのような順序で進むのか、のECサイトの構築手順をご説明します。
- サイトコンセプトを決める
- 制作会社を決める
- 要件定義
- 基本設計
- デザイン作成
- 機能開発
- テスト
- オープン
上記のような作業・順序でECサイト構築プロジェクトは進みます。
サイトコンセプトを決める:ECサイトの方向性を決める大事さな作業
ECサイトを作る前に、ECサイトのコンセプトを決定します。
コンセプトに基づいて、ECサイトのデザインを検討したり、機能を検討します。
また、集客施策もコンセプトに基づいて実施致します。
ECサイトのコンセプトはすべての行動指針となる為、しっかり検討する必要があります。
3C分析に基づいてECサイトのコンセプトを作成
ECサイトのコンセプトは3C分析に基づいて作成することをおすすめ致します。
3C分析とは上記3Cを分析することで経営戦略の基本方針を決定するフレームワークです。
以下の3つのCを分析し、経営方針を決めます。
- ターゲット顧客(Customer)
- 自社・自社商品(Company)
- 競合サイト(Competitor)
ECサイトは事業ですので、事業を成功に導く為に3C分析を用いてサイトコンセプトを決定することで、ブレのないコンセプトを検討することができます。
ブレのないコンセプトを元に構築したECサイトの成功確率は高くなります。
コンセプトが決まればECサイトの方向性は決まる
コンセプトが決まればECサイトの方向性は決まります。
ECサイト制作会社にコンセプトを伝えることで、コンセプトに従って制作会社はデザインや機能を提案してくれますが、自社でもある程度の方向性は理解できるはずです。
可能であれば自社でデザインや機能に関しても検討しておけば、制作会社とより濃い要件定義を行うことができます。
制作会社を決める:自社と相性の良い制作会社を選ぶ
サイトコンセプトが決まったら、制作会社を検討します。
制作会社を決めることはサイトコンセプトの次に重要な工程です。
制作会社にはサイトコンセプトに従ってデザインや機能を検討して貰う必要があります。
ですから、サイトコンセプトを実現するスキルを備えている制作会社を選択しなければいけません。
- 自社と近い業界のECサイト・WEBサイト制作実績がある
- 希望するデザインテイストを実現可能である
- 開発力が優れている
- ECサイトの保守サポート実績がある
- 的確なコンサル(アドバイス)を受けられる
- 価格が予算に合っている
上記のような選定基準に基づいて制作会社を検討します。
制作会社の選定方法は以下のコラムで詳しくご説明しています。

制作会社と一緒にサイトコンセプトを検討する手順でもよい
ECサイト制作会社が決定しましたら、制作会社にサイトコンセプトを伝えて要件定義に入って行くわけですが、制作会社を決定後に制作会社主導でコンセプトを作成する手順でもよいです。
顧客・自社・競合を一番理解しているのは自社ですので、自社でコンセプトや要件を纏めるのがいい場合もありますし、ECサイト構築の専門家である制作会社主導でコンセプトや要件をまとめる方がよい場合もあります。
自社にあった手順を検討してみてください。
要件定義
制作会社が決定すれば要件定義に入ります。
要件定義とは、要件(必要な条件)を定義(決める)することです。
ECサイトにとっての要件とは、デザイン要件とシステム要件です。
要件定義で、サイトコンセプトに最適なデザインとサイトコンセプトに必要な機能を決めていきます。

基本設計
要件定義が終われば、次に基本設計に入ります。
要件定義よりも細かく仕様を検討するのが基本設計になります。
設計フェーズには基本設計と詳細設計がありますが、基本設計は非エンジニアの一般の方が見ても理解できるレベルの設計書。
詳細設計はエンジニアがプログラミングの際に見る設計書で一般の方にとっては難解な内容になります。
基本設計書には以下のような仕様書が含まれます。
- ワイヤーフレーム
- 管理画面イメージ
- 機能一覧
- 機能設計書
- 外部システム連携仕様書
ワイヤーフレーム
ワイヤーフレームとはデザインの設計図です。
サイト幅、フォントサイズ、メインカラー、サブカラーの細かい設計から、レイアウト設計・情報設計までを行います。
それらをまとめたものがワイヤーフレームとなります。
管理画面イメージ
管理画面で必要な業務を行えることができるかを確認する為の管理画面イメージです。
今はECシステムを使ってECサイトを構築することが一般的ですので、ECシステムのデモ管理画面を直接触ることで確認することが主流です。
その為、管理画面の画面イメージを資料として作成することはほぼないです。
機能一覧
必要な機能を一覧にまとめます。
ECサイトにはフロント機能と管理機能があり、EC事業者によって必要な機能は異なります。


機能設計書
各機能の仕様を定義します。
仕様の齟齬が生まれる可能性がある場合は図解にします。
外部システム連携仕様書
外部システムとの連携が必要な場合は、外部システム連携仕様書をまとめておきます。
基本設計書は一般の方でも分かる内容の仕様書ですので、内容に齟齬がないかをしっかりチェックしてください。
デザイン作成
デザイン作成の工程は以下となります。
- トップページのデザインを作成
- トップページのデザインをブラッシュアップ→完成
- 完成したトップページのデザインを元に下層ページをデザイン
ワイヤーフレームを元にまずはトップページをデザインいたします。
トップページのデザインをブラッシュアップし完成させることで、サイトのデザインが明確化されます。
デザインが明確化された後は、下層ページのデザインを量産していきます。
機能開発
機能設計書、外部システム連携仕様書を元に機能の開発を行います。
WEB APIを利用すれば外部システムとの連携が容易
大規模ECサイトの場合、EC事業をECシステムのみで完結することは不可能です。
ECサイトが大規模になればなるほど、在庫管理、顧客管理、商品管理、配送管理などの業務系システム・外部システムとの連携が必要となります。
従来、外部システムとの連携は異なるシステム同士を繋ぐ為開発が大変でしたが、現在はAPIを公開しているシステムもある為開発が楽になっています。
APIの詳細は以下のコラムをご覧頂きたいのですが、簡単に言うと外部システムとの連携がしやすい仕組みです。
今後はAPIでどんどん様々なシステムが繋がり易い世の中になると予想されます。

テスト
ECサイトの制作が完了すれば、テストを行います。
要件定義・基本設計で定められた機能が実装されているか、正しく動作するか(不具合がないか)を確認します。
制作会社がテストすることは当然ですが、依頼主である御社もしっかりテストを行ってください。
オープン
テスト完了後、商品を登録しサイトをオープンします。
サイト・オープン後は集客が売上のキモとなります。
しっかりと集客も検討する必要があります。

ECサイト構築システム
ECサイトを構築する為のシステムやサービスは様々なものがあります。
自社でECシステムを持つこともできますし、ASPサービスを利用すればシステムを持つことなくECサイトを運営することが可能です。
以下のECサイトの構築手段があります。
- スクラッチ開発
- ASPサービス
- オープンソース・システム
- パッケージ・システム
- モール
スクラッチ開発
スクラッチ開発とは、ゼロからオリジナルのシステムを開発することです。
ゼロからのスタートの為、大幅な開発工数やコストが発生します。
ASPサービス
ASPとはApplication Service Providerの略で、月額費用を支払ってインターネット・システムを利用することが可能です。
ASPサービスにはECサイト運営に必要な機能があらかじめ備わっている為、比較的簡単にECサイト事業を始めることが可能です。
オープンソース・システム
オープンソース(open source)はソースコードが公開されているシステムで、基本的には無料で使うことができます。
システムをゼロから開発するのはとても大変なことですが、オープンソース・システムを利用すれば比較的短期間かつ低予算でECサイトを構築することが可能です。
パッケージ・システム
パッケージとは開発会社が自社で開発し提供しているECシステムです。
パッケージの場合、標準機能が充実しているのでそのまま利用できることが多く、カスタマイズも可能です。
ただし、料金が高いです。
モール
モールECとは、ショッピングモールから連想されるように1サイトで複数のEC事業者が出店しているECサイトのことを指します。
Amazonや楽天市場がそれに当たります。
制作会社に相談して自社に合ったシステムやサービスを選定してください。
以下のコラムではEC構築用システム、EC構築用サービスを詳細にご説明しています。

ECサイト構築費用
システムごとにECサイト構築費用や月額費用は異なります。
あくまで目安となりますが、概算金額を纏めました。
ECサイト構築費用にはデザイン、システム設定、システム開発などを含んでおります。
ECサイト保守費用(月額)はデザイン改修、システム改修を含んでおります。
クレジット決済利用料は売上に乗じて変動しますので含めていません。(通常、クレジット決済額の3〜3.5%)
システム | ECサイト構築費用 | ECサイト保守費用(月額) | 拡張性 |
---|---|---|---|
スクラッチ開発 | 3,000万〜3億円 | 50〜200万円 | あり |
ASPサービス | 30〜100万円 | 3〜10万円 | なし |
オープンソース・システム | 100〜2,000万円 | 5〜50万円 | あり |
パッケージ | 1,000〜5,000万円 | 10〜100万円 | あり |
モール | 50〜200万円 | 5〜20万円 | なし |
EC-CUBEでECサイトを構築する際の制作費用をまとめたコラムです。
かなり詳細にご説明しておりますので、ECサイト構築時の費用感の確認したい場合はぜひお読みください。

サンクユーのECサイト構築サービス
サンクユーでは過去に100サイト以上のECサイトを構築して参りました。業種を問わず対応することが可能です。また、B2C ECサイトだけでなく、卸売サイトのようなB2B ECサイトも構築いたします。

サンクユーのECサイト構築実績
投稿者プロフィール
- CEO
-
関西大学卒業後、東証プライム上場企業ゼネコンにて人事総務業務に従事。
幼少よりモノ作りが好きだったこともあり、「モノを作る仕事がしたい」という思いからシステムベンダーへ転職。
システムベンダーでは、IBMオフコンAS400で金融、物流、販売管理、経理、人事総務などのシステムを開発。
台北に駐在し遠東國際商業銀行のシステム構築プロジェクトへの参画など貴重な経験を積む。
10年間で、プログラマ、SE、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーを務め、「システムの質は要件定義の質に比例する」と学ぶ。
その後、クレジット決済代行会社にヘッドハンティングされる。
決済システムの再構築、国内外の銀行システムとの接続、クライアントの会社サイト制作・ECサイト構築を行う。
一方、組織改革を任され、20名から60名へ会社規模を拡大させる。(退任時役職:常務取締役)
2008年クリエイティブチーム・サンクユーを立ち上げ、2010年に法人化し株式会社サンクユーを設立。
クライアントの業界、取扱商材、ターゲット顧客を理解・分析することで、結果が出るWEBサイトを制作することを得意とする。
また、ECサイト構築・運営への造詣も深く、NTTレゾナント株式会社が運営するgoo Search Solutionでコラムを執筆。
ECマーケティングレポート | goo Search Solution
■趣味・好きなもの
WRC / ロードバイク / MMA / ボクシング / サッカー
David Bowie / blur / MUSE / TheRollingStones / XTC
機動戦士ガンダム(ファースト) / 富野由悠季
ベルセルク / 頭文字D / 進撃の巨人 / ジョジョの奇妙な冒険 / あしたのジョー
Mission: Impossible / Memento / ワイルド・スピード / ソナチネ
LOST / Game of Thrones / FRINGE / The Mentalist
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